教員のための仕事効率化 ー授業・校務編ー
シリーズとして、中学校で教諭(理科担当)をされてきた望月陽一郎 先生に「教員のための仕事効率化」についてお話を伺っています。第4回目は「授業・校務における時短術」を中心にお聴きしたいと思います。
【望月陽一郎先生・略歴】
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師。Forbes Japan 電子版オフィシャルコラムニスト。元公立中学校教諭(理科)。大分県教育センター情報教育推進担当主事・指導主事・大分県主幹等を経験されています。
自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が2019年の第35回 学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net
授業・校務における時短術について
-教員のみなさまは教科を教えるのに加え、様々なお仕事をされているかと思います。日々どのような仕事をされているのか、例をあげて教えてください。
望月先生:たとえば私は中学校で勤務していましたが、定期テストに関して次のような流れで作業をしていました。
- 日頃の授業→テスト範囲決め
- 各教科担任から範囲を集め→テスト範囲発表
- テスト問題・解答用紙づくり→印刷・クラスごとに分けて準備
- 試験監督割当→当日の時間割づくり
- 問題・解答用紙受取→教室でテスト実施→解答用紙を教科担任へ
- テスト結果入力の準備
- テスト採点→結果記録とともに全体一覧に入力
- 返ってきた解答用紙を生徒に配布→採点ミスなどを受付
- 全体一覧ができあがった段階で、データ処理→学級担任へ
- 個人成績表に記入→生徒に配布→保護者の確認→回収
という感じです。
-定期テストは学校時代に何回も受けましたが、書き出してもらうと思った以上に複雑な段取りで先生方は作業されていたんですね。
望月先生:これを担当ごとに分類し直してみますね。そうすると、
○教科担任 ・日頃の授業→テスト範囲決め
・テスト問題・解答用紙づくり→印刷・クラスごとに分けて準備
・テスト採点→結果記録とともに全体一覧に入力
・返ってきた解答用紙を生徒に配布→採点ミスなどを受付
○学年学習担当 ・各教科担任から範囲を集め→テスト範囲発表
・試験監督割当→当日の時間割づくり
・全体一覧ができあがった段階で、データ処理→学級担任へ
○試験監督 ・問題・解答用紙受取→教室でテスト実施→解答用紙を教科担任へ
○教務主任 ・試験監督割当→当日の時間割づくり
○学級担任 ・返ってきた解答用紙を生徒に配布→採点ミスなどを受付
・個人成績表に記入→生徒に配布→保護者の確認→回収
このような感じになりますよね。ただ、学級担任は教科担任でもあり、試験監督もします。また学年学習担当をしていれば(私がそうでしたが)これらほとんどの業務をすべてすることになります。担当という考え方は分担と見ることもできますが、一人に集中することもありえますからね。
-ほとんどの業務を兼ねるとなると、かなり大変そうにお見受けします。多大な労力を取られているのではないでしょうか。
望月先生:テストだけで見ると、作業量に偏りが明らかに出てきます。そのため、他のところで偏りをなくさないといけません。
また、定期テストを廃止するという改革をした学校もありますが、代わりに単元ごとのテストをしているのであれば、これらの作業がその回数分(作業をまとめたり削減したりする部分はあるでしょうが)増えることになり、先生方の作業の効率化に必ずしもつながるわけではありませんね。
単元ごとのテストの作業がどうなるのか定期テスト廃止前と比較してみるのもよいでしょう。
-どちらにしても負担があるのは変わらないようですね。そのような状況の中、先生はどのような「作業の効率化」を工夫されていましたか。
望月先生:これらの作業のどの部分を工夫し(例えばICT活用で)効率化していたかといえば、(太文字はICT活用に関する部分)
○あらかじめテスト範囲を事前に決め、テスト問題原案を作成→それから授業
・・・授業の見通しを持って取り組むことができる。
・・・テスト問題の原案を作っておくことで、テスト直前の作業を軽減
解答用紙はフォーマットを統一し、過去のファイルを修正して使用
○共有ファイルを置き、教科担任にそれぞれ入力してもらう。
・・・同時に作業でき、授業の空き時間に入力してもらえる。
・・・入力完了後すぐに印刷できる。
共有ファイルに試験監督割当し調整→教務主任へ
テスト結果入力(共有ファイル)の準備・データ処理を事前設定
○あらかじめ作ってあったテスト問題・解答用紙を修正し印刷・クラスごとに準備
・・・作業を早めにできるため、印刷機も効率よく使える。
○採点→結果記録(データベース)とともに全体一覧(共有ファイル)に入力
○全体一覧ができあがった段階でデータ処理は完了する。
○共有ファイルから個人成績表に記入→生徒に配布→保護者の確認→回収
こうしてみると、
- 共有ファイルの活用
が一番多かったことがわかります。
-以前にもお聞きしましたが、共有ファイルを活用すると、同時に作業できたり、早めに準備できたりしてメリットが大きいようですね。共有ファイルの活用というのは、Microsoft Officeの機能を利用しているのですか。それとも、クラウド利用など別なものでしょうか。
望月先生:「Excelのファイル共有機能」を使えばすぐできることなので、かなりの学校で日常的に行われていると思います。これも校務パソコンが一人一台環境になったこと、共有フォルダが使えるようになったことが大きな理由です。
-校務パソコンが一人一台環境になったメリットが、このようなところにも表れているのですね。最後にまとめをお願いします。
望月先生:今後、生徒一人一台タブレットになっていくと思われます。すると、
- テスト問題を電子化してタブレットに一斉配信
- タブレットで解答することで採点、集計、評価を一元化
することができるようになるのではないかと思います。
これは、大学入試にも導入されるCBT(ComputerBasedTraining)にもつながりますね。これが実現すると、紙がいらなくなりますので、作業量がかなり減ると思われます。
また、
テスト問題→解答採点→成績一覧→通知表→指導要録→調査書
という個人成績に関する作業がありますが、どれも紙媒体がほとんどです。電子化することで一元管理でき、紙をほとんど使わずデータだけで行うことができるようになり、さらに効率化できるかもしれません。
-電子データ化するメリットは大きそうですね。電子化できるかどうかは現場の環境・状況次第ではありますが、その点についても今後、お話を伺えましたらうれしいです。今回もありがとうございました。
>>「教員のための仕事効率化 ー校務編ー」に続く(2019年12月公開予定)
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望月先生がmicro:bit を活用したプログラミング教育について、当ブログで連載した記事のまとめは以下の記事からご覧いただけます。
▼【連載まとめ】micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育https://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2019/02/microbit.html
※連載まとめは、望月先生の連載(5回分)を片岡が再構成してまとめたものです。