教員のための仕事効率化 ークラウド編ー
シリーズとして、中学校で教諭(理科担当)をされてきた望月陽一郎 先生に「教員のための仕事効率化」についてお話を伺っています。第3回目は「クラウド活用」を中心にお聴きしたいと思います。
【望月陽一郎先生・略歴】
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師。Forbes Japan 電子版オフィシャルコラムニスト。元公立中学校教諭(理科)。大分県教育センター情報教育推進担当主事・指導主事・大分県主幹等を経験されています。
自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が2019年の第35回 学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net
校務におけるクラウド活用について
-学校の先生は教科を教えることに加えて、校務や部活動にも多大な時間を割いていることと思います。望月先生が校務で行っていた時短術の例を教えてください。
望月先生:まず一番時間を割いている「校務」は授業である、ということは押さえておきたいと思います。そのうえで、今回はその他の校務で使っていたクラウドについて話したいと思います。
-先生はどんなクラウドを使っていたのですか?
望月先生:校内ではNAS、校外ではOEN(大分県教育ネットワーク)を使っていました。
-校内ではNASを利用されていたとのこと。NASとは、ネットワークアタッチトストレージ (Network Attached Storage)、つまりファイルサーバーのことでしょうか。
望月先生:そうですね。以前はコンピュータにファイルサーバソフトをインストール・設定して作っていましたが、今はコンパクトな「機器」になっているので、家庭で使っている人も多いと思います。
▼家庭用NASの例
https://www.buffalo.jp/product/detail/ls520d0802g.html
今も自宅でNASを使っています。タブレット・複数のパソコンからアクセスできるようにしています。
以前「端末にデータを保存しない」という話をしましたが、パソコンがもし壊れてもデータがなくなったりアクセスできなかったりしないように工夫しています。
学校でも、NASの設定によって、
- 個人のみがアクセスできる範囲
- 全員がアクセスできる範囲
を作ることができるので、みんなで使うファイルを全員がアクセスできる範囲に置くことで、「共有」したり「引継ぎ」をしたりすることができて便利ですね。
-NASを利用する際に気をつけていることを教えてください。
望月先生:運用する側からいうと、停電(電源)です。本格的にするとUPS(無停電電源装置)をつけることもありますが、通常だと停電があるとプツンと切れてしまい、その瞬間のデータ転送や保存がおかしな状態、悪ければファイルが壊れる場合もあります。
私も自宅でNASを使っていますが、レイド(2台のハードディスクでバックアップされている)機能を使ってファイルが壊れることを防いでいます。
また、個人でも気をつけることがあります。
学校では異動があり、年度末にアカウントの削除・追加作業を行いますが、異動した先生が引継ぎファイルを個人のみがアクセスできる範囲内に置いてしまっていて、アカウント削除により、アクセスできなくなったという例があります。
使う側の意識も大切ですね。
-校外で使っていたという大分県のOENについて、もう少し詳しく教えていただけますか。
望月先生:OEN(大分県教育ネットワーク)は、私が大分県教育センターに赴任した2000年頃から稼働している全県ネットワークです。
県内にはりめぐらされた大分県の光ネットワークに市町村が接続しているため、その回線を使ってすべての市町村立小中学校も県の教育ネットワークにつながっています。
2011年頃にGoogleのクラウド機能の利用が始まっています。https://www.pref.oita.jp/site/kyoiku/2001365.html
- メール
- ドライブ
- カレンダー
を私も使っていましたが、パソコン・タブレット・スマートフォンからアクセスできるので、メールでのやりとりや自宅での教材作成に活用していました。
とても便利でしたね。
また、県で小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の先生方全員にアカウント発行しているため、市町村間・県立学校と義務制間の異動をしても、そのままアカウントを使い続けられるというメリットもあります。
クラウドの活用例としては、とてもよい例だと思います。
-教育現場でのクラウド活用について、概要がよくわかりました。ありがとうございました。最後に「まとめ」をお願いしてもよろしいでしょうか。
望月先生:NAS・クラウドを活用することで、
- 端末に由来しない
- データをみんなで共有する
というメリットがありますから、どんどん活用していける環境ができていくと、トータルで先生方の時短(効率化)につながっていくと思います。
>>「教員のための仕事効率化 ー授業・校務編ー」に続く(2019年11月公開予定)
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望月先生がmicro:bit を活用したプログラミング教育について、当ブログで連載した記事のまとめは以下の記事からご覧いただけます。
▼【連載まとめ】micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育https://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2019/02/microbit.html
※連載まとめは、望月先生の連載(5回分)を片岡が再構成してまとめたものです。