ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体
マイルドヤンキー…不良・暴走族(70-80年代)~ヤンキー・チーマー(90-00年代)に引き続き登場した、第三世代の若者たちの生態を綴った本。
地元志向、保守的な消費性向、等身大な見栄など、あまりメディア等には登場しない低成長時代における新・保守層の実態を理解するには面白い。さらに、著者は広告代理店の人なので、それをいかに企業のビジネスと結びつけるかについても言及しており、ビジネス書としても参考になる。
地元志向、と言ってもマイルドヤンキーたちにとっての地元とは、半径5km以内の中学校区程度のエリアを指す。東京都心に電車で数十分で出られるようなエリアに住んでいても、めったに電車には乗ろうとせずにまったりといつメン(いつものメンバー)と宅飲みや近所のモールなどで遊ぶのだ。
そんな彼らにとって私的なゾーンの延長であるクルマは必需品であるが、かといって昔のヤンキーのようにスポーツカーを改造したりしない。むしろ、仲間たちがたくさん乗れるように、ワンボックスカーをホスピタリティ溢れる形で気持よくしていくことに心血を注ぐ。
TwitterやLINEといったソーシャルメディアの使い方も、広く新しいことを知り、様々な人たちと出会い交流するためといった好奇心ではなく、仲間内で日常的な内輪ネタをやり取りする掲示板のようなものとして認識しており、ITリテラシーが低いために身内向けのネタが時々流出して炎上してしまう“バカッター”に繋がっている。
このような新・保守層とも言える若者たちは、東京都下から地方の中核都市に至るまで、広く存在している。もはや彼らにとっては、東京で次から次へと新しいコンセプトを生み出し、クリエイティブに情報発信していくといった仕事はまったく魅力を感じておらず、むしろ地元で気心の知れた家族や仲間たちと日常の思い出を重ねていくことに関心を見出している。
恐らく、今後の日本の消費を引っ張っていくであろうこの層に対して、いかに有効なアプローチを仕掛けていくのか。大量生産大量消費のモノカルチャーの先に位置づけられる企業間競争は、すでに始まっている。