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どうしたらいいですか?あるいはリーダーシップの道

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★面倒見の良いリーダー
チームリーダーというか、先輩格というか。ちょっと部下っぽい人たちが初めて自分の下についたとき、僕はものすごく面倒見が良いリーダーだった。当時はプログラマー/SEだったので、自分の知識やらノウハウを手取り足取り教えてあげた。
データベース設計について質問された日には、背後にある考え方から別解、Tipsに至るまで丁寧に教えてあげたものだ。
ケンブリッジに転職して肩書きがコンサルタントになってからも、若手に対するスタンスは基本的に変わらなかった。

でも、ある時気づいたんですよね。「どうしたらいいですか」と聞いてくる彼らがあんまり真剣に自分では考えていないことに。思考停止。
たとえ最初は考えていたとしても、丁寧に、隙なく僕に反論されることも多かったわけだし。

★意地悪なリーダー
そこで昔の僕は、オウム返し作戦を考えた。
「どうしたら良いですか?」には「どうしたら良いと思う?」と返す。「AとB、どちらが良いですか?」には「AとB、どちらが良いと思う?」と返す。
向こうが思考停止で何でも聞いてくるなら、コッチも思考停止。反射的に返す。

何度かこれをやっていると、さすがに思考停止して「どうしたら良いですか?」と聞いてくるヤツはいなくなった。自分で考えろ、と言われているのは誰だって分かるし、言われてムカッとしただろう。

「おお、こうすればみんな自分で考えてくれるのか。考えないと成長しないしな。僕も楽だし」と、しばらくは得意な気分でいろんな相手に連発していた(時にはベンダーさんやお客さんにも・・)。リーダーシップの階段を一つ上がった気がしたっけ。

でもしばらくやっていると、どうにも居心地が悪い。一言でいえば、上から目線なんだよね。「自分は正解を知っている。でもそれを言うのは君の教育上どうかと思うので、考えてみたまえ」と言ってるのと同じだから。特権的ポジションからの物言い。おい、おまえはそんなに周りが見えているのかよ、と心の中で自己つっこみしてみたり。

★OPENなリーダー
上から目線を反省した今でも、「どうしたら良いと思います?」と色々な人に聞くことは多い。たとえ自分なりの「正解」を持っていたとしても、それを一旦脇に置く。脇に置いて、人の考えを聞き、吟味する。
当たり前の話だが、一緒に働いている人々はみな賢い(例外がないわけではないが)。少なくとも違った頭の使い方をする。しかも、もし相手が部下やお客さまならば、ほぼ必ず僕が持っていない情報を持ち、その上で意見を言っている。実際に細かいところを担当している人たちだから、僕より色々知っていて当然。

だから僕の「正解」とは違うことが返ってくることも、しょっちゅうある。それを否定せず、オープンマインドで「どういう意図でこういうことを言ってるのかな」「それ、そのままやってみたら何が起こるかな」と思いながら聞いていると、不思議なことがおこる。かなりの高確率で
「そのアイディアは使えないけど、こういう風に改良すれば面白いかも」
「僕の元々の考えに、そのアイディアをちょっとだけ混ぜると、ぐっと良くなるんでは?」
と第3の案を思いつくのだ。

しかも、こういう現象は「普段一緒に働いている腹心の部下」みたいな人よりも、お客さまとか、別の部署の社員とか、入社間もないメンバーの方がよく起こる。
例えば僕とよくペアを組んで提案活動をする営業マン。彼が言うことには
「何いってんのー、ちゃんとお客さんの身になって考えてます?まじめにやってよ!」
と怒りを憶えることも多い。
でもその言葉の次には、
「どうせそれやるなら、こうしないとダメでしょー。って、それ結構いい案ですね」
と言っている。だから、提案方針を議論するときには必ず相手になってもらう。そして「どうしたら良いと思います?」と聞くのだ。

自分と違う知識を持ち、違う思考回路の方が、混ぜたときに新しいものが生まれるんだとおもう。カシスをウーロン茶で割ると、カシスウーロンという第3の味(意外とおいしいですよ)が生まれるのと同じだ。

まとめ。
みんなの意見をよく聞こう。みんなの成長とあなたのアイディアのために。
今日はここまで。

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