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4月24日に都内で開催されたセミナー「セルフパブリッシング狂時代」を受講しました。主催は日本電子出版協会主催です。

このセミナーは、佐々木大輔氏、いしたにまさき氏、鈴木秀生氏の3人がそれぞれ登壇した後で、最後をパネルディスカッションで締めるという形式で行われました。3氏の経歴などはこちらでご確認ください。電子出版業界とその周辺で広く深く活動している方々ならではの、たいへん中身の濃いおもしろい話をきくことができました。

オフレコの内容が多いため、プレゼンのスライドは鈴木秀生氏の分のみがサイトで公開されています。

4月30日追記:以下のサイトで資料と映像が公開されています。
http://www.epubcafe.jp/egls/epubseminar25

この中で興味深いと思ったポイントをいくつかご紹介したいと思います。私が理解した意訳表現です。発言内容そのままではありませんので、ご了承ください。

  • 日本の紙の本は量的・質的に過剰である。限られた資源をジェット返本(注:書店に本が到着した瞬間に店頭に出さずに返本)するのは資源の無駄遣い。いつまでも続けられない。
  • 英語圏の本は厚く重い。これは紙や印刷の質が日本より劣ることや、同じ内容を表現する場合に英語は日本語の3倍くらいの字数が必要等の理由による。電子書籍化することで軽くしたいという要求は日本よりはるかに強かった。
  • もし電子書籍の後で紙の本が発明されたとしたら、メモを書き込める、飽きたら燃やして燃料になる等、すばらしい発明と言われたに違いない。
  • 今後は電子書籍が基本になって、紙の本はプレミアムなパッケージとして再定義されるだろう。
  • ブログと電子出版の境界が今後はシームレスになっていく。ブログで書きためたコンテンツを、メールマガジンや電子書籍にするのは自然な流れ。
  • ライブドアブログではブログに書いたものをEPUB形式やKindle形式でそのまま出力する機能を備えている。
  • 電子書籍のキラーコンテンツはやはりコミックだ。
  • 著作権まわりがグレーであることで電子書籍に入ってこないコミケ作者の層が、なんらかのきっかけで電子書籍に参入し始めると大きな流れになるだろう。
  • Kindleは他の電子書籍プラットフォームより圧倒的に売れるプラットフォームであるが、デバイスやアプリを用意して、さらにKindle本を買わないといけない点ですでに古い。デバイスを買ったらすぐに読める状態でパッケージされていることが望ましいが、アマゾンはこれはできない。
  • LINEコミックは使い始めるハードルを下げた新しいプラットフォームだ。
  • 海外の調査結果によると、電子書籍を無料で配付している著者と有料で販売している著者は、ほぼ同数。売上を目的としていない著者は多い。
  • 電子書籍の売上は作品に対する評価であり、書いた労力に見合う売上は得たいところ。
  • 電子書籍は作った後でどうやってプロモーションしていくかが重要。ブログと同じで3年は続けて「面」を作る必要がある。
  • 書く習慣が大事。よく書く人はより多く読む人だ。売れる電子書籍を書きたいのであれば、まず3年間毎日5千字くらい書き続けること。

私はこれまでに3冊のKindle本をアマゾンKDPから出版しています。その経験から見て、セミナーの内容は納得する事が多く、今後のセルフパブリッシングを考える上でたいへん参考になりました。

大手出版社が有名作家の小説を電子書籍で出すというのは、電子書籍ビジネスの一つの形に過ぎません。私は電子書籍出版の一番の醍醐味はセルフパブリッシングにあると考えています。出版社の企画会議に通らない内容、紙の本の採算ベースに合わない内容を、タイムリーに小回り重視で出版できることが電子書籍の最大のメリットと考えます。

つまり、電子書籍=セルフパブリッシング=同人誌、です。

コミケで販売しているサークルの中には、エロや二次創作でないオリジナルなコンテンツを持っているところも多いです。まずはこの層がセルフパブリッシングに参入してくるのではないでしょうか。

現時点では読みたい本が電子書籍になっていないことが多いのですが、今後ははじめから電子書籍で出版され、いくら待っても紙では読めない「ボーンデジタル」本の中におもしろい物が出てきそうに思います。

電子書籍だからと言って、全員が小説を書かなければいけないことはありません。ごく小数の限られた人だけが必要とするノウハウ本など、セルフパブリッシングはアイデア次第です。

自分ならではのネタでセルフパブリッシングをやってみると、おもしろいと思います。

関連エントリ:

Kindleでエラーのない本を作る方法:てくてくテクネコ:ITmedia オルタナティブ・ブログ http://blogs.itmedia.co.jp/techneco/2013/04/kindle-306d.html

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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