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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

豚組中村仁氏(@hitoshi)の「Twitter + 遊び」をベースにした飲食店経営哲学ニューウェーブ(後)

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豚組の中村さんとのUstream対談を終えて、小田急線で経堂のパクチーハウスに向かう途中、坂田さん( @nyattta )と二人ですごいね、すごいねを連発してため息をついていました。二人で一致した見解は、中村さんは、人が真似できない領域で自分の市場をどんどん作っている。ブルーオーシャンを楽々作り出している、ということでした。
以前、経営誌で一橋大学の先生がお書きになっていて記憶に残っている文言に「最良の戦略は、なんだかわからない戦略である」というのがあります。価値基準が他企業からは容易に理解できない。なんだかわからない。だから模倣されない。模倣されないから市場で楽にビジネスができる。そういう戦略が一番すごい、という内容でした。
豚組の中村仁社長は、ちょうどそれをやっているように思えます。

中村さんのおっしゃった事やノウハウをそのまま採り入れて真似をすることはできると思います。しかしそれはたぶん、あまりうまく行かない。中村さんがおっしゃっていることをよく理解した上で、その「ココロ」を生かして、自分なりにまったくオリジナルな方策として打ち出さないと、うまく行かないのではないか、ということを考えています。

それでは続きを。(レイアウトが昨日と違っていてすみません…)

■ツイートだけで1週間600名の来店があった「3センチ祭り」

中村:社長がおごります系の企画をやるとすれば、それはキャンペーン的なものではない。友だちにおごる感覚。それをお店の公式アカウントでやると堅くなる。勢いでやれなくなる。勢いをつけるためには、ぼくの独断で「ぼくがおごるから、いいだろう」と。「やっちゃった方がおもしろい」という感覚。その方がTwitterのライブ感が出る。

坂田:他におもしろい活用例は?

中村:foursquareで豚組にチェックインしている人が10人いたら何かするよ、とか。宝探し。お店の中に豚のオブジェを置いて写真を撮る。豚組に来店されて、それを見つけた人には何かサービスする、とか。この前盛り上がったのは「3センチ祭り」。あれはぼくの思いつきから。

坂田:ネーミングがすごい。

中村:とんかつのお肉の厚さが3センチ、ありえないぐらいに厚いのを出した。西麻布豚組(とんかつ店)が5周年なので何かやりたい。お店から出てきたアイディアはあまりおもしろくない…。何かインパクトあることができないか。無料で厚切りにしちゃおう。無料でアップグレード。それをタイムラインで呼びかけたら、5時間ぐらいの間に550件以上RTが来て、1週間で600名の方が来店された。 

今泉:客単価は?

中村:3500円ぐらい、居酒屋より安い。600名ということは、1日100名のお客様。席が35席ぐらいしかない。そこに1日100名。それがTwitterだけで来店された。

坂田:タイムラインから来た質問。「人が人を呼ぶ仕組みを導入するには?」

中村:口コミしてもらうためには、まず、内容がしっかりしていることが重要。口コミは増幅する。広がる口コミの元になる実体がある。それを単に大きく見せるだけだから。お店としてきちんとしたメニュー、サービス、QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)をきちんとやらなければならない。あとはコストパフォーマンス。その上でどういう工夫をするか?けっこやりようはある。だが最後は、どれだけおもしろくて、みなさんが取り上げてくれるか。強制はできない。言いたくなるような仕掛けは工夫次第でいくらでもできる。

■フォロー数を増やせない理由→タイムラインに現れる人を把握しておきたい

今泉:巻きが入りました。

坂田:最後に重要なポイントをまとめていただきたい。

中村:フォロー数至上主義はやめましょう。フォロワーがどれだけ多いかということは、実際にお店にどれだけ来店していただけるかということと、ほとんど関係ない。Twitterのフォロワー数を大きくして商売ができる人がいることはいるが、飲食店の場合、フォロワー数を追いかけてもまったく意味がない。少ない方がいいということはありえないとしても。増やし方が問題。

闇雲にどんどんフォローして、フォロー返ししてもらってフォロワーを増やしていくと、自分のタイムラインがめちゃくちゃに破壊される。ノイズだらけになってしまう。タイムラインがつまらなくなる。そうなると「絡みたい」、「会話したい」という欲求がなくなる。最終的にどうなるか。一方通行的に何かつぶやいているだけ。返ってきたものがうれしくて、それに返すだけになる。

でなくて、自分がタイムラインを読みたいと思ってきちんと読む、自分にとって一番おもしろい場所でないといけない。

そこでおもしろいと思って、自分から相手に興味を持つからこそ、相手も興味を持つ。お店の側からお客様に興味を持たないと、お客様がこちらに興味を持ってくれない。親近感が生まれない。

今泉:リストで管理するやり方がある。

中村:リストで管理ができる人は、ぼくはすごくまれだと思う。自分もリストを作っているけど、実際、日々眺めるのはメインのタイムライン。リストを見に行かない。リストを見るにはひと手間ふた手間かかるから。
今泉:細切れの時間にこまめにみるから?

