ICTで学びを保証する ~ 『iPad教育活用7つの秘訣―先駆者に聞く教育現場での実践とアプリ選びのコツ』より~
デジタルネイティブや現場の先生のiPad活用法
「iPadを活用した教育現場での取り組み」はとても大きなテーマです。そのため、前回から『iPad教育活用7つの秘訣―先駆者に聞く教育現場での実践とアプリ選びのコツ』を参考に小学校から大学・塾 等、様々な教育現場での教育とICTについて紹介をしています。
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前回「デジタルネイティブと保護者 〜『iPad教育活用7つの秘訣―先駆者に聞く教育現場での実践とアプリ選びのコツ』より〜」では
- 少年の主張全国大会で総理大臣賞を受賞した中学生・山本恭輔くんのICTの活用研究の取り組み
- お母様の山本淳子さんはケータイやパソコンの使い方を息子にどうやって教えたのか
をご紹介しました。
今回は山本くんが紹介していたアプリと同じものを小学校編・秘訣1で登場される片山敏郎 先生もオススメしていた点に注目しました。「ICTで学びを保証する」について考えます。
【プロフィール】
片山敏郎 先生(新潟大学教育学部附属新潟小学校)
教諭。 「みんなのデジタル教科書教育研究会」発起人。「日本デジタル教科書学会」初代会長に就任。(平成24年)
- 新潟市総合教育センター情報教育専門員(平成15〜18)
- 新潟市小学校教育研究協議会 研究推進委員長(平成17〜19)
- 同 部長(平成20〜22)
- ICT教育を考える会 代表(平成21〜22)
等を歴任。
用語について:教育の世界では小学生は「児童」、中・高校生は「生徒」と表現を使い分けていると現場の先生から伺いました。そのため 拙稿でも小学生は「児童」、中・高校生は「生徒」と表現を変えるようにしたいと考えています。筆者は携帯電話を漢字で「携帯」と表記してきましたが、前掲書に倣いケータイと表記します。
文字が読みやすくなるアプリ
片山先生と山本くんが紹介していたアプリには目の病気や視覚障害がある人が文字を読みやすくするために利用できる便利機能があります。筆者が一番魅力を感じたのは「斜め上から本などを読むときに、歪みを補正して読みやすくする「斜め上から補正」の機能があることでした。
カメラアプリや拡大鏡アプリを利用する際は歪みが出ないほうが読みやすいのではないかと筆者は考えています。しかしタブレットやスマートフォン で書籍や書類の文字を撮影する際、手で機器を持っている場合は真上から歪みなく撮影することがなかなかできません。
名刺撮影のアプリや拡大鏡・文字を読みやすくするアプリの場合は歪みを補正する機能・文字を読みやすくする機能は大事な要素ではないでしょうか。このアプリは前掲書の小学校編・秘訣1に登場する片山敏郎 先生もオススメしています。
(お詫び:当記事では具体的なアプリ名は伏せさせていただきます。アプリの名前は前掲書をご参照下さいませ。よろしくお願いいたします。)
小さな文字が見えにくい子
アプリの公式サイトによると「白内障や弱視などの人の読みやすさ向上のために、黒字に白などで表示する「明度反転」モードや、表示色を限定する「モノクローム」モードを備えています」とのこと。
老視や眼の病気(白内障など)で小さい文字を読みにくい、視野がぼやけやすい、視野が暗くなりやすい人に役立つアプリです。
前掲書のアプリ説明は片山先生の欄も山本くんの欄も共通の文面でした。
目の病気などで小さな文字が読みにくい人のための読字補助ツール。小さな文字を色彩処理により「明るく」、「大きく」、「くっきり」とさせて快適に読むのを補助してくれる。明度反転やモノクロームモードもあり。
※前掲書 19ページ、45ページより引用
両者のアプリ説明の「教育現場活用ポイント」を引用します。
【片山先生】
小さな文字が読みにくい弱視の児童が文字を読むための補助ツールとして活用できるアプリ。ファインダーに写った被写体を一時停止して拡大表示できるので、iPadを持ったまま操作する必要がないのが嬉しい。※前掲書 19ページから引用
【山本くん】
簡単な操作で、カメラに写ったものを拡大したり、明るくしたり、文字をくっきりさせたりすることができる。視覚障がいなどで視力が弱い生徒でも、周りの生徒と同じ教科書を使いながら、学習をすることができる。※前掲書 45ページから引用
片山先生も山本くんも視覚障害がある児童・生徒(注:以下、弱視をロービジョンと記す)を意識している様子が伺われます。もちろん老眼や白内障などの目の病気で見えにくい大人が日常生活で使っても役立つアプリです。
教育とアクセシビリティ
教える立場にたてば文字が見えにくい人への配慮を自然に意識するように私見では思います。コンタクトレンズやメガネをかけても見えにくい児童・生徒は教室の中に一定数いるからです。
視力に問題がない児童の場合でも年少・小学校低学年の場合は教科書や教材の文字の大きさが大きめになっている必要性を私見では感じます。視力に問題がない中学年以上の児童・生徒が授業をうける際も学習する際に文字の大きさや色、見え方を自分で読みやすいように調整できたら便利ではないでしょうか?
私の過去の生徒の中にも見えにくさを抱えている人がいました。その方の場合は「双眼鏡」で黒板やスクリーンの文字を読んでいました。双眼鏡は遠くを見る際 に役立つ素晴らしいツールです。
そして前掲アプリは文字が歪まないように補正する機能があります。至近距離、たとえば机の上の本を読む時はアプリが オススメかもしれません。
おわりに
片山敏郎 先生は前掲書14ページから15ページにかけて
- 初代iPadを3週間レンタル。挑戦したかったことは、自分にあった情報を選ばせる授業。
- 操作の指導はなくても子どもは使える!
という内容をお話されています。
「iPadを3週間レンタルした片山学級の子どもたちはiPadをさわってみる。→わからなければ自分で友だちに聞く」という流れでiPadの操作の問題を子ども同士で解決しあっているようです。デジタル機器を使いこなす児童・生徒が特別な子どもではなくなってきているのが印象的です。自然と使えるようになっているのが当たり前になってきている様子が私見では感じられました。
PCインストラクターとしての私的な体験ですが、子どもたちより保護者のほうがウェブ、パソコン、タブレットに疎い事例が多くなって来ました。
デジ タルネイティブではない保護者が子どもたちにネットやケータイの使い方を教えればよいのか。デジタル機器を活用した自宅での学習はどうしたらよいのか。前掲書の教育現場の先生がたの取り組みや山本くん親子、主婦同士の座談会から学べることがたくさんあるのではないかと考えています。
次回以降は先生方による「教育現場での工夫」に注目して、教育現場におけるiPad活用事例をご紹介する予定です。
>>「"教育現場"でのiPad活用事例(小学校~大学) 〜『iPad教育活用7つの秘訣』より〜」に続く
参考文献
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