エージェント時代の新たな枠組みとなるA2A
昨年の後半くらいから注目されるようになったAIエージェントは、今年に入って生成AI活用の中核として位置づけられるようになってきました。AIエージェントは「AIを駆使してユーザーに代わって目標達成を自律的に行うソフトウェアシステム」などと定義され、この「自律的」というのがキーワードになります。ChatGPTのようなこれまでの生成AIは「何か聞かれたら答える」という受動的なものでしたが、AIエージェントは「目的を与えると、何をすべきかを自ら考え・判断し、人手を介さずに処理を行う」ことができます。放っておいても勝手にAIが人間のサポートをしてくれる、というわけですね。「おせっかいなAI」という見方もできるのかもしれません。
Microsoftは昨年11月のIgniteで「新しいコンピューティングモデル」として「エージェンティックワールド(Agentic World)」を打ち出し、その様を「私たちの代わりに行動できるAIエージェントのタペストリー」と表現しました。タペストリーは壁に掛ける「織物」のことで、たくさんのAIエージェントが複雑に絡み合いながら人間をサポートするというイメージなのでしょう。多分これは「ファブリック」でも良かったのでしょうが、ファブリックはすでにITの色々な場面で使われていますから、重複を避けたのかもしれません。
ところで、複数のエージェントが互いに連携して動くためには、そのための技術的基盤や手順が必要です。MicrosoftのIgniteが行われた翌週に、Anthropic(生成AIモデル「Claude」の開発元)がAIエージェントと外部リソースの連携を標準化する「MCP(Model Context Protocol)」を発表しました。MCPにより、AIエージェントは外部との連携のためのAPIを個別に設定しなくても良くなるため、開発や連携が容易になります。MCPは各社の賛同を得、瞬く間にデファクトスタンダードとなりました。
しかし、MCPはAIエージェントと外部リソース(データベースやLLM)とのインターフェースを標準化するもので、AIエージェント同士の連携機能は持っていませんでした。そのギャップを埋めたのが、GoogleのA2A(Agento2Agent Protocol)だったわけです。A2Aはオープンスタンダードで、発表当初から50社以上の賛同を得ていましたが、賛同企業の中にMicrosoftやOpenAIの名前が見えず、その動向に注目していました。MicrosoftもOpenAIも、MCPのサポートは発表しています。
そのMicrosoftが、ついに先日A2Aのサポートを発表したのです。これで、A2Aがマルチエージェント時代の中核的な技術基盤となる可能性が非常に高まったと言って良いでしょう。さまざまな生成AIが、ベンダーの垣根を越えて人間をサポートする時代の幕開けです。
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