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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

近年は中国やインドなどの新アジアパワーが圧倒、外国人学生率30%100名程度に日本人が2-3名:米MBA事情(4)

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★最近の卒業生と話すと、外国人の割合として圧倒的に中国人・インド人が増えている様子が伝わってきます。バージニア大学のDarden(ダーデン)スクールについて、続けます。

バージニア大MBAコースが実はダントツにすばらしいわけ(1):Charlottesvilleという理想郷

毎日3ケース、全ての授業がケーススタディー、Bootcampと呼ばれるカリキュラム:バージニア大MBAコースが実はダントツにすばらしいわけ(2)

Honor Codeが守れなかったら退学処分、信頼と厳格さ:バージニア大MBAコースが実はダントツにすばらしいわけ(3)

■授業をファシリテートする先生はまるでオーケストラの指揮者。
馬蹄状のぐるりと階段状に取り囲む席に60名で座る学生たち。そこにやってくる先生。先生はコールドコールで授業をスタートしてから90分間、誰もがみごとな集中力でクラスを盛り上げていきます。発言の中から有益と思われるキーワードが次々と上下移動する3枚の黒板に書き込んでいきます。学生からすれば、自分の発言が黒板に書き込まれるのは、何とも貢献できた気持ちがするから不思議です。

必要な意見を必要な場で引き出していくプロです。その様は、まるでオーケストラの指揮者です。いや、毎回発言の内容が瞬間々々いつも異なるものを取りまとめるわけですから、オーケストラよりもJazzに近いかも知れません。ソロを回しながら優れたアドリブを引き出すような感じでしょうか。優秀なファシリテーターです。

途中に映像画像があったり、学生のコンピュータ上のスプレッドシートを全員の前で共有したり、学校としてこの手のことへの投資を惜しんでいません。多数のことがアクティブに話し合われ、そこから、従来には思いもつかなかった結論めいたことが自分の頭にも浮かぶから感心してしまいます。授業の中には、それこそ鳥肌が立つように感動するものも多数ありました。全員で徹底的に事前準備をして授業を受けるからこそ行ける次元なのかも知れません。

■先生はProfessorではなくMr.や Ms.あるいはファーストネームで呼ぶ。
(1)にも説明しましたが、バージニア大学創立者のトーマス・ジェファーソンは法律家、建築家、政治家、大統領、大学創立者など、多数の顔をもっていました。だからでしょう、自分のことを、ミスター・ジェファーソンと呼ばせていたそうです。

その名残でしょう。アメリカでは大統領のことをミスター・プレジデントと呼ばせます。バージニア大学用語でも、プロフェッサーと呼ぶのではなく、先生のことをミスターとかミズで呼びます。あるいは、もちろん、親しい知り合いはファーストネームで呼ぶことを良しとするアメリカ文化です。先生をファーストネームで呼ぶこともあります。

半期の間同じ席に座りながら先生に毎日発言について採点をしてもらっているわけですから、先生とも顔なじみ、知り合いになれます。オープンドアポリシーで先生の個室は基本的には解放されていていつでも質問に行けますし、毎日開催される20分間のコーヒーブレークでも先生たちは極力学生に交じって議論をしています。

自分の研究よりも、学生を教育することを優先してしまうほどの情熱を感じるのが、Dardenの文化とも言えるでしょう。良質な教育を、最大限の熱意と実行をもって実現している団体が地球上に存在する、この事実を知ることができただけで驚愕の2年間でした。

■60名のクラスが4クラス(当時)、1学年250名程度でほぼ全員が知り合いになる。
1学年に700名も800名も学生がいるMBAコースが多い中、DardenやTuck(ダートマス大学のMBA)などのように、小さなクラスを保っているところは、学生への価値が高いです。大学の評判はある程度まではサイズに比例するところがあります。卒業生が多いのは社会への影響度も大きいですから。ところが、教育の質はどうしてもサイズとは反比例します。

必然的に同学年の学生ともほぼ全員顔見知りになることができます。比較的小さな町であるCharlottesvilleです。スーパーに行ってもレストランに行っても、あるいは飲み屋に行っても、大抵誰かしらと会います。声をかけたり立ち話をしたり、自分たちの住んでいる町、という感覚がして、これは楽しいです。

■日本人学生が極端に少ない。
会話力が必須な、このケーススタディー中心の学校は、受験勉強で鍛え抜かれた筆記試験を好む日本人学生には敬遠されることが多いです。その結果日本人学生は少ないです。これだけ良質な教育の場があるというのに、参加していないのはもったいないですね。

さらに近年は中国やインドなどの新アジアパワーに圧倒されているとも聞きます。外国人学生率が30%、100名程度の中、日本人は大抵2-3名、多い学年で5名くらいです。こんなところにも日本の国際的環境の中でのプレゼンスが相対的に下がってきていることがわかります。

アメリカの文化を学ぶには学校にも町にも日本人が少ないのはメリットです。海外駐在経験者ならわかると思いますが、どうしても日本人がいればその中での連帯を重視してしまいます。ただ、その中でもDardenに集まった日本人学生たちにはフィルターがかかっているのでしょう。卒業生たちを見ても、社交的で物おじしない人たちが多いかも知れません。

以下次号・・・『米国MBA取得へのプロセス具体例: 実は何年にもわたるプロジェクトです

※20100422 07:11 以下次号のリンクをつけました。

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