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CMSは百花繚乱」でご紹介したように、オープンソースソフトウェアだけでも、WebCMS(Webサイトのコンテンツ管理システム)はよりどりみどりと言っていいくらい種類があります。1つのCMSですべてを実現しようとするのではなく、お客様や要件に合わせてCMSを選んで、適材適所で使うことが重要と考えます。

テクネコでは、中小企業向けにお客様が自分たちでWebサイトを更新していけるCMSとして、NetCommonsをお勧めしています。一方、中堅から大企業のWebサイトでは、コンテンツのガバナンスが重視されます。このような用途で、私が注目しているのが、オープンソースCMSの「eZ Publish」です。

7月17日に広尾のノルウェー王国大使館で開催された「eZ Publish サービス・ソリューションセミナー」に行ってきました。余談ですが、ノルウェーが王国であることを初めて知りました。

以下、印象に残った部分をTwitter風につぶやきで書いていきます。

ご挨拶 eZ Systems Japan ビジネスディベロップメントマネージャ 藤田 拓

  • エンタープライズCMSは日本ではなかなか拡がらない。このため、ノウハウが溜まるのに時間がかかる。
  • 日本のeZパートナーは11パートナーになった。積極的に構築案件をやっていきたい。
  • eZ Publishの開発元は、ノルウェーのeZ Systems社。PHP開発者のDerick Rethansが参加している。
  • eZ PublishはLAMP環境で動く。エンタープライズ向けなので、バージョン4.1からOracleをサポートしている。Open Solarisに対応している。
  • Web Idolでは、2006年と2007年に最高位を受賞した。Web Idolは、一般参加者にその場で使ってもらって投票してもらう。CMSの専門家の投票と合わせて、受賞が決まる。ライバルはFatWire。
  • eZ Publishのコンセプトは、
  • 1)エンタープライズ向けの高機能(多段階承認、バージョン管理、権限管理)
    デザインが細かくできるだけでなく、誰が管理してどうやって出力していくかのアセット管理ができる。
  • 雑誌ELLEの事例:
    広告と写真のようなリッチなコンテンツを日々更新していくことが求められる。これを手作業でやるのはたいへん。全体のデザインをコントロールしつつ、複数の記者がコンテンツを更新していけるようになっている。
  • 2)柔軟性・拡張性(開発フレームワークとして使える)
    Adobe InDesignやSalesforceと連携の実績がある。
  • 3)オープンソース(開発元のeZ Systemsのオフィシャルサポートがある)
    ”ソースが透明”であることが重要。どんなバグでどこが悪いのかわかる。アプリケーションとして健全な成長になる。
    商用CMSより明らかにコストが低い。
    GPLライセンス。
  • 他のCMSと比較して、eZ Publishはテンプレートが優れている。管理画面を自分で作れる。
  • 他の商用CMSと比較して、オープンソースであること、カスタマイズで機能を拡張できること、機動性の高さ(Webの技術動向に遅れないロードマップ)が特長。
  • 他のオープンソースCMSと比較して、オフィシャルサポートがある、組織の意思を反映したワークフローでガバナンスを効かせられる、エンタープライズWebコンテンツ管理フレームワークである、ことが特長。
  • 一般にオープンソースでは、何かやろうとすると、”エクステンション(拡張部品)”の形で、自分でエクステンションをかき集めてくるのが普通。このやり方はエンタープライズには向かない。エンタープライズではコミュニティを使わずに自分たちで作るやり方になる。eZ Publishでは、フレームワークを自分たちで作ることができる。
  • 開発サイクルは、常に6ヶ月でメジャーアップすることになった。
  • バージョン4.2は9月リリース予定。CMIS対応が目玉。
  • バージョン4.3では管理画面が一新される予定。

eZ Publishで10案件ほどやってみた 株式会社ミツエーリンクス

  • eZ Publishを使った初の案件となった信濃毎日新聞社の案件では、血のにじむような努力をした。
  • これまでに10案件以上やって、ノウハウが溜まってきた。
  • 2007年、eZ Publish導入開始
  • 2008年、eZ Systems本社にエンジニアを派遣、ゴールドパートナーになって、eZ Systems Japanを共同設立した。
  • なぜeZ Publishなのか:
    WebCMSで必要な機能を標準で持っている
    カスタマイズ前提の設計になっている
    Movable Typeに限界を感じた(MTでは顧客の要件に応えられない。MTはCMSよりブログに特化している。)
    eZ Publishはコンテンツ管理に特化していたフレームワーク(カスタマイズができる。)
  • 結論:eZ Publishがフレームワークだから選択した。

