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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

及川卓也さん『挑まなければ、得られない』を読んで。

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NHKプロフェッショナルに登場以来、より一層有名人になった感のある及川卓也さんだが、前にもこのブログで書いたように同じDECという会社で働いていたことがある。といっても、まったく面識なく、ただただ、なんだか有名な後輩がいるようだ、という認識があっただけなのだが。

2年前の秋、同僚(で後輩)の横山哲也がある呑み会に私を誘ってくれて、多くの社外の方と知り合った。その時、「もう一人、来るかも知れないんだけど、今日は無理かな?」と言われていたその”もう一人”が及川卓也さんであった。結局その日、及川さんは登場なさらなかった。ザンネン。

でも、「お、あの及川さんか。20年以上前からなんだか気になる存在だったけれど、そんなに身近なところにいたのね」と思ったものだった。

その後、冒頭で触れたNHKプロフェッショナル登場があって、横山哲也に「ねぇ、ねぇ、及川さんと知り合いなんでしょう? 食事することがあったら、私も呼んで」と優しくお願いしてみることにした。

いつか実現すればいいな、と軽く思っていたし、あくまでも優しくお願いしたので、まあ、1年以内には会えるかしら?とその後私はすっかり忘れていたら、2週間もしない内に「4月○日なら大丈夫そう」ということとなった。

おお、早いな。 決して脅したわけではなく、ほんとに単に”優しくお願い”しただけなのに、さすがは後輩。すぐ動いてくれたようだ。

4月某日。おしゃれなレストランで、もう一人の同僚と合計4人で会食。

第一印象は、「あ、TVとおんなじ!」(←ミーハー)

非常に穏やかなムードでお話しする方で、20年前になんとなく想像したいた彼とは全く異なるたたずまいだった。へぇ、こういう笑顔のステキな落ち着いた人だったのね、と。

んで、まあ、いろんな会話をしたのだけれど、その中で一番印象に残ったことの一つは、このブログでも触れた「若い人に付き合ってもらえる人になる」という話である。中高年は意識しないといけないな、進化してなきゃいけないな、と深く心に残った会話だったのだ。
(ええ、あれは、及川さんと話したことなのでしたよ。)

聴けば、私が86年入社、横山が87年入社、及川さんは88年入社だという。なんだ、2年も後輩じゃないか。それなら、先輩ヅラしてもいいな。(←単純なので、すぐ思ってしまう)

その会食の席で、「走る」が話題となって、フルマラソンに出ているというから、さぞや若いころからずっと鍛錬してこられたのだろうな、と思っていたら、たった2年前、40代半ばで始めたという。

えー、びっくり。

「走るというのは、すごくいい。何故かというと、タイムが伸びるとか距離が延びるというように、自分の成長を実感できるから。それに自分自身との闘いというか、できた時の自信とか達成感につながるから。おススメですよ」と、そんなことを言われたような気がする。(なぜ、「気がする」なのかというと、その頃にはワインをしこたま呑んでいて、一言一句を思い出せないからなのだけれど、まあ、だいたいそんなことを話していたと思う)

以前からウォーク&ジョグはなんとなくしていた私だったが、中年から始めてもフルマラソンまで行ける!と聴き、そもそも団体行動系あるいは道具必要系スポーツが嫌いな私には案外向いているのではないか、と以前よりちゃんと走り始めたのであった。

”後輩”の及川さんは、私が「今日は24分走った」などとツイートすると、律儀にも「よくできました」と反応してくれたりするので、余計に頑張ってみたり。(←褒められて伸びるタイプです)

その会食の後発行された本が『挑まなければ、得られない』(インプレス)である。

さっそく買って読んでみた。ちょうど新幹線で大阪往復する用事があったのでのぞみ車内で読んだ。普段、新幹線内読書は、睡眠薬の役割をはたしてしまい、1冊よみおわるなんてないのだけれど、わくわくしながら読み進めた。

お会いした直後ということもあり、肉声が聞こえてくるような文章だった。

DECにいたし、OSを教えていた割に私は極度のITオンチである。友人をして、「淳子さんは、IT要介護度5」と認定されたほどだ。だから、ところどころに出てくる技術論は言葉自体が全然わからない。でも、仕事に対する思い、IT業界に対する思いは理解できた。

本の中心となっているのは、Hack for Japanの活動について、である。

3.11復旧・復興支援をITで、ということで勤務先を超えて、ITエンジニアが集まり、色々なものを作り出していく。

その想いとリーダーシップには頭が下がる。「ITでできることがある」とITエンジニアは一番得意なITの分野で貢献しようと考え、実際に貢献した、というのは素晴らしい。それに、そうやって自らの技術で社会に貢献できるというのは、ITエンジニアの自信にもつながると思うのだ。

この本にも出てくるのだが、この活動を通じて初めて「企業を超えたメンバと共に動いた」という経験をしたエンジニアも少なくなかったらしい。被災地支援になるだけでなく、こういう活動をしたことでエンジニア自身のスキルアップや仕事感の醸成にも役立ったに違いない。こういうことを仕掛けるのは、想いと行動力が必要だ。 多くのページが割かれているHack for Japanの活動部分だけでも、大勢のITエンジニアに読んで欲しいと思った。感動する。

本の後半では、仕事への想いや考えが綴られている。

ぐぐっと来た言葉を以下に紹介させていただく。

「今まで続いてきたかたというだけの理由で、それを続けることが本当に是なのかは考えてみたほうがいい。」

「まわりを見回してみても、やめればいいのにやめていないものを、いくつも見つけることができる。<略>続けるのは大変だけれど、やめるのも大変。<略>失敗したら責任問題になるかもしれない。無難なのはとりあえず続けること。<略>でも、これって本当は「やめることにより始められる何か」が失われたであろう機会損失を考えると、犯罪的にやってはいけないことなのかも知れない。」

こんな風な思考になりがちなのは、過去の成功体験にとらわれやすい中高年ってなことも書いてある。

そういえば、以前このブログで数回にわたり熱く紹介した松尾睦さん著『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)でも、「過去のヒーローっているよね。昔成功したやり方にとらわれて、そのやり方に固執し、成長がストップしてしまうひとが過去のヒーローなんだ」ってなことが書いてあったけれど、中堅やベテランは「変えること」「いったん捨ててみること」に対して、怖れてはいけないのだなあ、と改めて思う。(「学習棄却」=「Unlearn」という。ベテランは、「Unlearn」が難しいらしい。心当たりは山ほどあるので、すごくよくわかる。)


及川さんが長年書かれてきたブログの内容を編集して書籍にしたそうだが、本として読んでもとても面白い仕上がりになっていると思う。

私を及川さんに逢わせてくれた同僚(で後輩)の横山哲也も別のサイトで書評を書いている。及川さんからも数百文字のコメントを頂く予定が3000文字くらい書いてくれたそうで、なんだか「ラブレターの交換」のような様相を呈している。

が、この二人のやり取りがなかなか面白い。(男同士のラブレターというのもなんだけれども、まあ、長年の付き合いがある二人の文章も読んでみてくださいませ。ついでに言うと、「知人を交えた食事会で」と書いてあるのが、私が紹介してもらった席のことだと思います。ふふ。)

及川さん、今度会ったら、サインしてください(笑)。

本の特盛り―横山哲也の読書のススメ第13回 『挑まなければ、得られない』
→横山の書評の後、超長文の及川さんの返歌(笑)があります。すごく楽しい。 アーモンドグリコ並みです(一粒で二度美味しい)。

●及川さんのブログ  Nothing ventured, nothing gained.


●及川卓也さん著 『挑まなければ、得られない』 (インプレス)

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