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M・S・クリシュナンとC・K・プラハラード共著の「イノベーションの新時代」を読みました。この本は本屋のビジネス書コーナーに置かれていると思いますが、ユーザ企業の情報システム部門やSI会社の関係者にも有用な本です。

著者は最初に昨今のビジネスの変容は、2つの柱に支えられていると定義します。

第一の柱

消費者にとっての価値は、自分だけのかけがえのない経験から生まれる。企業はたとえ一億人の消費者を対象としていたとしても、瞬間瞬間には、ひとりの顧客とその消費経験に注意を集中しなくてはいけない。特定の個人を主役に据えるべきなのだ。本書ではこの柱を「個客経験の共創」と呼ぶ。

第二の柱

どれほど大規模に幅広く事業を展開する企業といえども、単独では、各顧客にそのつど満足のいく経験を届けるだけの力を持たない。どの企業もみな、大小さまざまな他社の力を借りることになる。つまり、グローバル規模での企業間の提携関係に頼るのだ。そこでは経営資源を持っているかどうかよりも、社内外の資源を十分使える状態にあるかどうかが重要となる。本書ではこの柱を「グローバル資源の利用」と呼ぶ。

著者は、トラック用タイヤの製造業のような伝統業界であっても、タイヤを卸売りするのではなく、タイヤの使用料を得るビジネスモデルにすれば、事業の主軸が取引から個々の顧客との関係性に移行して、1人1人の顧客やドライバーへの具体的な提案や助言が可能になると説明しています。走行距離に応じて対価を得るサービスは、一部の地域や業界向けにグッドイヤーやブリヂストンがすでに開始しているとのことです。将来、タイヤの摩耗を測るセンサーが進化して遠隔地で監視や測定ができるようになった時に、「モノを売る」から「サービスを売る」へ変化が起きて、運送業者向けタイヤ販売はBtoBからBtoCに変わっていくとしています。他にも現在起きている変化を説明する多くの事例が紹介されています。

このような変化のもとでは、革新的な業務プロセスが競争優位の源泉として重要になってきます。そしてデジタル化されたビジネスでは、業務プロセスもICTによって支えられることになります。

著者はICTの仕組みを4つの階層(レイヤー)に分けています。

  • レイヤー4 (最下層)
    固定通信網、ワイヤレス網、サーバー、ルーターなどの通信ネットワークとホスティング機能
  • レイヤー3
    業務プロセスを動かす自社のITシステム。ハードウェア(コンピュータ、データベースサーバー、アプリケーション・サーバー)とソフトウェア(OS、データベース、ミドルウェア・プラットフォーム)など。
  • レイヤー2
    業務別アプリケーションとそれに対応する業務プロセス。
  • レイヤー1(最上層)
    業務プロセスの成果がどのようなトレンドを示しているか等を分析するための分析ツール。顧客、納入業者、事業パートナー、投資家などとの窓口としての役割を担う。

著者は、企業に競争優位をもたらすのはレイヤー1とレイヤー2であり、レイヤー3とレイヤー4を重視して他社との競争優位の源泉と見なすのは誤りであるとしています。すなわちレイヤー3とレイヤー4は業界標準の採用やアウトソースの検討対象になります。企業はレイヤー1とレイヤー2に注力するべきなのです。

「個客経験の共創」と「グローバル資源の利用」を軸とする新たな競争環境では、融通のきく業務プロセスこそが他社との差別化を可能にします。業務システムはこれを支援するものでなければいけません。従来型のERPパッケージは、現場のマネージャーが新しいアプリケーションを手軽に開発できるか、インタフェースに柔軟性があるか、業務ロジックは満足のいくものか、といった切り口で見ると、新しい競争環境では不十分だとしています。

では、どのようなシステムやソフトウェアが必要になるのか。続きは本書をお読みください。

ITそのものはツールでしかないということは、以前から言われています。業務プロセスこそが競争力の源泉であり、業務システムはそれを柔軟に実現するツールであるべきということを、再認識させてくれる良書です。

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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