新たな情報通信技術戦略:教育分野の取り組み 工程表
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が6月22日公表した「新たな情報通信技術戦略 工程表(案)」の中で、注目されるのは「教育分野」の工程表です。
教育分野の工程表を見ると、大きく分けると、
- 学校の情報化の教育方針
- デジタル教科書・教材の普及促進、情報端末・デジタル機器の整備充実
- 学校・教員へのサポート体制の充実等
- 情報活用能力の向上
- デジタルデバイドの是正・リテラシー教育の充実等
の5つに分かれており、デジタルデバイド以外は、『学校教育の情報化戦略的かつ一体的に推進する「教育の情報化ビジョン(仮称)」の策定』が横断的な位置づけとなるようです。
「教育の情報化ビジョン(仮称)」の策定にあたっては、主に文部科学省が主催する「学校教育の情報化に関する懇談会」で懇談会資料は第6回の資料から、論点を確認することができます。
論点(案)
(1)21世紀にふさわしい学校や学びはどのようなものか。その際、教員に期待されるものは何か。このような学校や学びを実現する上で、学校教育の情報化はどのような役割を果たしうるか。
(2)わかりやすい授業の実現や児童生徒の情報活用能力の向上等の観点から、また、子どもたちの発達段階、学校種、教科等を踏まえ、デジタル教科書・教材、情報端末・デジタル機器・LAN等には、どのような機能が求められるか。仮にこれらを導入・普及する場合、どのような課題があり、どのように解決すべきか。その際、国に求められる役割は何か。
(3)教職員の負担軽減、学校経営の改善等の観点を踏まえ、求められる校務支援システムはどのような機能を有するべきか。また、校務支援システムの充実を図るためには、国と地方の役割分担のなかで、国に求められる役割は何か。
(4)教員のICT活用指導力向上、教員へのサポート体制の充実のために、国に求められる役割は何か。
(5)その他
また、総務省が主催する「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」にて検討が進められています。この検討内容も工程表に少なからず反映されるのではないかと推測されます。総務省の研究会(第1回)では「フューチャースクール推進事業の実施スケジュールについて(案)」等を確認することができます。実施スケジュール(案)は以下のとおりとなります。
「教育分野の取り組み 工程表」の中で注目しているのが、
- デジタル教科書(教科書準拠型デジタル教材)・教材やデジタル機器を活用した授業の推進
- デジタル教科書・教材の教育効果、書籍一般の電子書籍化の動向等を踏まえつつ、教科書・教材の電子書籍化、マルチメディア化について制度改正も含め検討・推進
です。
総務省が5月に好評した「原口ビジョンⅡ 」においても教育分野は重要視されており、「ICTによる協働型教育改革の実現」の中で以下のとおり達成目標が示されています。
2020年までに、フューチャースクールの全国展開を完了
- 2010年度より、「フューチャースクール推進事業」を着実に推進
- タブレットPC、デジタル教材(電子教科書)等を活用し、児童・生徒が互いに 学び合い、教え合う「協働教育」についてガイドライン化(2010~12年度)し、これに基づき全国展開を計画的に推進
- 2010年度より「教育クラウド」の構築を進め、2012年度には教育現場に 加えて校務への活用を開始し、2015年度までには学校運営の状況についての評価を可能とする体制を整備
昨年12月に公表された「原口ビジョン」に おけるフューチャースクールの推進では、「デジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」という内容が 盛り込まれていましたが、今回はデジタル教科書の具体的な目標設定については、掲載されていません。今回は、「デジタル教科書」は使わず、「デジタル教材 (電子教科書)」という表現にしています。参考ですが、デジタル教科書については、「「デジタ ル教科書」に関する取組みについて」でまとめています。
フューチャースクールでは、現時点では明確な定義はしておらず、2010年度か らの推進事業を推進している中において、2010年度までに「協働教育」のガイドラインを策定し、ガイドラインに基づき、全国展開を計画的に実施していく としています。
原口ビジョンⅡの方向性がどこまで、工程表に反映されているかは定かではありませんが、工程表を見る限り、やはり文部科学省が主となる項目が多く、現在議論が進められている「学校教育の情報化に関する懇談会」の報告書が大きな位置づけになるのではないかと考えられます。
私自身、地元の小学校のPTA活動に副会長として活動に参加しており、学校の関係者とICTと教育について、できるだけ議論をすることを心がけています。政府で検討を進めている教育分野におけるICT活用方針と学校の現場レベルの考え方を両方の視点を大切にしながら、教育分野をいろいろと考え、行動していければと考えています。