被災者のメンタルケア・ボランティアひと区切り―これまでの成果と、今後必要なこと
こんにちは、竹内義晴です。
今日は、ご報告があり、ブログを書いています。
これまで新潟県妙高市で行ってきました、
「震災で避難されているみなさんのメンタルケア・ボランティア」
が5/25で、一区切り終えました。
定期的にお伺いするのは一旦終了し
今後は、ボランティアセンターから依頼があったときや
これまでお目にかかれた方から声がかかったときに
お伺いする形をとりたいと思っています。
今回、ボランティアに参加してみて、「メンタルケアそのもの」以上に
「何かの事業や、やりたいことを進める/形に残す」という点で、
とてもいい勉強になりました。
そこで、参加するまでと、参加できた後の運用、
そして、今後必要なことについて、みなさんと共有させてください。
(長文で失礼いたします。)
人間関係や交渉、PRなど
ビジネス的な視点としても通じると思いますので、ご参考になれば幸いです。
■ボランティアに参加するまで
今回、関わりを持てるまでは、決して平坦ではありませんでした。
関わりを持てるようになったステップは、次の通りです。
- 新潟県妙高市にも避難所が開設されることを知る
- ボランティアセンターに登録
- 「連絡を待っていても何も起きないだろう」と判断
- 独自でチラシを作成、お話をお伺いする場所を確保
- 避難所にチラシを設置
このようなステップで行いました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
さて、場は作れましたが、3日ぐらいで避難所が移転することになり
再び、関わりを持つことが難しくなりました。
ボランティアセンターの指示を待つことも考えましたが
すぐに動きが起きそうに無かったので
- 自分たちで避難所に出向き、メンタルケアの必要性をヒアリング
- ボランティアセンターに必要性を提示
- ボランティアセンターから許可をもらう
このようなステップで、避難所に入りました。
全般的に言えることとして、今回、ボランティアの場を持てたのは
「自分たちで動いた」というのが
結果的には大きかったのではないかと思います。
また、「すでに人間関係があった」というのも、大きな理由のひとつです。
それについては、こちらにまとめてあります。
■ボランティア中の運用
ボランティアに入ったのはいいものの
なかなか避難者のみなさんと関わりが持てないというのが実際でした。
- 1日目は共用スペースだったので、気軽に話ができるように、場所を個別に会話できる場所に変えていただきました。
- チラシをつくり、周知していただくようにしました
このあたりは、こちらにまとめてあります。
これでも、被災者のみなさんと関わり合いを持つことができませんでした。
結構、難しいものですね。
そこで、簡単な講演会を開きました。これについては、こちらをご覧ください。
このあたりから、関わりが持てるようになってきました。
ここで大切だと思ったことは、
「サポートが必要な人に、いかに周知するか」ということです。
(ビジネス的な視点だと、PRやマーケティングに当たりますね。)
結果的に関わりが持てた方は、のべ5名でした。
決して多い人数ではありませんが、
- いただいていた時間は週1回2時間だったこと
- 1時間ほど、ゆっくり話していただくという関わりだったこと
- 他にも、さまざまなイベントがあったこと
などを考えると、ゼロから5に上がったことのほうに意味を感じていますし
いろいろと試してみて、よかったなと思っています。
■関わりがあった方の声
お伺いした生の声です。
- 非日常だからこそ、今まで見えなかった人間関係が見え、関係性が崩れていた。有効な関わり方を教えてもらったのは助かった
- 身内にしかいえなかったことを話せ、思いを聞いてもらったのがよかった
- できていないことがたくさんある中で、できることがあることに気づけて良かった。対策を見出せた。
■被災者目線で、今後必要なサポート
お伺いした生の声です。
- 「今後、どうしていけばいいのか?」という不安を抱えている
- 今後の生活のために、他の避難所、避難者の方がどのように考え、どのようなサポートを受け、どのように判断し、どのように動いているのかを知りたい。自分達が動くときの判断材料にしたい(一言で言うと、情報が知りたい)
■被災者の声を聴いて、今後必要だと思ったサポート
被災者の声を聴いて、私が思ったことです。
- 避難者のみなさんは、他の避難所の動きが分かっていない
- 同じ避難所でも、今後の生活のためにどのようにしていったらいいのかそれぞれの方が、それぞれの立場で悩んでいる。
- 同じ避難所の中で、今後の生活についての意見交換やワークショップのようなものがあると、お互いの気持ちも分かり、いろんな手段が分かり気持ちも共有でき、いいのではないか?
