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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

日本の電力不足にも使えそうなBloom EnergyのEnergy Server(自家発電装置)

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先日たまたまBloom Energyを調べていて、同社の画期的な発電装置であるEnergy Serverがすでに商用化されていることがわかりました。日本であまり報じられていないようなので、わかったことをメモしておきます。

Bloom Energyは、NASAで火星における酸素生成装置を研究していたエンジニアKR Sridharが創業したベンチャー企業。酸素生成のメカニズムを逆に使うと電力が得られることから、その製品化を進めてきました。米国の有力ベンチャーキャピタルが早期から多額の投資をしてきたことが知られています。
同社のEnergy Serverは「固体酸化物型燃料電池」と呼ばれる薄い燃料電池のユニットを何枚も重ねてスタックにし、それを集約して100kWの発電容量を持つようにした自家発電装置です。車1台分のスペースがあれば設置できるとのこと。同社によると100kWで家庭100軒分の電力がまかなえます。

ここに薄い燃料電池ユニットの写真があります。これ1枚で25Wの発電容量があるそうです。
こちらはEnergy Serverの写真。これ1台で100kWの発電容量。

日本などで製品化が進められている燃料電池は「固体高分子型燃料電池」と呼ばれ、都市ガスなどから水素ガスを作って酸素と反応させて電力を得るのに対し、Energy Serverは天然ガス、バイオマスガス、埋立地ガス、エタノールなどを燃料とすることができます。同社によると、色々な燃料に対応していることから、使い勝手がよく、また燃料によっては二酸化炭素排出量をかなり低くできるらしいです。既存の発電と比較すると50%程度の排出量削減は確保できるとのこと。

同社のEnergy Serverのすごさは、その価格にあります。1台70万〜80万ドルという数字が報告されています。企業用途ですね。家庭なら100世帯分ですが、ビルでは床面積3万平方フィート=2,787平方メートルのビル1棟をまかなう発電量があります。購入した企業は数年で投資回収ができるとのこと。数年で投資回収ができるのであれば、多くの企業が導入を本格的に検討し始めてもおかしくありません。

GoogleやeBayは早期に同社Energy Serverのパイロット顧客となったことが知られています。その後、昨年10月に正式にEnergy Serverが発表されてからは、Sharks Iceというカリフォルニア州サンノゼのスケート場Dinubaというコカコーラ系列のジュース製造工場で導入したことが報じられています。

また、最近では、Bloom Electronsと呼ばれるサービスを開始しました。これはEnergy Serverを購入してもらうのではなく、顧客企業の敷地内に設置したEnergy Serverを同社が運用し、顧客からは固定的なサービス料を得るという仕組みのサービスです。契約に際しては10年間の固定料金のしばりがかかります。顧客はしばりがあるものの、電力価格を2割程度削減できるメリットがあります。すでに、ウォルマート、コカコーラ、ステープルズなどが顧客になっています。

ここまでを知ると、現在の東京電力管内の電力不足を解消する1つの手段として、かなり使えそうに思えてきます。
Energy Serverには、車1台分のスペースがあればすぐに設置できる、発電容量を増やしたければ逐次継ぎ足せばよい、というメリットがあります。また、価格面でも数年で投資回収ができる水準であるのなら、臨時で大量に調達したとしても、誤った投資判断にはならないと思います。日本が必要とする「量」をBloom Energy社が満たせるかどうかが鍵となりますね。

[後期]

仮に同社が大量のEnergy Serverを供給可能としても、あとは設置用のスペースが課題ですね。現在東京電力が必要としている発電容量は大まかに言って1,000万kW。うち5%をEnergy Serverで手当するとすれば、自動車5,000台分の駐車スペースが必要になります。

あとは、計画停電に悩む企業にも有用ですね。日本の関連規制の認証が早期に得られて、2ヶ月程度で設置可能であれば、導入したいと考える企業は多いのではないでしょうか。


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