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GPU 不足は意図的なものなのか?

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なんだか凄いニュースが飛び込んできました。数百兆円って、いったいいくらくらいなんでしょうか ^^;

OpenAIのサム・アルトマンCEOが数百兆円という桁外れの資金調達を計画し「半導体業界の再構築」を目指している、すでに孫正義やUAEの有力者と会談しているとの報道も

サム・アルトマンCEOが目指す「半導体業界の再構築」とは、AI処理用のGPUやAI専用チップなどの生産体制を根底から作り直そうという計画のようです。5-7.5兆ドル(750-1000兆円)をかけ、数年以内に数十の半導体工場を建設、とあります。だからこそ数百兆円必要なのでしょうが、それにしても巨額です。

computer_graphic_card.pngAIの処理には膨大な演算が必要になることは、このブログでもご紹介してきました。ChatGPTの運用には1日70万ドルがかかっているそうです。生成AIは以前のAIモデルよりも100倍~1000倍以上の規模になるため、必要になる演算能力も桁違いになります。そのためクラウドプロバイダやAIサービスの提供元は、現時点で最もコストパフォーマンスに優れるとされる米NvidiaのGPUを世界中で買いあさっているのです。記事には

アルトマンCEOは公の場で「十分なサービスを提供するにはGPUが不足している」と発言するなどAI用チップの不足を何度もアピールしています。

とあり、今やGPUを手に入れられるかどうかがAIサービスを継続できるかどうかの瀬戸際になっているようです。

GoogleやAmazonが、GPUに頼らずとも良いようにAI専用チップを開発して自社サービスに使っていますが、同時にGPUの使用もやめていないことから、未だにGPUのコストパフォーマンスは高いのだろうと考えられます。そして、自社製のAIチップを持っていないクラウドプロバイダは、GPUを買う以外の選択肢は無いでしょう。

NvidiaはGPUの世界シェアの92%を握っていると言われ、文字通り一人勝ち状態です。株価は2023年に3倍になり、今年にはいってからも40%伸びているということで、もうすぐ時価総額でアマゾンを抜くかもしれないと言われています。景気の良い話です。

ゲーム用GPUの需要は低迷

その一方で、気になる記事もありました。

AMDはCPUとGPUの価格をつり上げるために供給を制限しているとリサ・スーCEOが明かす

AMDは、GPU市場で唯一Nvidiaに対抗しうる企業です。(シェアは3%しかありませんが。。)そのAMDが、CPUとGPUの価格の低下に苦しんで、出荷制限を行っているというのです。記事中には、

GPU市場でAMDとしのぎを削っているNVIDIAも同様の戦略をとっています。

とあり、Nvidiaもなんらかの出荷制限を行っているとされています。彼らも価格をつり上げようとしているのでしょうか?

ただ、記事をよく読んでみると、これはゲーム用GPUについての話のようです。AI用の需要は旺盛だけれども、本来の用途であるゲーム用は需要が大幅に低下しているということです。ゲーム用GPUは仮想通貨のマイニング用にも使われていたため、そちらの需要が落ち込んだということなのかも知れません。

Nvidiaが出荷制限を行っているというのは、ひょっとすると需要が旺盛で高価格なAI用GPU(変な言い方ですが)に生産をシフトしているから、ということも考えられます。NvidiaのH100はGPUといいながら実際にはAI専用と言って良く、価格も数百万円します。AMDもAI用のGPUは出していますが、まだNvidiaに対抗するまでにはなっていないようですから、Nvidiaよりも台所は苦しいのでしょう。

アルトマンは寡占状態を嫌っている

アルトマンCEOが数百兆円を調達してまで半導体業界を再構築したいと考えているのは、Nvidiaに支配され、Nvidiaの都合で価格や製品の割当が決められる現状に不満を持っているからとも言われています。また、実際にチップを製造するファウンダリも、世界最高水準の半導体を作れるのは事実上台湾のTSMCしか無い状態ですから、これも供給能力や安全保障の観点からも問題です。AIが今後も進化を続け、計算能力を必要とし続けるのであれば、複数のGPUもしくはGPUに代わるAI専用チップメーカー、そして多数の最先端のファウンドリが無いといけないということなのでしょう。

 

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