オルタナティブ・ブログ > 坂本史郎の【朝メール】より >

ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

創立10周年を迎えることができました(3)

»

★昨日の創立10周年パーティーは、とても温かい、いいパーティーになりました。10年間の節目がつけられたことは、面白いもので、視点を次の10年に移してくれます。

本当に多数の人たちに助けられながら今の自分たちがいる、そして、その事実をこの2-3年で増えたメンバーたちにも見てもらえたのはとてもよかったと思っています。そこで配った記念品がCupmen。この10年間での自分の心境をあらわす象徴だと思いました。

Cupmen_2

★「創立10周年を迎えることができました」シリーズ、少し続けます。

創立10周年を迎えることができました(1)
■東レのベンチャー支援制度を利用した立ち上げ
■当初のビジネスモデル
■当初のビジネスモデルの失敗
■受託時代

創立10周年を迎えることができました(2)
■やはり自社製品にもう一度チャレンジしよう、B2Bで
■「自社製品開発はラストチャンス」の思いで「カチャットサーバー」が誕生
■最初のお客様たち
■3ヶ所で同時に火を噴く

==

■相次ぐ品質トラブル
製品をデモで入れ始めてわかったのが、どのお客様も環境がそれぞれ違い、ついついそれに合わせてカスタマイズに近いことを実施してしまいます。その場を切り抜けて、システムと接続することはできるのですが、新しいお客様に行くとまた同じことを実施します。

毎回インド人プログラマーたちがお客様先に行き、その場でプログラムを修正しては戻ってきます。そのうち、便利だからと、お客様先のサーバーにソースコードをそのまま残してきていることがわかりました。現地でリコンパイルをしてそのまま残してくるのです。お客様にしてみれば、インド人プログラマーがやってきて粘っているというスタイルはかなり驚きですよね。

ある一定の経験値が積み重なれば何とかなるものなのか、それともやはりSI的に対応するしかないのか、未知の分野です。経験値が少ないのならSI的に導入するしかありません。プログラムの亜流がどんどん増えていきます。

■製品を集中して陣容を縮小して続ける
2004年です。製品を売り始めて1年経ちます。いい製品コンセプトで、導入したお客様は喜んでくれます。一方、品質が良くないので提供する側はひたすら苦しいです。人手も必要で、費用もそれなりにかかります。さらに受託をやりながら日銭を稼ぐ状態が続きます。

自社製品をなんとかものにしようとしているのですが、なかなか立ち上がりません。そこに、当時50%の株主であった東レの、経営企画室での担当監査役が交替します。東レのベンチャービジネス推進制度の条件には、非常勤監査役として東レから1名加わるというものがありました。経営企画室の室長も替わったことで、一度、事業説明をする場をもらいました。

製品メリットやお客様の筋の良さを懸命に説明します。事業の説明を聞くと経営企画室長は二つのことを言います。研究職が長かった人です。

「いい製品みたいですね。もし、売れるという確信があるのなら、他のことをやめてそこに集中してください。そして、必要最低限に人数を縮小して続ければいいじゃないですか。売れるまでじっくり待つ。中核の人だけを残すのですよ。」

これは、リストラをしなさい、ということにほかありません。結果的には社員は減らさず、役員報酬を80%カットし、インド人プログラマーを一人に減らしました。それで頑張り続けるしかありません。また、受託案件はすべてやめて、「カチャットサーバー」の販売に集中したのです。

■スパゲティプログラム
お客様先でパッチ当てを繰り返し、さらには、品質トラブルがあるたびにプログラム変更を重ねてきました。「カチャットサーバー」は、いわゆるスパゲティプログラムになってしまいました。プログラムを改良しようと数社に相談をしました。どこも一様に次の答えを返してきます。

「作り直ししなければどうしようもないですね。」

作り直しをするのか、スパゲティプログラムをほどいて行くのか、生き延びるためにはどちらかをやらなければなりません。ところが作り直しをするのであればまたお金が出ていきます。駐在してくれているインド人プログラマーは日々のトラブル対応で必死です。スパゲティプログラムをほどくことなどできません。

導入のたびにトラブルを起こすものが手元にあり、まるで生殺しのような日々が続きます。会社全体がうつ病のようになっていきます。自分もなぜだか元気が出ません。そしてついにその日がやってきました。必死に頑張ってくれていた気のいいインド人プログラマーがうつ病になってしまったのです。

以下次号・・・『創立10周年を迎えることができました(4)』に

※20100316: 次記事えのリンク張りました。

Comment(0)