令和の新入社員は、キャリア観が明確である。
「この会社、この職業を選んだのは、どんな理由からですか?」
ということを毎年、様々な新入社員に尋ねている。
新入社員研修を担当した顧客先だったり、何かで出会った新入社員だったり。
すると、昭和に社会人になった私など、ものすごく驚く回答が返ってくることが多い。
「自分の得意、不得意を分析した結果、長く働くために一番不足しているけど、一番重要なことの一つと思ったので、この職種で経験を積もうと思い、"初期キャリア"としては、この業界、この職種を選びました」
なんと! "初期キャリアとしては"!なのですね。
「高校生の頃、●●に興味を持って、その勉強を始めたら、それがとても自分に合っていたので、●●が学べる学校を選んで、関連する資格も数種取得しました。●●の資格が生かせる職場と考えた時に、小規模よりは大規模の、Globalな仕事とか多種多様な企業をまたぐ仕事をしている会社のほうが、"経験"が積めるな、と思って、第一志望のこの会社に入社しました」
なんと! "経験が積める!!なのですね。
この2つのケースを読んで、「そんなの普通じゃない?誰でもそうなんじゃない?」と思う方もいらっしゃるだろうが、私は素直に驚く。
高校生の頃から・・
初期キャリアとして・・・
経験を積む・・・
おお、自分の好きとか興味ある、強味が生かせる(生かせそうな)ところにフォーカスして、あるいは、強味を作れるように弱みを克服する方向に照準を合わせて、どこでも通用する力を確実に身につけていこう、という覚悟が垣間見えるし、今や当たり前ではあるのだけれど、転職前提(というのは、絶対に転職してやる!とか3年後には別の会社に!という意味ではなく、転職は数回するのだろうな、と考えているという意味での、"転職前提)で就職しているのだな、ということが言葉の端々から感じられるし、なんか、すごいな、と思うからだ。
小学校時代からキャリア教育が組み込まれているため、本当に子どものころから少しずつキャリアというか働くことなどについて考える機会が多い、そういう世代にとっては当たり前なのかもしれないが、やはり、「ここまで明確にキャリア観があるのか」にびっくりする。
一方で、ミドルやシニアは、キャリアをあまりちゃんと考えたことがない世代。(だいたい、だけど、2000年以前に社会人になった世代は、学校教育としてのキャリア教育を受けていない)
こりゃー、以下のような声が若手から聞こえてくるのも致し方ないと納得だ。
「上司(50代)と会話していても、キャリアについての考えが合わなくて。というか、そもそも、日常業務については話をしますけど、中長期のキャリアという考え方が上司にはないみたいで、話題に載せても、かみ合わなくて。だからつまらないんです」(20代)
若者は、自分のキャリアを自分で「どげんとせんといかん」と考えながら、社会に出てくる。そこに先輩や上司が、どう寄り添っていくか、先輩や上司の考え方のアンラーニングと教え方のリスキリングが必須だ。
少なくとも、
「大丈夫!3年頑張ればものになるから!」
「10年で一人前って言うから、少しずつでいいよ」
なんて話をしたら、若者は「3年も!?」と絶望してしまうかも知れない。
ものすごく短い時の刻み方ででキャリアを見極めている感じがする若い世代。
中高年世代もその感覚を理解する必要がある。
・・・こういう話をすると、「いやいや、やりたいこともない、全然努力もしない新入社員もいますよ」という反論が聞こえてくるが、そりゃ、個人差は当然ある。そして、若年層の考え方や価値観、働き方などは実に多様化しているので、いろんな人がいるけど、キャリアに切実な想いを抱く若者もまた多いということは覚えていたい。
このあたり、ピンとこないという方は、ぜひ、以下の本を読んでみてほしい。
古屋星斗さん著
『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』
※上記は、人事や管理職、OJTトレーナーなど、成長支援に関わる側が読むとよい本。
『会社はあなたを育ててくれない~「機会」と「時間」をつくり出す働きかたのデザイン』
※上記は、若手自身が自らのキャリア形成、能力開発のために読んでほしい本です。