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2018年新入社員の特徴

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2018年度新卒新入社員の、4月入社の方達は、社会人1か月を過ごして、GWに突入。

初任給も出たし、陽気もいいし、ここらで少しのんびり一息、というところではないかと思います。

今年も複数社の新入社員研修を担当し、100人程度の若手を接してきました。また、同僚たちも多くの、合わせれば数百人の新入社員に接しています。

そんな中で、私たち講師業の人間だけではなく、人事や人材開発担当の方達も、ほぼ口を揃えて言う感想があります。(もちろん、個別具体的には、人それぞれですし、会社によってもずいぶん変わるのですが、全体傾向というのは、毎年なんとなくあるものです)

以下、多くの関係者の証言と私自身の感想を交えて、感じられる「2018年新入社員」の特徴を書いてみます。

1.真面目

もうこの10年くらいはこの傾向ですが、とにかく真面目です。言われたことはきちんとやりますし、納期もまずまず守ります。レポートも「特になし」と書くことはほとんどなく、マス目を埋めるというか、スペースいっぱいに書いてきます。
もちろん、いろいろなペルソナをかぶっての「真面目」だとは思いますが、従順で、きちんとしていて、教えられたことはしっかりやります。


2.おとなしく、声が小さい

一方で声が小さいのです。

新入社員研修の会場といえば、もう、皆さんが大盛り上がりになって、学生気分も手伝って、周囲から、「うるさーい!」「少し静かにしてください」と苦情が来たりするのが定番なのですが、今年は静かで静かで、おとなしい。声も小さく、ぐうループワークが、「しーん」とした中進みます。話しているのですが、講師や人事の方達の耳に声が聞こえない(近づいても、発言内容が聞き取れない)くらいです。

挨拶の声も小さく、とにかく、なんだかおとなしい、というのが4月中の多くの職場での感想でした。

3.「枠」からはみ出ない

これは、昨年2017年の新入社員にすでに感じていたことですが、「ルールに忠実」です。ルールで定められていることを上にも下にもはみ出ないというところがあります。真面目の延長線上でしょうか。

たとえば、古い年代を引き合いに出して申し訳ないのですが、90年代の新入社員は、「ルール」からはみ出てしまうことが多く、指導するのが大変でした。たとえば、「遅刻する」とか「忘れ物する」とか「言ったことを忘れる」とか。どちらかというと「下」にはみ出る感じです。(今のミドルシニア層ですね)

2000年代になると、少し変わってきて、上にはみ出る人が出てきます。

ある企業で聞いた例です。2007年の新入社員だったと思いますが、新入社員研修での出来事です。全員が研修施設に集められていました。そこは近所にコンビニしかな場所です。

「毎日、コンビニ弁当では飽きてしまうので、出前を取ろう」と新入社員同士で話し合い、デリバリの情報を集め、月曜はピザ、火曜はカレーなどと計画を練って、集金体制もまとめ、ほぼ話を固めたところで、新入社員から人事の担当者に相談。「ランチタイムが充実することで、僕たちのモチベーションも上がるんです」と訴えたそうです。

人事担当者は、「現金のやり取りが発生するなんて、それに、予定通りにデリバリが到着するとも限らず、研修の運営に支障をきたす可能性がある」ということで却下しました。さらに人事課長は、「モチベーションは、他のところで上げてください」ときっぱり言ったそうです。

今年2018年の新入社員は、遅刻したり、忘れ物したりということもないですが、「デリバリを頼もう!」などといった自主的な動きもないのが特徴です。

「こうしましょう」と言われたルールに忠実で、
「これはダメと言われたら、しない。

「いいとも悪いとも言われていないこと」を「やってみたい」「やろう」と提案する人はおらず、「いいと言われたこと以外」はしない、という感じなのです。 (良い点でもあり、物足りない点でもあります)

4.反応が薄い

呼びかけても、反応を示しません。たぶん、小さくはうなずいているのですが、反応は薄い。もちろん、真面目なので、話はきちんと聴いているのですが、「先に進んでよろしいいですか?」「10時に再開しますよ」などと指示を出しても、「はい」「わかりました」と返ってこないのです。「返事してくださいー♪」と言うと、徐々に反応してくれるように変化はします。

2005年ごろ、「イマドキの若手は、少子化の中を育っていることもあってか、反応しない(非言語能力が高くない)という特徴がある」という話をパフォーマンス学の佐藤綾子先生から聴いたことがあります。

そのころは、ある企業の人事の方から「新入社員研修の最初のほうで、"反応する練習"をさせたんです」というお話も聞いたものでした。それから干支が一回りして、再び、反応が薄い方達が増えたなぁーというのが今年の感想です

・・・これらの特徴は、「配属先のOJTトレーナーも理解している必要がありますね」とある企業の人事の方に言われました。

たとえば、何かを教えても、無反応に見えることがある。彼ら・彼女らは、聴いていないわけではなく、「うん、わかった、理解した」と心の中では思っているのだけれど、反応する、という「習慣」がない。そこをOJTトレーナーが、「今年の新人は、反応すらしないんだ」と嘆くのではなく、「反応が薄いな」と思ったら、「人が教えたら、表情や態度で"わかった"ことを表現するものだよ」と教える必要があるよね、と。そんなことをおっしゃっていたのです。

自分が反応していないことや反応が薄いことが相手にとってやりにくいものだと想像ができていないかもしれないので、そこを教えていかなければならない、と。

教えたらきちんとできるようになるのも若手の柔軟性ですから、何度もあきらめずに言い続けることは大事なんだと思うのです。

そうそう、半年くらい前の自分のメモを見ていたら、こんなことが書いてありました。

ある企業のOJTトレーナーが「OJTスタートして、半年経った時点での感想」を述べたものをメモっていたのです。

「ものすごく慎重で、完全に理解できるまでは動かないタイプだった。"大丈夫、やってごらん"と言っても、確認して、確認して、完璧にわかった!となるまで動かないから、こいつ、大丈夫かな?と思っていたんだけど、11月ごろから、何かが吹っ切れたのか、突然、動き始めるようになった。時間がかかったけど、自分の中で何かが変わったのだと思う」

え?11月?とは思うけれど、先輩が指導したり、見守ったり、フィードバックしたりしている内に新入社員も一皮向けることができたのかもしれません。

これからの日本の中心になっていく若者たちです。

色々ありますけれど、年長者は、見守り、時に厳しく、時にやさしく彼ら・彼女らの成長を支援することが役割だと思います。

人が育っていって、なんか立派になると、嬉しいじゃないですか。

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