中村:そう。タイムラインがおもしろいか、おもしろくないか。その人から見えているTwitterの風景、Twitterで作っている人間関係。タイムラインはその起点になる。

お店がTwitterをやる場合には、「この人誰?」という状況になるとまずい。お客様から、「今度行きますよ」とタイムライン上で来た場合に、「この人誰だっけ?」「この人とどんな話してたっけ?」「そもそも絡んでたっけ?」となるとまずい。

今泉:中村さんのタイムラインに現れる人はだいたいわかっている?

中村:何となくわかっている。過去にどんな話をしたかも何となくわかっている。お店の場合、お客様が来店されるということが他業種と違う。Twitterユーザーの場合だと、こちらをフォローして下さっている方が来店されると、先方は明確にこちらをわかっている。それに対してこちらが「どちら様?」と言うわけにはいかない。

その時に「あー、どうもどうも(…こういう方だったんですね)。ありがとうございます。そう言えば、こないだMacを買ったっておっしゃってましたね」という話が出るか出ないか。それがすごく大きい。

それができるためには、自分がフォローする数を増やせない。自分が追いかけられる範囲に留めないと。
大きなチェーン店がTwitterを使ってインパクトのある割引情報を流して、お客様が一度そのお店に来店される。それは言わば集客が目的のコミュニケーション。それではなく、来店のきっかけは割引であっても、そこで新しいコミュニケーションを作って、次につなげていくということをちゃんとできるかどうかが重要。それをやるから、そのお客様は必ず帰った後で、「ありがとうございました」とツイートして下さるし、「ブログにも書きました」と教えて下さる。「じゃ今度友だちを連れて行きますね」となる。

それを見ていた人が「あ、自分も行きたい」となる。こういうコミュニケーションにつながっていくので、表面的な浅く広いコミュニケーションに終わらせてしまうのはもったいない。

■「自分ひとりで全部の責任を持って自分でできる」個人が強い

坂田:自分自身が楽しんでTwitterをやっていないと、楽しさがお客様に伝わらない。タイムライン=お友だち、お友だちになれる可能性がある人たち。

中村:公式アカウントは全部フォロー返しするという風にやっているのが一般的。ぼくが公式アカウントとぼくの個人の勝手口アカウントを分けて使っているからできること。

ぼくは、必ずしもフォローされたから、フォローを返すとは限らないよというスタンス。フォローするのは、会ったことがある人か、タイムラインでほんとに親しく絡んでもらっている人とか、ぼくが尊敬してこの人のツイートを常に読みたいと思う人。そういう方をフォローさせていただいてますよ、というスタンス。

公式アカウントの方はフォローしてくださった人にフォロー返ししているが、その分やっぱりコミュニケーションが希薄。なかなか、そこで関係性を築きづらい。公式アカウントで深みのあるコミュニケーションをやるのは、やっぱり難しいところがある。

坂田:個人事業主、小規模店舗などは、公式アカウントではなくて、パーソナリティを出したアカウント、豚組さんの場合の @hitoshi をやった方がいい?

中村:全然そう。ほんとにTwitterで強いのは、看板を出している、会社のロゴなどでやっている大きな企業より、個人店で、自分ひとりで全部の責任を持って自分でできるという人の方が、はるかに強い。規模が大きいと逆に使いづらい。自分ひとりだと「オレがお店だ」と言えるわけじゃないですか。

坂田:今日は気分がいいので「オレが全部おごったる」ぐらいができる。

中村:そうそう。そこでいちいち決裁を取ったり、社内でいちいちみんなでミーティングをして、準備をどうするとかいう話もない。「やる」つったらやればいいだけだし。

坂田:自分がお客様になって欲しい方をフォローする。そうして交友関係を深める。すると自然とフォロワーも増える。お客様も増えていくし、お客様がお客様を呼ぶ流れが自然と作れる。

中村:そういうことです。

Butaguminow

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