教員のための仕事効率化 ーデータの取り扱いー
今回からシリーズとして、中学校で教諭(理科担当)をされてきた望月陽一郎 先生に「教員のための仕事効率化」についてお話を伺っています。まず第1回は「データの取り扱い(ファイルの分類)の工夫」を中心にお聴きしたいと思います。
【望月陽一郎先生・略歴】
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師。Forbes Japan 電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校教諭(理科)・大分県教育センター情報教育推進担当主事・指導主事・大分県主幹等を経験されています。
自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が2019年の第35回 学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net
「データファイルの管理」で気をつけていること
-望月先生、このたびは「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が「学情研賞」を受賞されたとのこと、おめでとうございます。
さて、学校の先生方は教科の授業や部活の顧問をしたり教務も行ったり、非常にご多忙ではないかと思います。そこで、今回から「教員のための仕事効率化」というテーマで、仕事の効率化・時短術についてお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?
望月先生:はい。まずは学校で扱うデータについて話したいと思います。学校ではいろいろなデータファイルを扱います。
・「学校全体」で扱うデータファイル
・・・A教育課程に関するもの・学校行事に関するもの・対外的なもの
・・・B子供たちの個人情報に関するもの(指導要録、通知表、調査書など)
・「学級単位」で扱うデータファイル
・・・A学級事務に関するもの・学級通信など
・・・B学級の子供たちの個人情報に関するもの(名簿など)
・「教科単位」で扱うデータファイル
・・・A教科の授業に関するもの
・・・B教科に関する、子供たちの個人情報に関するもの(成績など)
A,Bとそれぞれ仮につけていますが、Bの個人情報に関するものは特にセキュリティを高める必要があるファイルになります。
実は、Aのデータファイルのほとんどが、毎年同じ時期に扱うことが多いものです。そのため、効率よくデータファイルを管理することで、かなりの時短をすることができるのです。
-最近は教育現場でもクラウドの活用が進み始めているのではないかと思います。そうすると余計にデータの管理方法が重要になってきますね。
望月先生:私がしていたファイルの管理ルールは、
- ファイルは、個人の端末に保存せず、ネットワーク上の「共有フォルダ」に入れる。
- 「〇年△月」という名前のフォルダを作り、そこに入れていく。
というものです。
-「ファイルは、個人の端末に保存せず、ネットワーク上の『共有フォルダ』に入れる」とのことですが、USBメモリを利用する先生方も多そうな気がします。USBメモリ自体はとても便利ですが、セキュリティの問題がありそう(落としたり盗まれたり)なので、どうなのかなと感じています。
望月先生:個人の端末に保存しない理由は、
- セキュリティを高めるため(個人端末やUSBメモリを落としたり盗まれたりしてもその中にデータはない)
- 個人端末が故障してもその中にデータがないため、端末だけ交換すればよい。
おっしゃるとおりUSBメモリにデータを「保存」する先生がいますが、これは別な理由からもとても危険です。私も先日、USBメモリが開けなくなりました。USBメモリは、データの持ち運び用として小容量のものを使うくらいですね。
-なるほど、確かにそういう使い方がよいかもしれませんね。
また、毎年同じ時期に扱うファイルがあるので、
- 4月に扱うデータファイルをまとめたフォルダ
- 5月に扱う・・・
としておくと、翌年そのフォルダを参照すればその時期に扱う予定の元データファイルがあることになります。
-たとえば、2019年4月に作成したファイルは「04」「05」もしくは「4月」「5月」などのフォルダ名にして、いつ使うのかがフォルダ名でわかるということですね。ちょっとしたコツですがこのような工夫も大切ですね。
データを整理するメリット
-データを整理すると、どのようなメリットがあるでしょうか。
望月先生:先ほど述べたように、学校で扱うデータには、セキュリティを高くしておく必要がある、「子供たちの個人情報に関するデータファイル」があります。これを守ることは最優先事項です。特定の場所(共有フォルダの指定された領域)に置いておくことで他のファイルとの差別化を図ることができます。
また、今回話した「年月フォルダによる分類」は、ToDoリストにも似て、いつどんなデータファイルを扱う必要があるかすぐにわかります。実は学校で扱うデータは、毎年少しずつ作り変えるものが多いため、前担当の先生がそういった分類をしておくと、そのまま引き継いでいくことも可能です。
端末が壊れるだけでなく、「担当の先生が異動して、データがどこにあるかわからない」といったことは実はよく聞くトラブルなのです。
-担当の先生がよその学校に異動してしまってそういうことが起こるというのは、教育現場でよくありそうですね。そのような場合に備えておくのもリスクマネジメントになりますね。
作業時間の短縮について
-そのほかにちょっとした時短術があれば教えてください。
望月先生:最近、短大の実習でも話したのですが、
- 細かな作業時間の短縮が、トータルでは相当な時短につながる。
のです。
私が、「かな入力」を使っているのも、時短の工夫です。同じ入力速度であれば、ローマ字入力より、かな入力の方が、速く仕事が終わります。また、ショートカットキー(コピー・ペーストなど)を使うことでマウスに手をやって操作する時間を短縮することが可能になります。
そうやって少しずつ作業にかかる時間を短縮していくと、年間そしてキャリア全体では相当な時間差が出てくることでしょう。
-たしかに「ローマ字入力」と「かな入力」では、ひらがな一文字を入力する際に押すキーの数が倍近く違いますから、格段に時短できますね。プロのキーパンチャーは「かな入力」で入力をしているといいますし、日々の入力作業だけでも「かな入力」で行えば1.5~2倍近くの時短になりそうです。
残念ながら私は「ローマ字入力」しかできませんが、「細かな作業時間の短縮は、トータルでは相当な時短につながる」は耳が痛いです。タイピングソフトで練習する価値がありそうです。今回もお話をありがとうございました。
>>「教員のための仕事効率化 ー授業編ー」に続く(2019年8月公開予定)
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望月先生がmicro:bit を活用したプログラミング教育について、当ブログで連載した記事のまとめは以下の記事からご覧いただけます。
▼【連載まとめ】micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育https://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2019/02/microbit.html
※連載まとめは、望月先生の連載(5回分)を片岡が再構成してまとめたものです。