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最終日の3日目は、CRM関連のセッションを中心に聴きました。特に興味深かったのが「オラクルが提唱する“Enterprise SaaS” - プラットフォームからアプリケーションまで」でした。スピーカーは、 CRM On Demand営業統括本部長 藤本 寛氏でした。

以下は、一部の要約です。

オラクルは2年前にSaaSに進出しました。SaaS関連は動きが激しく、2~3ヶ月が世間の1年に相当します。オラクルは、2つの方向でSaaSビジネスに関係しています。1つはオラクル自身がSaaSベンダーです。もう1つは、オラクルはSaaSベンダーを支援するベンダーでもあります。

SaaSが急速に普及する背景には、ビジネスの変化に、1)適応できない、2)予測できない、3)実行できないの3つの悩みがあると考えます。

SaaSの価値は以下の3つです。

  1. 低リスクです。何が正しいかに時間をかけずに、まず始めることができます。オラクルCRM on Demandでは、最短2日、平均して2ヶ月で稼働しています。
  2. ITコストの8割が既存システムの運用・保守に使われているという調査結果があります。SaaSは運用・保守やアップグレードのコストを軽減・省力化します。用意されたものを使う/使わないを判断するだけなので、技術革新の恩恵を受けやすいと言えます。
  3. 企業のIT標準を決める活動に使う時間が不要です。

日本では、3割の企業が何らかのSaaSを利用しています。利用者の60%が満足の評価です。60%という数字は、高評価であると判断しています。

今まで、SaaSはITの課題を補う代替案として利用されてきました。これからは、以下の3つの目的で使われると考えます。

  1. さらなるコスト削減
  2. 守りの効率化(今までのシステムの置き換え)から攻めの仕組み化へ
  3. 戦略オプションの早期評価

SaaSの特徴は、早く、安くです。年度の初めに立てた戦略が、年度末まで正しいとは限りません。いくつかのオプションを持っていて、先を読んで切り替えていく必要があります。

FX会社の事例

このFX会社では、想定の10倍を超える顧客トランザクションが発生しました。あるSaaS型CRMからOracle CRM on Demandに乗り換えて、営業業務プロセスの見える化をすることで、運用コストを40%削減できました。

従来は営業が顧客からの問い合わせ等を直接受けていました。大量トランザクションをまかなえるITづくりを目的として、一次対応窓口で問い合わせを一括して受け付けた後で、必要なものだけを営業にエスカレーションすることにしました。

実現されたことは、以下の3つです。

  1. 顧客情報の一元管理 -- 従来は営業内だけで共有されていればよかったが、営業と問い合わせセンターで双方向に顧客情報を共有することが必要になった。
  2. CRMで顧客対応を強化 --例えば、Eメールを好む顧客にEメールで情報提供する、セルフサービスで注文を自動化、等ができるようになった。
  3. 営業業務の効率改善

業務プロセスが定義した通りに実行・定着できているかを、グラフでチェックしています。

人材関連会社の事例

提案型ソリューション営業への変革を目的として導入しました。

この企業では、派遣、中途採用、育成・トレーニングなどの縦割りの事業部制になっています。以下が必要でした。

  • 情報の一元化 -- 多くの事業部と取引している顧客企業が見えていないため、自社の誰が顧客の誰と会ったか、顧客がどんな課題を持っているかが共有できていませんでした。事業部横断でサービスを提供することで、既存客に深く入り込むことを狙います。u
  • プロセス標準化 -- 事業部ラインで営業プロセスがバラバラでした。
  • 戦略実行のためのPDCA強化 -- Oracle CRM on Demandでは入力したほとんどの項目をデータ検索条件に指定できます。ある取引がある/ないで顧客を絞り込んでターゲティングするができるようになりました。

SaaSの特徴は、導入した後で、次にどう使うかを考えることにあります。このためには、現状を把握するためにモニタリングが欠かせません。

ネットワーク機器販売会社の事例

従来は典型的な代理店販売で、どこに売れたのかわかりませんでした。既存の顧客を見直して関係を拡げていくという方針で、まず機器の保守契約から見直しました。

顧客情報を一元管理し、Webベースで顧客が保守契約を直接結ぶようにすることで、代理店モデルからの変革を実現しました。

この事例は、営業、保守サービス、コールセンター、技術部署で情報を一元管理する、CRMの王道の使い方でした。CRMを導入した結果、取引金額が多いのにもかかわらず保守契約率が低い顧客を見つけて保守契約を提案するなど、今までできていなかった当たり前のことができるようになりました。

オラクルでは「戦略オーディット」と呼んでいますが、戦略が正しいかどうか評価していくことが重要です。

当たり前のことを当たり前にやって、それが正しいかどうかを常に評価することが重要だと、改めて感じました。

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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