  • WebCMSの基本機能
    コンテンツの入力/出力
    アセット管理
    ユーザ/権限機能
    ワークフロー
  • これを標準機能として、カスタマイズできることにより、さまざまな要件に適応したCMSになる。
  • 構築費/リスクと要件適応力が2つとも小さいのがMTやXOOPS Cube。2つとも大きいのがスクラッチ開発。eZ Publishは、ちょうど中間の位置づけでバランスが取れている。
  • これまで手がけた案件は、
    コミュニティ用途でカスタマイズ大:4件
    コーポレート用途でカスタマイズ大:2件
    コーポレート用途でカスタマイズ少:2件
    コミュニティ用途でカスタマイズ少:1件
  • ミツエーリンクスでは、受託案件だけでなく、あるサイトに特化したCMSパッケージングソリューションを考えている。
  • 例えば、セミナー情報管理ソリューションがある。これはセミナー/イベント運営の負荷軽減/効率化のパッケージ。
  • 7/30と8/6に有料のトレーニングを開催する。

eZ Conference & Awards 2009について eZ Systems Japan コンサルタント サニエ エリック

  • 6月20日から26日まで、フランス パリで「eZ Conference 2009」が開催された。
  • 今後は毎年3月と9月のメジャーリリースのスケジュールを守る。エクステンションリリースは、1,5,6,9月。
  • バージョン4.2は、ITIS Fast CGIサポート、CMIS公式エクステンション、クラスター機能とパフォーマンスの強化が中心。9月29日リリース予定。
  • 2010年1月にTeam Room(プロジェクト管理のエクステンション)をリリース予定。
  • Varnishはノルウェーの会社が出しているhttpアクセラレータ。高負荷/動的サイトに向いている。同じノルウェー生まれで、eZ Publishとの相性もよい。

eZ Publishデモ

  • eZ Publishはオブジェクト単位でバージョンと言語を持てる。例えば画像は1つのオブジェクト。
  • オブジェクトをワークフローで流すことが特徴。人もオブジェクトで管理する。
  • Open Officeと連携できる。Open Officeでオフラインで編集した後、一括でインポートできる。例えば、英文をオフラインで日本語に翻訳・編集してWebサイトに取り込むことができる。アップロードすると自動的にWebページが作成される。
  • 複数の画像ファイルをアップロードすると、自動的にページまで作成されるデモ。画像をサーバーにアップロードした後で、ネット上で文字をタイプしたり画面でコピー&ペーストする必要はない。
  • CSV形式のファイルから一括インポートできる。このとき画像のパスはセル中にフォルダ名/ファイル名を書くだけ。商品カタログを作るような使い方に向いている。
  • リンク切れをチェックして通知するようなこともできる。
  • eZ FlowのTimeLine機能では、画面上のタイムスライダで日時を移動することで、その日時のWebサイトの見え方がどうなっているかを見ることができる。
  • eZ FlowデモビデオURL http://ez.no/jp/ezflow

タイムスライダ機能のデモでは、日頃からいろいろなCMSを見慣れている参加者にもインパクトがあったようです。

ノルウェー生まれeZ Publishには、他の外国製ソフトウェアと同じ日本語化の課題があります。操作画面はともかく、マニュアルや周辺の技術情報などのドキュメントが、どこまで本国と同じタイミングで日本語で提供されるかは気になるところです。

日本法人が昨年できたばかりで課題は多いですが、機能は必要充分ですし、ビジネスの体制も整いつつあります。eZ Publishが本格的に普及すると、高価な商用CMSは売れなくなるだろうと思うくらいです。これからが期待できるCMSです。

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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