DX案件の始め方①~ケンブリッジ流のDX7ヶ条~
デジタルトランスフォーメーション(DX)というキーワードに注目が集まってから、随分経つ。
僕が所属するケンブリッジは、企業変革をお手伝いするのが本業なので、DX案件の相談もたくさんいただくし、実際に支援もしている。DXに関するセミナーも絶賛運営中!(2020年9~12月)。こちらからどうぞ。
多くの方々がDX案件と格闘しているのを実際に見てきた・・・。いや、本当に大変ですよね・・・。少しでも、取り組みのヒントになればと思い、僕らがDX案件をお手伝いする時に気にしていることを整理してみたので、ここで紹介してみようと思う。結構分量があるので、5回シリーズでの展開だ。
第1回:DXプロジェクト3段階理論とDX7ヶ条
中身に入る前に、少しだけ前提を整理しておきたい。そもそもDXとは何なのか?
DXとはなにか?
Wikipediaを見ると定義が実に幅広いことがわかる。
デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。デジタルシフトも同様の意味である。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる 。
ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味合いで用いられる。
彼は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義し、下記の特徴を提示している。デジタルトランスフォーメーションにより、情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。
ガートナー社によれば、企業内のIT利用は三段階ある。
・業務プロセスの変革
・ビジネスと企業、人を結び付けて統合する
・人とモノと企業もしくはビジネスの結び付きが相互作用をもたらす
ガートナーはこの第3段階の状態をデジタルビジネスと呼び、「仮想世界と物理的世界が融合され、モノのインターネット(IoT)を通じてプロセスや業界の動きを変革する新しいビジネスデザイン」(2014 年) と定義している。
また、このデジタルビジネスへの改革プロセスを「デジタルビジネストランスフォーメーション」と定義している。
幅広すぎ・・・。
「ビジネス構造の抜本的な改革」をDXと呼ぶこともあれば、「日々のお仕事がITによって少し便利になる」というものもDXと呼べそうだ。人によっては、後者はDXではない!と主張する人もいるが、ここでは後者のようなものもDXの対象に含めて語っていきたい。
DX案件は「ビジョン」が肝
どの企業も「DX的な何かをやらなきゃ!」という気持ちはある。でも定義が曖昧だから、何をやれば良いのかよくわからない...。多くの企業がこんな状態だ。実際、あちこちで苦労している話を聞く。例えばこんな状態である。
いろんな状況があるが、僕は勝手に「とりあえず症候群」、「それっぽいコンセプト症候群」、「ソリューションください症候群」とカテゴライズしている。
「とりあえず症候群」はどう見てもダメそうですよね。一方、「それっぽいコンセプト症候群」や「ソリューションください症候群」は大丈夫そうにも見えるけど、実はこれも結構な勢いでダメだと思うのです。
なぜか?
どの症候群にも共通して言えるのは、コンセプトやソリューションの先にある「具体的なビジョン」がない、ということ。だからダメなのだと思う。敢えて言い切ると、具体的なビジョンがないDXの取り組みは上手くいかない。これは、従来型プロジェクトと、DXプロジェクトに大きな違いがあるからなのだ。
【従来プロジェクトは「問題解決型」の取り組み】
従来の変革プロジェクトは、「困っていること」が明確だった。困っているので、将来のビジョンは明確だった。困らない状態になればいい。もとの状態に戻ればいいのだから。
例えるなら、対処療法の外科手術。骨折して困ってます。元のように歩けるようになりたい。なるほど、じゃあ、すぐに手術だ!という感じ。
イメージは外科手術
【DXプロジェクトは、「ビジョン駆動型」の取り組み】
一方、DX案件はというと...。実は、「今この瞬間は困ってない」ことがほとんどだ。でも将来に備えて、何かしらの変化を起こしたい。という状態だから、将来のビジョンが不明確になりがちなのである。
例えるなら、体質改善や体幹トレーニング。まぁ普通に健康なんだけど、将来に備えて体質改善や食生活の改善をした方がいい気がするんだよね。うーん。じゃあとりあえず断食でもしてみる...?断食か...修行僧になりたいわけじゃないんだよな...。という感じ。
イメージは体質改善
ここが本質的な違いであり、DXを難しくさせている根幹ではないかと思う。
DX案件を成功させる3段階の方法論
だから、DX案件においては「具体的な未来を描く」ことがとてもとても大事になる。
・何を目指して体質改善をしているのか?
・体質改善の先でどんな生活を送りたいのか?
これがあやふやだと、道に迷う。次に、描いた将来像をなんとかして「実現にこぎつけ」ないといけない。そして、1度やったらおしまいの外科手術と違って、体質改善はずっと「持続させて」いかなければならないのだ。継続しないとまた元に戻ってしまう。
つまりDX案件で大事なのは、
- A)未来を描く
- B)実現にこぎつける
- C)持続させ発展させる
この3段階を上手くデザインすることなのだと思う。従来のプロジェクトだと、現状調査や課題分析、施策の立案などが大事になったが、DXは少しツボが違う気がしている。
DX案件の3段階をデザインするためのDX7ヶ条
さて、この3段階をうまくデザインするためのコツを、7つに整理してみた。
- A)未来を描く
- ①具体的な絵姿を描く
- ②Newタイプに頼る/oldは黙っとけ
- ③ソリューションを考えるのは最初と最後に
- B)実現にこぎつける
- ④oldタイプに反対されない状態を
- ⑤少人数で一気にやる
- ⑥「投資対効果」で意思決定させない
- C)持続させ発展させる
- ⑦デジタル化が自然と加速する流れを作る
これをやれば「何でもうまくいく」というわけではないが、多くのDX案件に共通していえることなのではないかと思う。次回からは、この中身をさっと紹介していきたい。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに所属するコンサルタント榊巻(さかまき)がお送りするブロク。
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