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2020年のキーワードは「低レイテンシ」だ

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2020年のITトレンドの予測では、「いよいよAIの年」、「IoTでしょ」、「5Gですよ」、「いやいや、エッジコンピューティングじゃないですか?」など、いろいろな言葉が飛び交っていますが、それらに共通するキーワードとして、「レイテンシ」があります。

昨年はIBM、Microsoft、Googleなどがハイブリッド・マルチクラウドを謳って様々な製品やサービスをリリースしました。そのまとめがこちらですが、

2019年、AWS以外が「マルチクラウド」をあおった理由――相次いだ買収劇と勢力図の変化を解説しよう

その中で、Amazonだけがマルチクラウドでは無くハイブリッドを謳い、それは顧客が「低レイテンシ」を求めているからだ、と記事では解説しています。もちろん記事にもあるように、Amazonは一人勝ち状態であり、ことさらマルチクラウドを目指すインセンティブは無い、という見方もできます。しかし、Amazonは低レイテンシの重要性を見抜いているのではないでしょうか。

usagitokame.png何故レイテンシが重要なのか

クラウドが普及し始めた頃、基幹業務はクラウドへは移行できないと言われていました。もちろんセキュリティ面の不安が大きかったせいですが、理由の一つにレイテンシ(遅延)もあったと考えられます。

ネットワーク越しに遠隔地のサーバーを使うクラウドコンピューティングでは、通信遅延は避けて通れません。間のスイッチでも遅延が発生しますし(高価なものを使うことである程度は回避できますが)、物理的な距離に応じた電気信号の伝達時間はどうしても短縮できません。しかし、レイテンシはシステムのパフォーマンスに悪影響を与えます。データセンター内の処理ではオンプレミスに勝っても、全体のスループットでは負けてしまいます。

見るべきポイントはレイテンシー!? クラウドのPoCを考える

ここで問題なのは、特に大量の読み書きを必要とする基幹業務のデータベーストランザクションには致命的な影響が出るということです。

AWSのデータセンターがまだアジアに無かった頃に、米国西海岸のデータセンターを使ってPoCを行った方からお話を聞いたことがあるのですが、データベース処理は遅くて使い物にならなかったそうです。東京から米国西海岸までの距離は8,000km以上あり、光ですら0.026秒かかります。往復で0.05秒。単純に考えても1秒間に20回しかやり取りできません。(実際にはスイッチでの遅延やハンドシェイクなどの処理も入りますから、もっと少なくなるでしょう)これでは、基幹業務に求められるデータベーストランザクションを行うには遅すぎるのです。

ありのまま話すぜ! Oracle CloudのOracle Databaseを使うメリット/デメリット《後編》

こちらのサイトでは、

用語集|レイテンシ

首都圏と東北南部のデータセンターの間ではレイテンシは3.5msとなっています。だいぶ良いですが、それでも処理内容や規模によっては使えないかも知れません。

Oracleは既存ユーザーをクラウドに移行させようとしていますが、レイテンシの問題を緩和するために世界各地にデータセンターを持たなければならないと考えられ、大きな負担となっているのではないでしょうか。そのためかどうかはわかりませんが、Oracleクラウドをオンプレミスへ、というモデルも用意しているようです。

Oracle Cloud at Custome

Amazonの発想・取り組みと似ていますね。

スパコンも、5Gも、エッジコンピューティングも

もともと超高速なCPUを持つスパコンなどでは、CPU処理速度が速すぎてデータの供給が追いつかないという問題がありましたが、AIやビッグデータ処理などでデータが爆発的に増えたことで、この問題はさらに顕著になっています。最近のスパコンではデータバスではなく、インターコネクトという接続方式になっており、これもある意味レイテンシ対策ということができます。

また、5Gの目玉機能は高速通信、同時接続数、そして低レイテンシです。スマホを使う上では、今以上に通信速度を上げる必要性は少ないと思われますが、IoT機器向けの同時接続数とリアルタイム制御向けの低レイテンシは重要です。

そして最近話題の「エッジコンピューティング」も、デバイスとサーバーの間の通信に時間がかかることを嫌ってローカルに処理能力を持たせようとする、低レイテンシ化の取り組みと見ることもできます。Ciscoも低レイテンシへの取り組みを進めています。

シスコ、超低レイテンシーネットワーク製品のExablazeを買収へ

ネット上の動画配信でも、レイテンシは重要になりつつあります。ストリーミング配信は構造上実況放送よりも10-30秒遅れるのがあたりまえですが、これではスポーツ観戦などでテレビとの時間差が生まれてしまいます。また、今後適宜視点を変えて見るなどの機能を拡張する際にも問題になります。Googleが開発したWebRTCという技術を使ったソリューションなども出てきています。

あとはやはりゲームですね。昨年Googleが提供を開始したクラウドゲームサービス「Stadia」は、現時点ではやはりレイテンシに問題が残っているようです。

グーグルのクラウドゲーム「Stadia」には、やはりストリーミングならではの"弱点"がある

こうしてみると、まだまだインターネットには解決すべき問題が残されていますね。5Gが低レイテンシと言っても、その後ろで動いているインターネットのレイテンシが下がらなければ意味はありません。全体のスループットを如何に下げていくかが今後の課題となりそうです。

 

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