[書評]日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ
よく床屋談義においては、日本の政治家や官僚が悪企みをして云々、、といった陰謀論が好まれる傾向にあるが、憎むべきは人ではなくてその構造だろう。現状維持バイアスのかかる官僚機構、ポピュリズムが横行する政治、これらの相矛盾する権力構造が制度疲労を起こし、何の生産性もない調整業務に忙殺されているというのが根本原因なのである。
そして、三権のうちのもう1つ、司法というほとんど忘れられている権力と、第四の権力と言われるマスコミについても、より統治構造という観点から考察を深めていかなければならない。
自民党一党支配の55年体制下においては、官僚機構と自民党内の派閥という構造によって、国会は事実上、与党と野党がその役割を演じる劇場となっていました。自民党内でまとめられた法案を党議拘束によって国会に提出することで、高級官僚と族議員が互恵関係を形成して審議会などに御用学者を招きつつ為政者に都合のよい政策が実現していました。一方で野党も、官僚機構の与党に対する発言権強化の手段として使われることでその存在感を発揮していました。
日本の統治構造を強化するために大統領制を導入すべきだ、という意見も散見されます。しかし、議院内閣制における総理大臣は三権のうちの2つを掌握している存在であり、むしろ多数派を掌握している限りは、議会と並立する大統領よりも権限が強まっているとも言えます。
現状の民主党においても自民党においても、政策立案のための情報収集といったシンクタンク機能はすでに党内に持っていません。これらの機能を官僚機構に依存し、その官僚機構もコンプライアンスが肥大化して身動きが取れなくなっている現状では、政治変革を既存の統治構造に期待する方が難しいでしょう。むしろ、課題を認識している現場に近い実務者がより情報提供を行ないつつ、これらの統治構造に関わりながら政策立案に関与していくべきです。
この先数年で、日本の統治構造はドラスティックに変わることでしょう。国民不在の政局からいかに参加型民主主義を形成するか、他国に先駆けて新しい統治構造を創っていくことが日本社会に求められています。
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