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DXは不要になったのでは無く、ますます重要になっている

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日経ビジネスの「極限暴論」で、木村岳史さんがこんな記事を書いていました。

DXブームがついに終了 生成AI活用に逃げ込む日本企業の末路

木村さんは「日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに赤信号がともった」といい、続けて

私が危惧するのは、DXブームが終わる反動で、DXの取り組みが日本企業の経営者によってないがしろにされることだ。

と書いています。極端と思われる言説が時に波紋を広げる木村さんの記事ですが、これについては私も同意見です。

computer_note_bad.png木村さんが心配しているのは、AIという新しい強力なキーワードが出てきたことで、現場や経営層が痛みを伴うDXよりも手軽に導入できるAIに流れてしまい、本来の目的であった業務改革が疎かになることでしょう。そして、その心配は今のところ当たっているように思います。

私も1年以上前のブログで、こんなことを書きました。

昨年の生成AI騒ぎのせいで、「AIがすっかりDXのお株を奪ってしまった」「DXは影が薄くなった」と思っていましたが、それは間違った認識で、実はこの「どうなるかわからないAI」が出てきたことで、「変化に柔軟かつ迅速に対応できる体制を整える」というDXの役割が、さらに重要になったということなのかも知れません。

ここで言いたかったのは、進化の激しいAIが変数として加わったことで、ビジネス環境はますます不安定性を増し(VUCA)、それに迅速かつ柔軟に対応するためのDX(構造改革)はますます重要になる、ということです。AIに取り組めばDXから逃れられるわけでは無く、AIを使いこなすためにもDXを進めることが重要なのです。AIは確かに強力で、業務効率を簡単に改善できます。しかし、だからといって基本的な構造改革を先送りにしてはいけないということです。

それに、AIを有効に活用するためには業務に関わるデータがデジタル化されていなければなりません。DXは必ずしもデジタル化を意味するわけではありませんが、多くの業務はデジタル化によって効率は上がりますし、そうすればデータもデジタルの形で残すことができます。ハルシネーション対策として利用が広がっているRAGは、企業が社内に持っているデータを使ってAIの精度を高める仕組みです。社内のデータが紙のままでは、AIがそれを学習することもできないのです。

 

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