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AIは儲かるビジネスなのか?

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米OpenAIは6月9日、年間換算売上高(ARR)が100億ドルに達したと発表しました。このニュースは世界中のメディアで取り上げられ、注目を集めました。しかしこのニュースが注目されること自体が、周囲が「AIは何時になったら儲かるビジネスになるのか」を心配していたことの裏返しだったのではないでしょうか。

OpenAI、サブスクの年換算売上高1.4兆円 ChatGPT成長で

ChatGPTのようなビジネスモデルにおいては、まずAIモデルのトレーニングに莫大なコストがかかる上、サービスの提供にも継続的にリソースが必要で、当然それに応じたコストがかかります。今現在、このコストと収益が黒字、あるいはバランスしているAI関連企業は無いと思われ、何時になったら事業が黒字化するのか、そもそも黒字化できるのか、ということが投資家にとっての最大の関心事であり、経営者としてはその疑問に答えなければなりません。

graph_up.pngARRについてChatGPTに聞いてみると、

年間換算売上高(ARR: Annual Recurring Revenue)**は、主にサブスクリプション型ビジネスやサービス業において使用される指標です。特に、クラウドサービスやSaaS(Software as a Service)、定期購読サービスを提供する企業において重要な指標として用いられます。ARRは、契約が定期的に更新される売上の予測値を示すもので、年間でどれくらいの安定的な収益が見込まれるかを計るのに有用です。

と教えてくれました。(ほんと便利)ARRが一般的な指標かどうかについては

ARRは「毎年決まって繰り返し得られる収益」のみを示し、初期費用や一時的な売上は含まれません。このため、通常の製造業や小売業など、単発取引が中心のビジネスではあまり使われず、決算短信や有価証券報告書などで「売上高」としてARRが記載されることは一般的ではありません。

ということです。サブスク以外の業界では使われない指標なのですね。

日経の記事にも「大型契約による一過性の収益計上は除いたという。」とありますので、この説明は当たっていそうです。(AIの答えを頭から信じないのが大事)ロイターの記事にも、「100億ドルのARRには、オープンAIに出資しているマイクロソフト(MSFT.O)からのライセンス収入や大口のディールによる一時的な収入は含まれていない。」と、はっきり書かれています。

やっと増え始めた有料ユーザー

OpenAIは早くから有償プランも提供しており、昨年には月額200ドルという高額プランも設定しました。日経の記事によるとARRは「2024年末からおよそ半年で8割増えた」ということですので、ここへきて一気に有料プランの利用者が増え、ARRが100億ドルというキリの良い数字になったことで発表した、ということなのでしょう。

しかし、「チャットGPTを使う人は世界で毎週5億人に達し、月額20ドルの有料プラン「プラス」の利用者は2000万人に上る」と書いており、比較は難しいですが、無料で使っているユーザーも依然としてかなり多そうなことが伺えます。

有料プランからの収入は48億ドル(2,000万人 x $20 x 12ヶ月)ですから、100億ドルの半分は有償プランの利用者からの収益ですね。残りの半分は企業向けランセンスということですが、こちらのほうはユーザー数300万人ということだけで、単価等は出ていません。

ただ、ARR100億ドルでも、ビジネスとしては全然足りていません。「損益が黒字に転換するのは売上高が18兆円規模になる29年ごろと見込まれている」ということですから、まだまだ道は遠いです。

上記のロイターの記事には、OpenAIの競合であるAnthropicのARRは30億ドルという記述も見られますので、業界全体としても心許ない状況です。ビジネスが安定して軌道に乗るまで、投資家の支援が続くのか(続けられるのか)、予断は許せない状況です。

 

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