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すでにご存じと思いますが、三菱UFJ証券から顧客情報1,486,651名分が持ち出されました。そのうち、49,159名分は名簿業者に売却されていました。
私は三菱UFJ証券と取引がないので、当事者ではありません。CRM(顧客関係性管理)の視点から、今回の該当顧客に対して三菱UFJ証券がどのような対応をするか、注目しています。
約5万人分の買い取り価格は、33万円だったようです。1人あたり約6.7円です。三菱UFJ証券の顧客データであることは隠されていたそうですが、名前、住所、電話番号(自宅・携帯)、性別、生年月日、職業、年収区分、勤務先名、勤務先住所、勤務先部署名、役職、業種のフルセットで、この程度の値段しか付かなかったことは少し意外でした。
一方、三菱UFJ証券のダメージはどのくらいでしょうか。
2003年から2004年にかけて個人情報が持ち出されたYahoo! BBの顧客情報流出事件では、運営会社のBBテクノロジー(旧ソフトバンクBB)は、個人情報が漏洩されていないユーザーも含め、Yahoo! BBの会員全員に500円相当の金券を送っています。この時に、”1件500円”の相場ができました。この事件は、500円で済ませる対応に不満を持った会員が裁判を起こして、1人あたり6,000円の支払いを命じる判決が出ています。
その後の他の企業の流出事件では、”1件1万円”になったことがあります。
三菱UFJ証券の2008年度の純利益は、81億円でした。今回、全員に1万円払うとすれば、約150億円になります。実に2年分の利益が吹っ飛びます。外部に流出した5万人だけに絞ったとしても、5億円です。億単位の金額になると、民事訴訟で犯人に請求したところで、個人では払いようがないでしょう。三菱UFJ証券が泣く泣く負担することになりそうです。
さらに、支払い対象にならなかったり、金額に不満を持ったりした顧客が訴訟を起こすかもしれません。それに対応する費用が発生する可能性があります。口座を解約して競合他社へ行ってしまう顧客の機会損失も考えなければいけません。
こうやって金額で計算してみると、顧客情報の流出がいかに恐ろしいか、よくわかります。
マイクロソフトは、Windows7からXPへのダウングレード権を認める方向です。Windows7の発売後に、OEMメーカーはXPにダウングレードしたマシンを販売できるようになるようです。
Windowsのボリュームライセンス契約を結んでいる企業に対して、Windowsの旧バージョンを所有しているパソコンで利用する権利は、以前から提供されていました。これは、大規模ユーザーを対象にした一種の例外です。Windows7の発売後に、新規に市販されるパソコンで、2世代前のWindowsXPをプリインストールすることを認めるのは、これまでにない大きな変化です。
これには2つの理由があると考えます。
一つは、不況でパソコンのリプレースがままならないユーザ企業で、動作検証済みで使い慣れたXPを求める声が根強いことです。パソコンの台数が多い企業ほど、リプレースは費用と時間がかかります。使い勝手が変われば、ユーザの再教育などサポートコストが増えます。少なくなりつつあるとは言え、Windows上で動く独自の業務アプリケーションを持っている企業があります。Windows7に変えるためには、動作検証などの手間を考えなければいけません。
もう一つは、ネットブックの存在です。ニッチで始まったネットブックは、マイクロソフトの予想に反して(?)、パソコンのシェアを変えるくらいの大きな存在になりました。マイクロソフトはネットブックでWindows7を使ってもらいたいところと思いますが、CPU性能等の制約を前提として存在するネットブックでは、Windows7より軽いXPが向いています。
OEMメーカーからこのような要望が上がった結果、ダウングレードを認めることになったと思われます。
Windows2000のフェードアウトは、当初予定されていたサポート期間が延長された後で、ようやく収束しました。XPのフェードアウトはさらに難しそうです。
クラウドコンピューティングの風が吹いて、ブラウザさえ使えればいいという方向になりつつあります。マイクロソフトが笛を吹いても、ユーザは踊らなくなっています。ユーザがWindowsの新機能に期待しなくなっている、と言っていいかもしれません。OSを選択するのはユーザです。ユーザがXPで困っていないのであれば、Windows7へバージョンアップする必然性がありません。今後さらにクラウド化が進むと、Windows、Linux、Macで共通に使えるFirefoxが標準のブラウザになって、Windowsの存在価値が下がる可能性がありえます。
2世代前のXPのプリインストールを認めることで、マイクロソフト自身が「Windows7にしなくても問題ない」というメッセージを発信してしまったと考えます。マイクロソフトはWindowsに対する主導権を失いつつあるのかもしれません。
マイクロソフトがWindowsを機能強化する目的を見失って迷走するのか、バージョンアップしたくなるような新しいエクスペリエンスを提案できるのか、分かれ目に来ているのではないでしょうか。
関連リンク:
- Randomwalk Windows 7からXPへダウングレード可能、マイクロソフトが認める
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