『ビジネス2.0』の視点:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 『ビジネス2.0』の視点

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2009年3月23日

2009年3月24日の投稿

2009年3月25日 »

米IBMが米Sun Microsystemsを買収する交渉を進めているという記事が様々な形でとりあげられています。その可能性については、定かではありませんが、仮に交渉が成立した場合に、市場にどのような影響を与えるのでしょうか?私自身は、IBMとSunのそれぞれの事業内容や戦略を理解しておりませんが、クラウドに関しては多少なりとも理解しておりますので、クラウドにおける相乗効果を自分なりに整理していきたいと思います。

IBMは、「Blue Coud」構想に代表されるように、近年クラウドコンピューティングに大きく舵を切り、特に、エンタープライズ分野のプライベート・クラウドに注力しています。日本においてもクラウドコンピューティングを推進するクラウドコンピューティング事業推進部を設置し、全社横断的なクラウド展開し、3月には、プライベート・クラウドの構築に向けたコンサルティングなどの構築支援サービスを提供していくことも公表しています。また、最近では、Amazonとも提携し、IBMの一部のソフトウエアを「Amazon EC2」で利用できることも発表しています。

一方、Sun Microsystemsは、1983年の創業時から「The Network is The Computer」というフレーズを使い、「ネットワークこそがコンピュータであり、ネットワークに接続されていないコンピュータには価値がない」と創業時から一環しています。「The Network is the Computer」 という言葉はサンでは、「ビジョン」と呼んでいるようです。「クラウドコンピューティング」という言葉が使われるようになったのは、2006年8月の「検索エンジン戦略会議」でグーグルのCEOエリック・シュミット氏が講演の中で使ったのが始まりと言われています。シュミット氏は、サン・マイクロシステムズのCTO(最高技術責任者)出身であり、サン・マイクロシステムズにいたころに、「The Network is The Computer」の理念に大きく影響を受けたようです。

Sun MicrosystemsのCEOジョナサン・シュワルツ氏は、2008年4月に、「クラウドとは、ネットワーク・コンピューティングを新しい言葉で言い換えたものだ」と発言しており、サンの「ビジョン」が世の中にも広まってきているという見解を示しています。

実際に、アメリカ本社においては、シュワルツ氏直轄の2008年11月に1000人単位クラウドコンピューティングの事業本部を設置し、さらには、2009 年1月7日、2009年1月7日、クラウドコンピューティング環境のソフトウェアを開発、提供するベルギーの「キューレイヤー(Q-layer)」を買収を発表するなど、クラウドコンピューティングの事業の強化をはかっています。

そして、Sun Microsystemsは、3月18日にオープンソースをベースとしたクラウドサービスのプラットフォーム「Sun Open Cloud Platform」の提供を公表しています。夏には、パブリッククラウドの「Sun Cloud」の提供も予定しており、Sunも急速にクラウドへの戦略に舵をきっているように見られます。

そこで、気になるのが、両社がどのようにクラウドを統合し、そしてビジネス展開をしていくことになるのかが興味深いところです。SalesforceはGoogleやAmazon、そしてFacebook等と連携を強め、Microsoftは、AzureやWindows Online等本格的にクラウド市場に参入しようとしています。そのほかにもHPやDell、そしてVMware、Oracle等もクラウド市場に自社の強みをいかしながら、参入してきています。そして、これまでエンタープライズのSI市場に大きな影響力をもってきた巨人IBMとSun連合が実現すれば、今後のクラウド市場大きな影響力を増すことになるでしょう。クラウドの普及に伴い、勝者と敗者の優劣が鮮明になり、クラウドの市場は拡大する一方で、SIの市場は中長期的に見て縮小の方向に進むのではないかと考えられます。そこに、日本のIT企業がどのように食い込んでいくのかというのも注目されるところです。

IBMがSunを買収が確定するのか定かではありませんが、いずれにしても、クラウドの本格的普及に伴い、各社の買収や連携の動きはさらに強まっていくことになるのではないかと個人的には考えています。

MASAYUKI HAYASHI

« 2009年3月23日

2009年3月24日の投稿

2009年3月25日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
business20
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