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「能力主義」から積み上げる人事制度体系、あるいはルール主義ではなく原理原則主義での経営

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ウチの会社の人事は
・社員の納得を重視する(そのための公平性、透明性なども、もちろん重視)
・ルールをたくさん作るのではなく、ケースバイケースで議論して判断する
という感じで運営されている。

そういう話を社外の人に話すとよく、「ケースバイケースだと議論が大変すぎる」「そもそも公平性を担保できないのでは?」とか「社員数が少ないからやれているんですよね」と言われる。もちろんウチだからやれている、という要素もあると思う。例えば社員が全員ファシリテーターなので、議論の生産性が他社よりずっと高いとか。

でも、一つ重要な観点があることに最近気がついた。それは「原理原則から演繹してケースバイケースを判断する」という思考方法だ。とはいってもピンとこないだろうから、もう少し具体的に説明する。


★人事の原理原則は「能力主義」
改めて俯瞰して考えると、ウチの会社の人事を考える上での全ての土台は「能力主義」という言葉で表現できる。
つまり、
・能力が高い人を採用する(これはどの会社でも同じだろう)
・能力が高い人を評価する(必ずしも成果を上げた人と同じとは限らない)
・能力が高い人に仕事を任せる
・能力が高い人にたくさんお給料を払う
・能力が高い人をなんとかして育てる
みたいなことだ。

この「能力主義」という原則は、コンサルティングという生業から自然に導かれる。プロフェッショナルファームで、社員の能力を軽視している会社はないだろう。
そして、この「能力主義」を原理原則第1階層とすると、以下の原理原則第2階層みたいなことが導かれる。それを一つ一つ説明していこう。

★原理原則第2階層その1:Pay for Performance
能力主義なのだから、お給料(昇格/昇給)は能力で決める。
年功序列の要素は一切ない。
家族手当的な生活支援みたいな要素もない。
実績(売上など)に応じて給与を変動させるということも基本的にない。

例えばプロジェクトマネージャー(PM)という役割はケンブリッジにもあるが、あくまで「このプロジェクトでは、この人がPMを務めるのが最適なフォーメーション」と判断しているだけ。
たまたまPMという役割を果たしているだけなのだから、役職手当的なものもない。
そしてPMより能力が高い人がメンバーになることもありうるし、能力主義で給与を決めている以上、その人のほうが当然PMより給与が高い。

★原理原則第2階層その2:努力や学習過程は評価対象外
能力主義を突き詰めると「社員がどういう手段で能力を伸ばしたか?」は問わないことになる。

・めちゃくちゃ残業している、とか
・良く勉強している、とか
・大学院を出てる、とか
はどうでもいい。
そもそも、人によって能力を伸ばすために有効な形は違う。僕の場合は本を読んだり書いたりするのが一番効率が良いが、トレーニング受講が有効な人も、社外の人と話すことで能力を伸ばすのが得意な人もいるだろう。
だから会社としては、そういう努力や学習過程の結果、現時点でどれだけ能力が高いか?だけを見る。

★原理原則第2階層その3:人事評価はガチ
実績でも年功でも努力でもなく、能力だけで待遇を決めるのだから、能力の見極め(≒人事評価)はガチにならざるを得ない。
このブログでも何度か触れたと思うが、制度や能力定義(コンピテンシー体系)もガッチリ作り込んでいるし、1人1人の評価にもかなりの時間をかけている。でもそれは能力主義を人事のベースにする以上、必要なコストだということを全社員が理解しているので、やれている。(もちろん大変だからボヤキはするのだが・・)
ウチの会社のコンピテンシー体系についての動画を以前社員が上げていたので、参考にしたい人は見て欲しい。ちなみに本人の人事評価表を見せながら解説してたけど、あけっぴろげにも程があるね!

https://www.youtube.com/watch?v=dAdicUvj07Y

★原理原則第2階層その4:働き方の自由度を高める
能力がある人を貪欲に集めよう、辞めないでもらおう、とするならば、働き方をある程度自由に選択できるようにしなければならない。
逆に言うと、会社都合で「4/1から鳥取に転勤な」と一方的に命令するような会社だと、本当に能力がある人を逃してしまう。

正直いって、5年くらい前のうちの会社はここを十分ケアできていなかった。だが急速に変えている。例えば僕はいま就業時間中に、長野で、この(個人で勝手にやっている)ブログを書いている。これは働く場所の自由、働く時間の自由があるということだ。

★原理原則第2階層その5:複業、出戻り・・
自由度を高めていくことの延長線上に、最近はやりの複業もある。そして複業が「自分なりの能力の高め方」になっている社員も出てきている。
実は世間が副業/複業について語り始めた5年くらい前、僕は自分の会社の社員がバンバンやることに対して、あまり肯定的ではなかった。コンサルティングという難しい仕事をしているのだし、人間はあまり器用ではないのだから、本業に集中したほうがいいのでは?という意味で。

だがこの記事に書いているように、能力主義から演繹すると、複業を社員がやる会社に脱皮するのは、当然の帰結だった。今ではケンブリッジの仕事を80%して、残りの20%で起業したり、友人のベンチャーを手伝ったり、芸術家をしていたり・・みたいな社員が何人もいる。(この話はそのうちブログに書こうかと思っている)

あと、ウチの会社は異様に出戻り(一回辞めた社員が戻ってくる)が多いのだが、「出戻りWelcome」というのは、当たり前過ぎてもはや方針ですらない。これも「能力主義」からの当然の帰結である。

以上、

原理原則の第1階層:能力主義

原理原則の第2階層:Pay for Performanceなど5つ

について説明してきた。第2階層は全て、第1階層からの自然に導かれることが理解してもらえたかと思う。
そしてそれは第3階層以下も同じだ。社員1人1人の個別ケースに対応するのが人事の仕事では多い。詳細なルールを作っていないので、ケースごとに毎回議論になる。だがそれらは全て第2階層の原理原則から演繹して「ウチはこういう原理原則なのだから、今回はこう判断すべきだよね」と、比較的すんなり議論が終わる。

ということで、うちの会社が原理原則主義で運営しているのはこういう理由だ。
ルールをたくさん作るのが個人的に大嫌い、という理由もあるのだが、原理原則を大事にすると、社員の納得度は高くなると思う。

ちなみにこの記事では人事について書いたが、この原理原則主義みたいなものは経営全体に貫かれている(ような気がする)。それをまとめたのが、以前ブログでも紹介したPrinciple(経営方針書)だ。この記事で言うところの第2階層の原則原則集みたいなものかな。今日触れたPay for Performanceも入っている。

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そう言えば、ウチの会社の人事マネージャーが「ケンブリッジ人事の生々しい話」のブログを書き始めました。今日の記事のもっと具体的な話が聞きたい人は覗いてみるといいかも。
採用面接の話とか、最近人事システムを入れ替えた話とか。
https://note.com/ayumu_watanabe

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