AIで息を吹き返すスマートグラス
先日のGoogle I/Oで検索へのAI導入と共に私が注目したのが、Googleグラスの復活です。Googleは2012年に「Google Glass」を発表しましたが、高価だったことや使い勝手の問題(当時は音声認識が未発達だった)、そしてメガネにカメラが付けられていることからプライバシーへの懸念が生じたりするなどして思うように普及せず、2015年に販売が中止されていました。
それが、10年ぶりに復活したのです。正確にはAndroid XRは昨年発表済みでしたが、今回のI/OではGeminiとの連携が発表され、プロトタイプもデモされました。
そして、復活の要因はやはりAIだったようです。
Geminiと連携することでユーザーと同じ視点から状況を理解し、ハンズフリーでサポートする機能を提供する。
今になってスマートグラスの新規発表が相次いでいるのは、AIの進化と無縁では無いでしょう。こんな記事もありました。
確かに、キーボードやマウスを持たないスマートグラスへの入力手段としては音声やジェスチャくらいしか思いつきませんが、それらをAIがアシストしてくれれば、使い勝手は飛躍的に向上するでしょう。メガネ型デバイスが考案されたのはかなり昔に遡るとされますが、デバイス技術、バッテリー技術と相まって、AIの進化がやっと具マートグラス実現のレベルに揃ってきたということですね。
今年に入ってMetaも新しいスマートグラスの投入を発表するなど、スマートグラス界隈は新製品ラッシュになっています。もちろんディスプレイ技術が発展したこともあるでしょうが、AIによるアシストが決め手になっていることは間違い無いでしょう。
鳴り物入りでApple Vision Proを発表し、その後おとなしくなってしまったAppleも、スマートグラスの開発を行っているようです。私も昨年7月、国内発売時に試してみましたが、画面はクリスピーで解像度は文句ありません。しかし、ジェスチャによる操作はいまひとつしっくりきませんでした。慣れれば違うのかも知れませんが、どうしても限界はあります。そのときに、音声入力がもっと進化すれば、と思ったのを覚えています。今は音声認識が当時とは比べものにならないくらい進化していますし、AIについては言うにおよばずですね。
各社が狙う「スマホの次」
各社がスマートグラスに注力しているのは、単に技術的に実現が視野に入ってきたからだけではなく、「スマホの次」を狙っているからです。先週のコラムでもお伝えしたGoogleと司法省の訴訟においてAppleの幹部はこんな証言もしています。
PCをポケットに押し込め、その操作をキーボードでもなくマウスでもなく「指」で実現したiPhoneは、文字通り世界を変えました。そのAppleだからこそ、指による入力の限界を感じているのかも知れません。Vision Proを「Mac、iPhoneに続く第3の革命」と呼んだのも、その危機感があったからこそなのでしょう。しかし残念ながら昨年6月時点(米国での発売はさらにその1年前)のAIでは、それを実現することはできなかったのです。しかし、今なら話は別です。生成AIはまさに日進月歩、いや秒針分歩といえるペースで進化を続けており、冒頭に紹介したようにAIエージェントはそのAIの活用の幅をさまざまな分野に広げようとしています。