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IBM、Sun、Cisco他のクラウド関連企業が「The Open Cloud Manifesto」を公開しました。これに対して、クラウドのメジャープレイヤーであるMicrosoft、Amazon、Googleは、現時点では支持企業のリストに入っていません。Microsoftは、Open Cloud ManifestoがIBM主導ではないかと、不満なようです。

新しい技術から生まれた市場が大きくなってくると、主導権を巡る動きが必ず出てきます。

1980年代の終わり頃、UNIXの主導権争いがありました。AT&Tとサン・マイクロシステムズによるUNIX System Vの共同開発に対抗して、DEC、HP、IBM、アポロコンピュータ、Bull、ニクスドルフ、シーメンスが、Open Software Foundation(OSF)を結成しました。一方、AT&Tとサン・マイクロシステムズは対抗して、UNIX International(UI)を創設しました。当時のコンピュータ誌では、「OSF vs UI」の構図で大きく取り上げられました。

2つの団体はどちらも「UNIXの標準化」を主張していました。この時にしっかり標準化できていれば、その後のUNIXの位置づけは変わっていたはずです。UNIXがデスクトップOSとして普及したかもしれません。残念ながら、お互いに協力せずに、似て非なるUNIXとその派生版が乱立する状況が続いている間に、MicrosoftのWindowsが伸びてきました。Windowsの外圧に押されて、OSFとUIは1994年になってようやく合併しましたが、すでに時遅しでした。Windows 95/NTに標準OSの地位を持って行かれてしまいました。

Open Cloud Manifestoについては、同ドキュメントの中で「これらの基本原則は、クラウドはほかのIT技術と同様にオープンであるべきだという信念に基づくものである。」と説明されています。

私は、そもそもクラウドがオープンでなければいけないのか、標準化する必要があるのか、疑問です。

現時点のクラウドのPaaSとしての実装は、Microsoft、Amazon、Google、Salesforceで全く異なります。ユーザがやりたいことが決まれば、どのクラウドサービスを使うかが、ほとんど選択の余地なく決まってしまいます。これは悪いことだとは思いません。今はまだ標準化を議論する段階ではなく、各企業が独自の技術とサービスを競う段階ではないでしょうか。最終的にユーザに支持された企業が真の標準、デファクト・スタンダードになると考えます。

Windowsは標準化団体で話し合って決めたものではありませんが、UNIXに勝ってデファクトになりました。「船頭多くして船山に登る」「烏合の衆」という言葉もあります。Windowsがオープンでなくても、普通のユーザや開発者は困っていません。

Open Cloud Manifestoは、早すぎた花火になるかもしれません。

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加藤和幸

加藤和幸

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