« 2010年6月23日

2010年7月2日の投稿

2010年7月16日 »

私がいまさら言うまでもありませんが、キンドルは米国Amazonが販売している電子書籍デバイスです。Amazonで購入した電子書籍をキンドルにダウンロードして、読むことができます。Amazonの電子書籍は、キンドルだけでなくパソコンで読むことも可能です。キンドルとパソコンの間で本に挟んだしおりを共有できる等、デバイスを意識させないシームレスな利用法が特徴です。

キンドルが発売されたことで、米国では読書のスタイルや本の売り方に大きな変化が起きました。今年はいよいよ日本でも電子書籍が本格的に普及する年になるとされています。この本を読めば、これから日本の出版社・編集者・著者の間で起きる激震を予測することができるでしょう。

と言っても、この本をいわゆる電子書籍本だと思って手に取ると、少々期待はずれに終わるかもしれません。

タイトルこそ「Kindleショック」となっていますが、実はこのタイトルは新書にありがちな"釣り"風味と思った方がいいです。私の分類では、この本は電子書籍本ではなく、遅れて登場した最強・最後の「クラウド本」です。

著者の境氏の肩書きは、経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業)です。日本のコンテンツ政策を担当している現役の経済官僚です。この本の価値は、キンドルやiPadが目指しているものが、クローズドなデバイスを中心とした"閉じた"インターネットであることを指摘していることです。

インターネットの誕生以来、ユーザ側のデバイスは汎用的なコンピュータでした。中でも中心になっていたのが、パソコンでした。パソコンはインターネットを取り巻く技術的な進化・変化によく対応し、広く普及しました。その一方で、著者が"万能海賊版製造機器"と呼ぶように、有料コンテンツに施されたあらゆるコピープロテクトを解除して、違法な複製を作るための装置としても使われてきました。これでは有料のコンテンツを提供する側は安心できません。

キンドルやiPadのようなデバイスの機能を提供側が好きなように制限できるデバイスと、それにコンテンツを送り込むクラウドの組み合わせが登場したことで、ようやくコンテンツ提供側が安心できる環境が整ったというのが著者の主張です。著者はこれを「デバイス=クラウド生態系」と呼んでいます。

こう書くと、提供側だけに都合がいい話のように思われるかもしれませんが、セキュリティー対策など複雑になりすぎたパソコンについて来られなくなった利用者にとっては悪い話ではありません。

著者はこれからのインターネットは従来のオープンなネットワークと、専用のデバイスとセットで提供される閉じたネットワークが共存するとしています。

パソコンやインターネットを黎明期から使っていると気づきにくいかもしれませんが、著者が言う「デジタル二重革命」が着実に進行していることがわかります。インターネットの裏側で何が起きているのかを考える一冊としてお勧めです。

テクネコ

« 2010年6月23日

2010年7月2日の投稿

2010年7月16日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
techneco
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