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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

アラブ各国の状況に見える「今の次」を最初から意識しているかどうかという所

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チュニジアの政変以降アラブ諸国を中心に現在の政権に対する動きがいろいろ出ているのはみなさん既にご存じのとおり。ただ、何故このような動きが一気に広がっているのか、その裏側でたとえばインターネットがどのような役割を果たしているのか、そもそもこれら各国の政治体制や現時点での統治機構がどのように成立したのかなど、ちゃんと押さえていないと目の前の現象を誤解することになりますよ、っていうのも重要な話です。

ただ、政治体制の話をここでやりだすと収拾がつかなくなってしまうので、話を少しマネジメント論に展開する方向で考えてみたいと思います。なにか?いや、今の何かしらの体制の「次」を意識しているかどうかってことについて。

 

政治体制として、特にある一定の所に権力を集中できる(あるいはしなくてはいけない)状況のなかでは余り先の事を考えることは難しい

アラブ系諸国の多くがいわゆる西欧系の民主統治体制を持っていません。歴史的経緯を考えてもそれは非常に難しく、たとえば一度イスラム籍に入ってしまうと抜けることができないなどといった宗教的な社会の仕組みを見直さない限り無理(というか教義の変更自体無理)でしょうと思ったりします。逆に言うとそのような仕組みが無いとコミュニティーを維持できなかった地域的な状況から生まれた数百年にも及ぶ歴史がそこにあるわけで、それを「今やそんな事言ってる場合じゃないでしょ?」なんて簡単に変えることなんてできない相談なわけです。

でも時々何かの流れで大きな政変が起きる訳です。あるいは起きてきたわけです。その時点その時点で、何かしら権力の座についた一定の組織なり一族なりがそれから数十年か数百年かの間地域を統治するという、それこそ太古の昔から存在する仕組みが基本的に生きているわけです。

あるときは権力中枢の中での内部抗争で。
あるときは権力とは全く関係ない場所で起きる混乱に押し流されて。
またあるときは生じた混乱に乗じて外部から征服されて。

となると、基本的に今の自分の体制を維持することがまず第一になる。そしてそのあとその権力継承を前提として動けるかと言うと、そもそも内部対立で身内からクーデターを起こされる事も当然あるわけですから、自分や自分の組織全体にとってナンバー2として機能できる人物を安穏と暮らさせるわけがないし、むしろ或る程度芽が出てきてしまった=自分の思うタイミングとは違う段取りで自分を蹴落としてしまうかもしれないと思った瞬間に、何かしらの理由で左遷するなり粛清するなりといった動きは当然出る訳です。結果的に自分に従順かつ妄信してくれる人間しか周囲に置かなくなり、そうなると更に自分の周囲で何が起きているか判らなくなる。

 

今の体制が最大限肥大化することにより維持される体制、というもの

こういう流れが何をもたらすのかというと、基本的に次の顔を持たないことが基本になるわけです。王室のような形態をとれば比較的判り易く見せることはできますが、誰かしら権力者に集中すると独裁政権と呼ばれるよねとか、色んな見方が出来たりします。でも実のところ、いざ何か権力継承が起きようとすると実はその次の顔が無い。方向感についても良く判らないということが起きがちですし、現実に起きているわけです。

たとえば今のアラブ系諸国での動きの多くはある程度長期にわたる統治をおこなってきた独裁政権を倒してしまえ!という流れが見てとれますが、ただし独裁状態であるそれぞれの国においてその次を担える体制なり組織なりが存在してることは稀です。

多分統治システムとしての機能はある程度果たせるのですが、政治体制として安定できるかどうかというと別の話。それらの役割を果たすためには事前にある程度その人物なりその組織なりの存在が認知され、権力継承ができる立場にたった時点で必要なリードタイム(と若干の混乱?)をもって次に行くべきなのですが、既にその余裕はない。

ということで、体制を倒すのは良いと。でも、そのあとどうするの?っていうところに大きな空白があったりするわけです。壮大な穴埋め問題。でも回答が見つからない。

 

軍というプレゼンス

そんな中であるからこそ、たとえばこれはアジアでも(一部では今もですが)存在した軍のプレゼンスと言うモノに依存して体制の混乱を防ぐという事の意味があったりする訳です。こういう混乱が起きる国の場合、ある程度のレベルの教育を受けた人間は政治体制か行政政府機関、あるいは軍に所属することになります。民間企業レベルでももちろんある程度いるでしょうけれど、もちうる権力の範囲が異なります。

で、政治体制が崩壊した場合行政機関もマヒすることになりますが、軍だけはそれなりの知識を持った人材が元々それなりに所属し、混乱の中でも大抵の場合それ自体の内部の命令系統は存続し、行使できる物理的な力も持っている訳です。となると、国内の治安維持だけではなく政治体制の方向を決するという意味で軍がどちら側に付くのか、その後にどのようなスタンスで関与しようとするのかなどが重要になるわけですよね。

ただし、軍が(反体制側を制圧しないという意思表示も含めて)現体制を支持しないかもしれないぞ、という話が流れる時点でその現体制は終わっているのが通常ですが。

 

で、ぐるっと回ってマネジメントの話ですが

時事問題に余り触れないぞと書きだした割りには随分と書いています(笑)が、ぐるっと回ってマネジメントの話。

いや、なんてことなくて、どの組織であってもその組織の中である程度のポジションに上がって行く人と言うのは基本的にその組織に対して強く最適化された場合が多く、周囲から見ると異質あるいは異様とすら思える(時もある)その組織の立場や理論しか判っていないことを理解してないって事があるよねあるよね、と言うことを時々思ったりします。

あ、特定の誰の話というよりは一般論ですけどね。

また、自分自身が変わる意志がそれほど強くないにも関わらず外部の新しい風だと称して人の入れ替えを行う場合があるやに思うのですが、新しい風に既存の仕組みへの適合を求めるって筋違いじゃないのかな、と言うことを時々思ったりします。

あ、特定のどこかの話というよりは一般論ですけどね。

で、ある程度の規模になったときにふと見渡すと、自分の作り上げた組織を「自分の作った組織として継承」し、更に伸ばしてくれる次の人材というものを全く考慮していなかったことに気がついて愕然とし、それ現在の組織内部であわてて育てようと始めることってなんか違って無いか、ということを時々思ったりします。

あ、特定の何かの話というより一般論ですけどね。

 

なんとなくそんな事を時々思うんです。
一般論なんですけどね。

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