また、避難者の方は次のようなこともおっしゃっていました。
「6月になって、さまざまな避難所が統合や閉鎖をするそうです。これまで、ボランティアでおいでくださっていた方も少なくなると聴いています。それはよく分かっています。」
この声をお伺いして、思ったことは……
これまでは、「被災者の方に、自分達ができることをしよう」という雰囲気がありました。
たくさんの募金、物資、さまざまな応援が、被災者に届けられました。
けれども、テレビが日常に戻り、さまざまな支援が減っていく中で
本当に支援が必要なのは、
「多くの人の記憶が少しずつ薄れていくこれからなのではないか」と思いました。
■今後の、メンタルケアがどうあるべきか
今朝の新潟県内の新聞に、
「県、被災者へ心のケア―福島3市町に医師ら派遣」
という記事が載っていました。
この記事によれば、被災者の心のケアをするため
福島県の要請で、精神科医師や看護師らによる専門チームを
福島県に派遣するそうです。
このような報道を見るたび
「一言で『心のケア』って言うけど、心のケアって、一体何なのだろうな」
と考えます。
なぜなら、精神科医師や看護師しか、
心のケアができないのか?と考えるからです。
以前、ブログで
「避難者のメンタルケア・ボランティア1日目で見えた課題」という記事を書いたとき
実際に被災地に行き、ボランティアをされてきたifukaさんが
次のようなコメントを寄せてくださいました。
先週あたりは,メディアなどでしきりにメンタルケアの専門家の必要性が言われており,その機運も高まっているため,これからは(専門家以外の)ボランティアが入れるチャンスはさらに減ると予想されます.
ただ,実際はまだ専門家だけでなく,話を丁寧に聞ける人材の活用状況により,今後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大きく影響するのではないかと思います.
私も、このご意見に賛同します。
精神科医師や看護師以外にも
話を丁寧に聴ける人材の関わりがとても大切ではないかと考えますし
この関わり合いで、多くの問題は解決すると信じています。
また、スポーツのイメージトレーニングで用いられているような方法で
イメージによってストレスを和らげたり、体験した認知を改善する方法もあるので
医療に限らず、さまざまな方法で、
被災者のみなさんが、明日への活力を見出せればいいなと願っています。
■おまけ:ボランティア中のメディアへの対応
今回、ボランティア中に、テレビ局から取材の依頼がありました。
「今後は、心のケアが必要である。ぜひ、取材させて欲しい」
という内容でした。
実はこのとき、まだ、場を作ったばかりで
実際にお話をお伺いできてはいませんでした。
「今は、まだ場を作ったばかりです。
相談に訪れる方がいらっしゃるかどうか分かりませんし
もし、相談される方がいらしたとしても
相談される方に許可を取る必要があります。
ひょっとしたら、せっかくおいでいただいても
取材できないかもしれませんし
視聴者に好まれるような絵が取れるかは分かりません。
私を取材していただくのは一向に構いませんが、それでもよろしいですか?」
と答えました。その後連絡いただくことはありませんでしたが
相談される方がマイクを向けられるのを望むのなら
それでもいいのかもしれませんが、そうとも限らないので
結果的は、これでよかったかなと思っています。
本当に大切なのは、視聴者が喜ばれることではなく
相談しにこられる方が癒され、問題が解決することだと思いますので。
■最後に
いったん区切りがつきましたので、一息という感じはあります。
今後、どのような形で関わりあいを持っていけばよいのか、まだ未知数です。
一方的な親切心では、かえって迷惑です。
一方、「必要な方が、必要な形で出会えない」のもまた、問題です。
しかしながら、近くの避難所は縮小傾向にあるのは事実なので
今後も定期的に情報発信をしていき
サポートが必要な方と、必要な形で出会っていければいいなと思います。
今回、私たちがやりたかったことは「メンタルケア・ボランティア」でした。
けれども、これを実現するためには、メンタルケアそのもの以上に
人間関係や交渉、PRなど、さまざまな要素が必要でしたし
短期間の中で、たくさん勉強する機会に恵まれました。
今回学んだことを、今後の事業に生かせていけたらと思います。
これは、私たちが動いたから……ということ以上に
わがままを許してくれたボランティアセンターや行政のみなさん
被災者のみなさん……
そしてなにより、いつも応援してくださっている
みなさんがいたからこそ、実現できたことではないかと思います。
すべての関わりがあったみなさんに感謝したいと思います。
ありがとうございました!
以上、今回のメンタルケア・ボランティアのご報告でした。