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なぜ、私たちが東日本大震災のメンタルケア・ボランティアに関われるようになったのか

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前回、避難者のメンタルケア・ボランティア1日目で見えた課題というお話をしました。

この記事の最後に

「震災から1ヶ月が過ぎ、これからはこころのケアが大切だ」という声が聞こえています。

その一方で

「私たちも支援をしたいのだけれど、行政との調整に難航している」
「どのようにボランティア活動を始めたのか知りたい」
「一緒にボランティアをさせてもらえないか」

などのご連絡を届いています。

というお話をしました。

こころのケアの関心は、ますまる高まっているようです。
ラジオやテレビなどからもご連絡をいただきました。

その反面、カウンセラーのような方からは、
「活動をしたいけれど、関われない」という声が届いています。

前回の記事のように、私たちも自身、活動はまだまだこれからという段階ではありますが
「どのように関わりを作ったのか」に関して問い合わせもいただいておりますので
今回の記事は、私たちNPO法人しごとのみらいが
なぜ、メンタルケアのボランティアができるようになったのかについてお話したいと思います。


■私たちが現場に入れた最大の理由

私たちしごとのみらいがボランティアの現場に入れた最大の理由……
それは、「すでにつながりがあったから」です。

言い方を変えますと、みなさんが今、されているような体験を
「私たちは少し前に、その体験を済ませていた」といってもいいかもしれません。


■カウンセラーがメンタルケア・ボランティアに参加しにくいわけ

カウンセラーの方がメンタルケアなどのボランティアに参加しにくいわけを一言で言えば
ボランティアをコーディネートする側の方から見たときに
「どのぐらい信頼していいのか、相手に分かりにくいから」です。

信頼が得られれば、関わりを持てる可能性が高くなるのではないかと思います。

では、どのようにすれば、信頼が得られるのでしょうか?
いくつかあると思いますが、「資格」「活動実績」「人間関係」などが上げられます。


【資格による信頼】

どのぐらい信頼していいのか分からない相手から見て
もっとも分かりやすいものの1つは資格です。

メンタルケアに関わる資格には、実は、国家資格はありません。
そういう意味では、すべて同列と見ることもできますが
実際には、信頼度の高いものと、そうでないものがあります。

臨床心理士はもっとも知名度の高い資格です。
テレビなどでメンタルケアの関係でコメントしている人の多くは臨床心理士の方ですし
「臨床心理士なら……」という安心感が、現地の方には伝わるのでしょうね。

メンタルケアの専門家でなくても
保健師さんや看護師さんのほうが、信頼度が高いのが実際です。
それは、知名度によって安心感があるからなのでしょう。

けれども、臨床心理士になるためには、大学に行かなければならなかったりと
さまざまなハードルがあるのですよね。社会人にとって、それはかなり高いハードルです。

メンタルケアのボランティアをしたいと思われる方の中には
これまで、さまざまな機関で勉強されて、資格をとってきたことでしょう。
「わたしは○○のカウンセリング資格を持っています」と伝えても、なかなか理解されないという
ご経験がある方もいらっしゃるはず。

資格の有無に関わらず、実力のあるカウンセラーはたくさんいますが
資格によって、信頼度が異なりますし
それがどのような資格なのか、相手には分からないのが実際だと思います。

それゆえに、伝わらないもどかしさがあるのですよね。

私もNLPという心理学をトレーニングし、資格を付与する側の資格を持っていますが
分かりづらい資格を伝えても、
知らない人からしてみると、余計に抵抗感を抱いてしまう恐れがあるので
あまり資格名を伝えることはありません。それよりもむしろ、
「心理学のトレーニングをしています」
「働く人々のメンタル的な課題を解決をサポートしています」
のような、相手にわかる伝え方をしています。


【活動実績】

次に、分かりやすいのは活動実績です。

こちらは、資格ではなく、人や行動に対する信頼です。
私たちが現場に入ることができたのは、これまで活動してきたつながりが大きいです。

私たちは元々、「もっと仕事をたのしくしたい」
そのためには、「働く人々のメンタルケアが必要だ」と考えていたので
震災前から、何度か行政にアプローチをしてきました。
正直、その思いは、なかなか伝わりませんでした。

けれども、これまでの関わりが、今日につながっていると思っています。

また、これまでの活動実績は、新聞で取り上げていただいたことがありました、
「以前、新聞に載っていた記事を見たので、活動が分かりやすい」と担当の方がおっしゃっていました。
これまでの活動実績も功を奏しているようです。

私たちが何をしている(しようとしている)かが、すでに伝わっていたので
現場に入ることができたといってもいいかと思います。


【人間関係】

活動実績にも入るのですが、これまで少しずつ動いていたので
ボランティア・センターの方とは顔がつながっていました。
多少の調整はありましたが、顔はすでにつながっていたので
そこを突破口にして、現場に入ることができたのではないかと思います。


■「メンタルケア・ボランティアをしたい」と思うみなさんへ

「人を助けたい」「人の役に立ちたい」……
カウンセラーという職業を選ぶ人の多くは、このような気持ちを他の方以上にお持ちでしょう。
であるからこそ、「ボランティアに参加したい!」と思うのですよね。

では、これまでお話してきた「信頼」がまだないという方は、どのようにしたらいいのでしょうか。

メンタルケアのボランティアについて、インターネットで検索してみました。
多くは、資格を発行している任意団体が、それぞれの活動をしているという感じのようです。

例:

もし、今、カウンセラーとしてなんからの資格をお持ちなら
その団体が、どのような活動をしているのか、ホームページなどで調べてみるといいかもしれません。

また、大切な目的は、カウンセリングをすることではなく、現地のみなさんが元気に過ごすこと。直接的なメンタルケアだけではなく、他の関わりから入ってみるのもいいかもしれません。

たとえば、衣食住など、他のボランティア活動から入り
被災された方と関わりを持つ中で信頼され、話し相手になるのもいいかもしれませんし、
Twitterなどで流れている不安なつぶやきに答えるのもいいかもしれません。

いろんな役割の果たし方があるような気がします。

また、今だけではなく、もう少し長期的に考えてみると
「カウンセラーとしていかに信頼してもらうか」というのは
今回の震災に限らず、仕事を進める上でとても大切なテーマだと思います。

今回は直接関わることができなかったとしても
今後、仕事の中でどのように信頼されていくのか
もし、今後何かがあったときに、すぐに関われるような信頼を、平時にいかに作っておくか
そのようなことを考え、行動するいいきっかけになるのではないかと思います。

以上、ご参考になれば……

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