« 2009年4月9日

2009年4月10日の投稿

2009年4月11日 »

すでにご存じと思いますが、三菱UFJ証券から顧客情報1,486,651名分が持ち出されました。そのうち、49,159名分は名簿業者に売却されていました。

私は三菱UFJ証券と取引がないので、当事者ではありません。CRM(顧客関係性管理)の視点から、今回の該当顧客に対して三菱UFJ証券がどのような対応をするか、注目しています。

約5万人分の買い取り価格は、33万円だったようです。1人あたり約6.7円です。三菱UFJ証券の顧客データであることは隠されていたそうですが、名前、住所、電話番号(自宅・携帯)、性別、生年月日、職業、年収区分、勤務先名、勤務先住所、勤務先部署名、役職、業種のフルセットで、この程度の値段しか付かなかったことは少し意外でした。

一方、三菱UFJ証券のダメージはどのくらいでしょうか。

2003年から2004年にかけて個人情報が持ち出されたYahoo! BBの顧客情報流出事件では、運営会社のBBテクノロジー(旧ソフトバンクBB)は、個人情報が漏洩されていないユーザーも含め、Yahoo! BBの会員全員に500円相当の金券を送っています。この時に、”1件500円”の相場ができました。この事件は、500円で済ませる対応に不満を持った会員が裁判を起こして、1人あたり6,000円の支払いを命じる判決が出ています。

その後の他の企業の流出事件では、”1件1万円”になったことがあります。

三菱UFJ証券の2008年度の純利益は、81億円でした。今回、全員に1万円払うとすれば、約150億円になります。実に2年分の利益が吹っ飛びます。外部に流出した5万人だけに絞ったとしても、5億円です。億単位の金額になると、民事訴訟で犯人に請求したところで、個人では払いようがないでしょう。三菱UFJ証券が泣く泣く負担することになりそうです。

さらに、支払い対象にならなかったり、金額に不満を持ったりした顧客が訴訟を起こすかもしれません。それに対応する費用が発生する可能性があります。口座を解約して競合他社へ行ってしまう顧客の機会損失も考えなければいけません。

こうやって金額で計算してみると、顧客情報の流出がいかに恐ろしいか、よくわかります。

テクネコ

マイクロソフトは、Windows7からXPへのダウングレード権を認める方向です。Windows7の発売後に、OEMメーカーはXPにダウングレードしたマシンを販売できるようになるようです。

Windowsのボリュームライセンス契約を結んでいる企業に対して、Windowsの旧バージョンを所有しているパソコンで利用する権利は、以前から提供されていました。これは、大規模ユーザーを対象にした一種の例外です。Windows7の発売後に、新規に市販されるパソコンで、2世代前のWindowsXPをプリインストールすることを認めるのは、これまでにない大きな変化です。

これには2つの理由があると考えます。

一つは、不況でパソコンのリプレースがままならないユーザ企業で、動作検証済みで使い慣れたXPを求める声が根強いことです。パソコンの台数が多い企業ほど、リプレースは費用と時間がかかります。使い勝手が変われば、ユーザの再教育などサポートコストが増えます。少なくなりつつあるとは言え、Windows上で動く独自の業務アプリケーションを持っている企業があります。Windows7に変えるためには、動作検証などの手間を考えなければいけません。

もう一つは、ネットブックの存在です。ニッチで始まったネットブックは、マイクロソフトの予想に反して(?)、パソコンのシェアを変えるくらいの大きな存在になりました。マイクロソフトはネットブックでWindows7を使ってもらいたいところと思いますが、CPU性能等の制約を前提として存在するネットブックでは、Windows7より軽いXPが向いています。

OEMメーカーからこのような要望が上がった結果、ダウングレードを認めることになったと思われます。

Windows2000のフェードアウトは、当初予定されていたサポート期間が延長された後で、ようやく収束しました。XPのフェードアウトはさらに難しそうです。

クラウドコンピューティングの風が吹いて、ブラウザさえ使えればいいという方向になりつつあります。マイクロソフトが笛を吹いても、ユーザは踊らなくなっています。ユーザがWindowsの新機能に期待しなくなっている、と言っていいかもしれません。OSを選択するのはユーザです。ユーザがXPで困っていないのであれば、Windows7へバージョンアップする必然性がありません。今後さらにクラウド化が進むと、Windows、Linux、Macで共通に使えるFirefoxが標準のブラウザになって、Windowsの存在価値が下がる可能性がありえます。

2世代前のXPのプリインストールを認めることで、マイクロソフト自身が「Windows7にしなくても問題ない」というメッセージを発信してしまったと考えます。マイクロソフトはWindowsに対する主導権を失いつつあるのかもしれません。

マイクロソフトがWindowsを機能強化する目的を見失って迷走するのか、バージョンアップしたくなるような新しいエクスペリエンスを提案できるのか、分かれ目に来ているのではないでしょうか。

関連リンク:

テクネコ

« 2009年4月9日

2009年4月10日の投稿

2009年4月11日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
techneco
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