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あなたの市場価値は大丈夫? 次のステージに立つための3つのステップ

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私たちの仕事は、社会に需要があり、それに応える知識やスキルがあるからこそ成り立っています。給与をいただき、生活ができるのも、この基本的な原則の上にあります。

「そんな当たり前のことを」と思われるかもしれません。しかし、もし「いま」の需要がなくなったとき、あなたは次の新しい需要に応えられる知識やスキルを持っているでしょうか。この問いに自信を持って「はい」と答えられなければ、私たちのキャリアの選択肢は、気づかないうちに限られたものになってしまいます。

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加速する「今の需要」の終わり

かつてITインフラの世界は、自社でサーバーを管理するオンプレミス環境が主流でした。開発手法も、計画通りに進めるウォーターフォール開発が基本で、インフラの構築や運用管理には多くの手作業が必要とされていました。

しかし、クラウドの登場がその常識を大きく変えました。当初はAzure StackやGoogle Anthosのようなハイブリッドクラウドサービスが注目されましたが、2025年の今、ビジネスの変化に素早く対応するため、アジャイル開発DevOpsといった手法が不可欠となり、それを支えるクラウドネイティブなアーキテクチャの採用が常識となっています。

現在では、サーバーレスやエッジコンピューティングがさらに進化し、インフラの存在をほとんど意識することなく、コードを書くだけでアプリケーションを世界中に展開できるようになりました。TerraformのようなInfrastructure as Code (IaC)ツールでインフラを自動管理することも常識です。

このように、ウォーターフォールを前提としたオンプレミスシステムの構築や手作業での運用といった「レガシーIT」の需要は減少し、クラウドネイティブな環境を使いこなす「モダンIT」のスキルへと需要がシフトしているのです。

アプリケーション開発の世界も例外ではありません。「DX」という言葉はすっかり定着しましたが、今やその中心にはAIがあります。」

特に生成AIの登場は、開発の風景を根底から変えつつあります。GitHub CopilotのようなAIコーディング支援ツールは、多くの開発者にとって不可欠な「相棒」となり、生産性を劇的に向上させています。

もはや、単に便利なツールとしてAIを使うだけでは不十分です。顧客が求める新しい価値の多くは、AIをサービスの中核に組み込むことで生まれています。これからの開発者には、LLM(大規模言語モデル)の特性を理解し、それを活用して新しいアプリケーションを創造するスキルが求められます。

これまで工数を稼ぐ中心だったインフラの構築やミドルウェアの設定、あるいは定型的なコーディング作業は、クラウドサービスとAIに代替されつつあります。この現実から目をそらしていると、自身の市場価値はあっという間に失われてしまいます。だからこそ、私たちは付加価値を生み出す『次の新しい需要』に真剣に向き合わなければならないのです。

今のままでは、未来は厳しい

もちろん、既存のシステムがすぐになくなるわけではありません。当面は、これらの保守や機能拡張の仕事がなくなることはないでしょう。

しかし、その仕事の単価が上がることは期待できるでしょうか。むしろ、「少しでも安く」というプレッシャーの中で、厳しい状況に置かれる可能性は高まります。新しいスキルを身につける機会も得られず、給与も上がらない...。そんな環境に、優秀な人材が留まり続けることは難しいでしょう。

これは、会社だけの問題ではありません。私たち個人も、「次の需要に応えられるスキル」がなければ、より良い条件の職場へ移ることはできません。

では、どうすればいいのでしょうか。私は、次の3つのステップが重要だと考えています。

ステップ1:学びたいと思うこと

最初の、そして最も重要なステップは「学びたい」と心から思うことです。

  • 外の世界に目を向ける: 職場と自宅の往復だけでは、世の中の変化に鈍感になってしまいます。社外の勉強会に参加したり、異なる分野の人と話したりすることで、自分の「常識」が世の中のすべてではないことに気づけます。

