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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

発散から収束に切り替える「魔法の呪文」

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前回の話(外注が「仕切る」には)の続きです。

読まないでもいいように、簡単にまとめておきましょう。

このままでは何をするのか決まらない状況では、外注のライターといえども手をこまねいて見ていないで、積極的に話をまとめる必要があります。

そのための技法がファシリテーションと呼ばれるものです。議論の活性化を促し、合意を形成することで、その推進役がファシリテーターです。

ただ、あくまで外注業者ですから、表立ってファシリテーターを買って出ると、発注者の面子をつぶすことにもなりかねません。

あくまで一参加者として、ファシリテーターを務めないといけません。

ファシリテーションの流れを簡単にまとめると、次のようになります。

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共有は現状把握なので、発注側がたいていきちっとやってくれます。

また決定は、意見が上手に収束できれば、あとは期日と担当者を決めるだけなので難しいことではありません(我々が参加するのは仕事の段取りを決める打ち合わせですから)。

難しいのは、意見を出し尽くしてもらう発散と、それを一つの方向にまとめる収束です。

これを表立ったファシリテーター(すなわち司会者)でもないのにリードしようというわけですから、それなりのテクニックが必要です。

では、そのテクニックとは?


●発散は、「なぜ→誰に→何を」の順に聞いていく

発散と言っても、「自由に意見を出してください」ではいつまで経ってもまとまりません。それ以前に何も出てこないことさえあります。

何も出てこないところで、自分の案を出しても、それは提案とは受け取られず、押しつけと思われてしまいます。

では、どうしたらいいのか?

まず、なぜそれをやるのか、なぜやりたいのかを聞くことです。つまり目的の確認から始めます。

目的がはっきりしないのであれば、その時点で僕は仕事を引き受けるのをやめます。しかし、過去1回も目的がはっきりしなかったことはありません。

問題は、参加者によって目的が少しずつ違うケースがあることです。

この場合は、その全部を聴き出しておきます。そうしないと、聴いてもらえなかった人が反対勢力になるおそれがあるからです。

目的が出尽くしたら、矛盾のないようにはっきりとさせてもらいます。聴いているうちにキーマンがわかってきますから、その人に決めてもらうように誘導します。

目的がはっきりしたら、次に「誰に」、すなわち読者ターゲットをハッキリと決めてもらいます。

これも質問してみればいろいろな意見が出てきます。出し尽くしてキーマンに決めてもらうという手順は目的と同じです。

「誰に」が決まると、「何を」すなわちコンテンツの方向性はだいたい決まります。

その方向性の中で発散するので、短い時間でコンテンツに関する意見を出し尽くしてもらうことができます。

これが、ターゲットを決めないでコンテンツについて意見を出してもらうと無限に発散してしまいます。だから決まらないのです。

発散といっても、方向性を持って発散しないと、いつまでも発散し続けることになります。方向性を決めるために目的とターゲットをまずハッキリさせるのです。

●収束に入るための「魔法の呪文」

コンテンツに関しては、あれもやりたい、これもやりたいといろいろ出てくることでしょう。ぜひ出してもらってください。

どれも同じで、聴いてもらっていないと感じている参加者がいたら、その人は反対勢力になるおそれがあるからです。

しかし時間は無限ではありませんので、どこかのタイミングでまとめなければいけません。

全員の意見が出た段階で、自分の案を提示します。

そのときに必ず次の「魔法の呪文」を唱えてください。

「実は、ある先進的なマーケティングの取り組みをしている会社さんで実施したことなのですが・・・」

このあとに「自分の提案」を入れます。

もちろん、その提案は目的・ターゲットに沿ったものでなければいけません。そこはプロとして当然のことです。

このように言えば、ほぼ間違いなくあなたの案は採用されます。

●自分の意見を通すためにはしっかり聴かないといけない

結局、自分の意見を通しただけではないかと思われたかもしれません。

実をいえば、僕は案件についてある程度伺った段階で、素案を必ず作ります。

提案する内容も素案から大きく逸脱することはありません。

しかし、早い時点、たとえば共有が終わった段階で、提案していたらどうなっていたでしょうか?

外注業者のいきなりの提案に感情的に反発する参加者がいたかもしれません。自分の意見を聴いてから言えよと思うのが普通です。

その提案は却下され、また振り出しに戻ることでしょう。通っても何らかのしこりを残します。

提案するまでに手順を踏む必要があります。そのためにファシリテーションの技法を使うということなのです。

なぜファシリテーションの技法が使えるのか?

それは、ファシリテーションを実施することで参加者の意見をしっかりと聴くことができるからです。

人は聴いてくれる人を信頼します。信頼されるまでは提案はしてはいけません。

つまりファシリテーションによって信頼を得て、提案を通しやすくしているわけです。

決められない人は、手順を踏んでいないのです。

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