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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

« 2011年12月26日

2011年12月28日の投稿

2012年1月5日 »

立場上通信関係の話、特にケータイを含む無線通信関係の話には触れないようにしているのですが、昨今のWiFiのアクセスポイントに絡む話はやっぱりちょっと思うところがあって触れる事にします。もちろん1人のユーザーとして通信サービスを利用できる場所や方法が増えるのは歓迎しますし、それで自分が今までより便利になるなら嬉しいのは事実。でも考えないといけない事があるのも事実なんですよ。え?なにそれって?

 

物理法則は誰にも変える事はできない

3G携帯電話でもPHSでもWiFiでもWiMAXでも、全て電波を媒介として通信を行います。通信規格や利用できる帯域幅、伝送のための技術、そして周囲の建物やら何やらの環境によって通信できる速度やら何やらが変わるわけですが、空間を飛ぶ電波のところは基本的に同じ物理法則に基いているわけです。これが商用無線であればお互いに干渉が極力起きないように調整しますし、自分自身のネットワークのカバーする密度を上げるために基地局を置くための設計をやり直して出力やらアンテナの方向やらゲインやら何やらを調整してゆくようなことも当然するわけです。この部分はいわばプロの世界であり、それぞれが決まったルールに基いて動く世界。

かたやWiFiの場合、元々公衆サービスをする事を前提としていない規格なんで、お互いの干渉とか全く意識していなくて、極論するとアクセスポイント自体は世の中には自分しか存在していないと信じて動くようなものだと思ってもいいかもしれません。それが閉じた空間、たとえば自宅だったり壁面で囲われたオフィス空間だったりというところで利用されるのが本来の姿なんですが、たとえばそれが屋外だったら、そしてお互いの電波が届きあってしまうような環境にあれば当然ですが所期の速度なり品質なりを保つのは難しくなります。

因みにこれは不正アクセス云々といったレイヤーの話ではなく、純粋に無線の世界の話。同じ周波数を使い、お互いの干渉を避けるという動きを基本的に求められない機材が混在するとどうなるか。これまた極論すると会議室の中でみんながワーワー言ってる状態で誰が何を喋ってるのかよく判らない状態になるわけです。これが相互の干渉で、これを避けるための方法はあるんですが、それを全てのアクセスポイント機器が実装しているかどうかは別の話。

 

でも屋外でそんなに干渉しまくることってそんなにないでしょうって?

今はそれほど多くは無いですね。そもそも無線出力が小さいし、使う周波数も比較的高いところなのである程度の距離があれば大丈夫ですし、壁を抜けるときの減衰も大きい。だからたとえばマンションの個々の部屋でアクセスポイントを設置していてもそれほど大きな問題にはならなかったりします。もちろん設置場所やらアクセスポイントの機器によっては周囲に電波干渉を起こす事がゼロではありませんが、少なくとも壁を挟んでいれば、というところはあります。

でも、WiFiのアクセスポイント自体が動きまわる世の中ですから、そう楽観しててもさぁって状況があるんですよ。でもアクセスポイントが動き回るって?

 

3GやLTEで繋がったWiFiのアクセスポイントを持ち歩くというコトの功罪

私自身、3GやLTEなどの公衆網に繋がるWiFiのアクセスポイントを持ち歩く事自体を夢にまで見た時期が長かった人ですし、そういう環境が使えるようになって本当にありがたかったし、その意義やメリットは百も承知しています。そしてそういう使用方法が今後なくなることは無いと断言しても良いと思っているくらいです。あくまでもユーザーという立場でモノを考えた場合。

ただ、これを無線の世界から見るとですね・・・ たとえばWiFiが使える喫茶店やら何やらにこの機材を持ち込むというのは、無線の部分から見ると同じ周波数でそれなりの出力を持った自分と同じような機器が突然邪魔しに来るみたいな話になるわけです。当然電波は干渉を起こしますし、お互いにそれを回避する手段を持ちませんからワーワー言いながら誰とも会話が成立しないような状況が起きるわけです。そしてこれが幾つも同じ場所に集まってしまうとですね・・・ それこそ渋谷のハチ公前交差点でみんながワーワー言ってる状態になるんですが、そうなると電波強度は最高なんだけれど全然繋がらないとか、あるいは速度が出ないとかそういう話になるんです。

じゃぁルールを作ればって?いや、だから、そもそも現在のWiFiのアクセスポイントは世の中に自分しかいないと思って動く規格ですから、なかなか難しい。じゃぁWiMAXってどうなの?とか言う話になることもあるんですが、それはあくまでも通信規格の話であってそれを媒介する無線(つまり電波)の制御の話とは別次元のお話。同じ周波数を使ってる限り必ず干渉、つまり邪魔しあいます。

とまぁ、難しい話になるんですが、少なくともそういう事が起きてるんだよってのは覚えておいて損はしないと思います。

 

じゃぁどうすりゃいいんだよって?いやぁ、それは・・・

とてもむつかしい話です。相互干渉を避けるためのプロトコルをWiFiの規格に実装して全ての機器がそれを利用できるようになればいいんでしょうけれど、それは夢の話。じゃぁ商用無線サービスとして、たとえばLTEでもなんでもいいんですが、そういうサービスが隅々まで使えるようになればいいんでしょという話になると、実効速度の問題や料金体系、そして端末機器の問題(WiFiが使えてしまう機器が余りに多い)などからやっぱり簡単な話じゃない。

ってことで、そのうち「無線データ端末の電源はお切りください」という告知が出る店が出現すると凄いなとは思うのですが、ポケットや鞄の中に忍ばせてしまうと見た目で存在がわからないわけで、いちいち手荷物検査しなくてはいけないという、わけの判らない話になるような気もします。

因みに余談ですが、無線区間がいくら速い規格であっても、それと何かしらのバックボーンネットワークに繋ぐ部分が必要にして十分な速度が出ないと遅くなるのは当然で、でもそこは通常見えない話なので話題にされにくいんですけれど、そこに触れると更に面倒くさい話になるので、今回は触れません。

便利なのは便利。これは事実。でも、便利になってる裏では色んな事が起きてしまうという難しいお話でした。

bibendum_iwa

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プロフィール

岩永慎一

岩永慎一

外資IT、日本のIT系を経由して現在通信事業者に勤務。営業やSE、更にはコミュニケーション系を中心にありとあらゆるマーケティング関連の仕事を経験してきたが、現在は通信業界の特殊部隊として常に完全装備で課題に取り組む。

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