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アマゾンのKindle(キンドル)とKindle版の日本語の電子書籍(以下、Kindle本)が日本で発売されてから、電子書籍の普及に勢いが出てきたように感じます。

Kindleは電子書籍を購入して読むだけのサービスではありません。Kindleダイレクト・パブリッシング (以下、KDP)と呼ばれる仕組みが用意されています。KDPを使えば誰でもKindle本を出版して、アマゾンで販売することができます。

「いつかは本を出してみたい」「自分の書いたものを人に読んでもらいたい」と考えている人は多いと思います。

しかし現実に紙の本を出版社から出そうとすると、それなりの販売部数が見込めることが前提となります。数が売れそうにない本は、自費出版するしか方法がありませんでした。

Kindle本なら自分が好きな内容とタイミングで出版して、全世界で売ることができます。もしうまく売れなくても、在庫の本で自宅の部屋がいっぱいになることはありません。

KDPは自分の思いどおりの本を出版したいという夢をかなえてくれるサービスです。

私がKindle Fire HDを購入した当所の目的は電子書籍の読書体験でしたが、今はKDPにすっかりハマっています。

手始めに2月に「NetCommons:失敗しないサーバー選びとインストール」を出版しました。このKindle本は売ることよりも本の作成ノウハウの習得が目的です。価格は300円と抑えめにしました。発売開始と同時に無料キャンペーンを行って、想定読者数のデータを得ました。

つづいて3月に「NetCommons:はじめての教科書」を出版しました。これはそれなりのボリュームと内容で価格は1,250円です。99円のKindle本が多い中では高めの設定です。弊社のトレーニングテキストをベースにしていて実績があるので、必要とする人だけが買っていただければと考えています。

この二冊を作った経験をベースに、さらに日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナー「Kindleコンテンツ制作説明会II 」でアマゾンのKindle Formatエバンジェリストの方からきいたノウハウを取り込んで、三冊目の「キンドルでエラーにならない本を作る」を三月末に出版しました。

三冊のKindle本を作ってみてわかったことは、Kindleに限らず電子書籍は電子書籍固有のノウハウが必要だということです。

Kindle本を出版することは、mobi形式のファイルを作ることになります。

これをWordからPDFファイルに変換する場合と比べてみます。

PDFファイルの出力はWordの標準機能でできますし、その際に見た目が違ってしまうことはまずありません。これはWordで紙にプリントする時と同じサイズとレイアウトでPDFに変換されるからです。

一方、リフローレイアウトのKindle本は、以下の点で紙の本と大きく異なります。

  • 読者がフォントサイズ、行間、画面の余白を自分で設定変更できます。読者がどのように設定しても内容が適切に表示される必要があります。
  • フォントサイズや余白が変わると、1ページに表示できる文字数が変わります。このためページ番号は存在しません。本の中で場所を示す時は、位置No.が使われます。
  • 一般に紙の書籍は紙の色である白を背景に黒インクで文字を印刷します。Kindle本は読者が白、セピア、黒の3色からカラーモードを選択可能です。例えば、カラーモード黒の場合の文字色は白になります。Kindle本を作成する際に文字色を明示的に黒や白に指定すると、読者がカラーモードを変更した場合に背景と同じ色になって読めません。
  • フォントは読者が明朝またはゴシックを選択します。したがって本文に凝ったフォントを使うことや明朝とゴシックを使い分けることはあまり意味がありません。文字の大きさ、太字、斜体、下線を使い分けて表現する必要があります。

紙の本の基本であるページとその中のレイアウトの考え方が、リフローレイアウトのKindle本では通用しないということがわかりました。フォントや色の使い方もWordのやり方のままというわけにはいきません。

将来はPDF出力と同じくらいの手間になると思いますが、現時点ではまだハードルが高いです。

三冊目を書いている間にジャストシステムの「一太郎2013 玄」がマイナーバージョンアップしました。バージョンアップの目玉はKindleのmobi形式の出力に対応したことです。

私が評価した範囲では、一太郎で作成した原稿をmobiファイルに出力してプレビューするところまで、連続した操作でできました。ただし、現時点では個条書きや段落番号のレイアウト等の細かい部分で課題があります。縦書き、ふりがな(ルビ)、縦中横にきちんと対応しているようですので、今後のさらなるバージョンアップに期待したいと思います。

いずれにしても一太郎2013は7,000円以上しますから、一冊数百円のKindle本の印税で元を取るのはなかなかたいへんです。

結局、現時点の私の結論は、商品としてKindle本を作るならEPUB形式のファイルを細々と編集するしかないということになりました。リフローレイアウトで横書きのKindle本は、しばらくこの方法で作ろうと考えています。

多少の手間はかかりますが、KDPは自分の好きな本を作れるところが楽しいです。書きたいネタを持っている方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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