  • 謙虚なプライドを持つ: これまでの経験で得たプライドは大切です。しかし、それが新しい知識を拒絶する壁になってはいけません。「自分の知らない世界がある」という謙虚さが、AIのような急速に進化する技術を学ぶ意欲につながります。

まずは、思考停止から抜け出すこと。この一歩がなければ、何も始まりません。

ステップ2:行動を起こすこと

次に、具体的な行動を始めることです。「何を学ぶか決めてから」と考えるとなかなか動けません。まずは、いつもと違う行動を始めてみましょう。

  • 朝の1時間を自分の勉強時間にあてる

  • オンラインの技術カンファレンスに申し込んでみる

  • 気になる技術のオンラインコースを週末に少しだけ進めてみる

大切なのは、小さな一歩でもいいので「動き始める」ことです。行動が習慣になれば、何を学ぶべきかは自ずと見えてきます。

ステップ3:アウトプットすること

最後のステップは、学んだことを外に出す「アウトプット」です。

  • 自分の言葉でまとめる: 本を読んだり動画を見たりしただけでは、知識は身につきません。学んだことをブログに書いたり、誰かに説明したり、ノートに自分の言葉でまとめ直したりすることで、知識が整理され、本当の「理解」に変わります。

  • 文章で表現する: 特に、箇条書きではなく「文章」にすることをお勧めします。文章にするには、物事の論理的なつながりや因果関係を考えなければならず、理解の深さが格段に変わるからです。

  • 何かを作ってみる: 特にAIのような技術は、実際に手を動かして何か小さなものを作ってみることが、何よりの学習になります。

アウトプットを意識することで、学びの質は飛躍的に高まります。

変化の波を乗りこなすために

「今の需要が本当になくなってきた」と実感したときには、もう世の中はすっかり変わってしまっています。そうなってから慌てて動き出しても、有利な選択肢はほとんど残されていないでしょう。

変化のスピードがこれまでにないほど速い現代において、「早く始めること」は、自分の価値を高めるための最も有効な戦略です。

「学びたいと思うこと」「行動を起こすこと」「アウトプットすること」

この3つのステップを、ぜひ今日から始めてみてはいかがでしょうか。AI時代という大きな変化の波を、脅威ではなくチャンスとして捉え、乗りこなしていくために。

【募集開始】次期・ITソリューション塾・第50期

次期・ITソリューション塾・第50期(2025年10月8日[水]開講)の募集を始めました。

2008年に開講したITソリューション塾は、18年目を迎えました。その間、4000名を超える皆さんがこの塾で学び、学んだことを活かして、いまや第一線で活躍されています。

次期は、50期の節目でもあり、内容を大幅に見直し、皆さんのビジネスやキャリアを見通すための確かな材料を提供したいと思っています。

次のような皆さんには、お役に立つはずです。
・SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
・ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
・デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
・IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
・デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん

詳しくはこちらをご覧下さい。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。

期間:2025年10月8日(水)~最終回12月17日(水) 全10回+特別補講
時間:毎週 水曜日18:30~20:30の2時間
方法:オンライン(Zoom)
費用:90,000円(税込み 99,000円)
内容:

  • デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
  • ITの前提となるクラウド・ネイティブ
  • ビジネス基盤となったIoT
  • 既存の常識の書き換え前提を再定義するAI
  • コンピューティングの常識を転換する量子コンピュータ
  • 変化に俊敏に対処するための開発と運用
  • 【特別講師】クラウド/DevOpsの実践
  • 【特別講師】アジャイルの実践とアジャイルワーク
  • 【特別講師】経営のためのセキュリティの基礎と本質
  • 総括・これからのITビジネス戦略
  • 【特別講師】特別補講 (選人中)

*「すぐに参加を確定できないが、参加の意向はある」という方は、まずはメールでご一報ください。事前に参加枠を確保します。決定致しましたらお知らせください。

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神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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