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 前回、ネアンデルタール人について書いた。クロマニオン人が我々の直接の祖先となり、ネアンデルタール人はその言語能力、つまりコミュニケーション力の低さから生存競争で敗れ絶滅していった。現代の企業間競争でも同じようなことが続いている。といった趣旨だった。

 少し間が空いてしまったが、この話の続きを書いてみたい。

 人類にコミュニケーション(適応)能力が高度に発達する以前は、動植物はどのように環境変化に適応していたのだろうか?動物でいえば「本能」に従って、環境変化に対応していたのだろうと考えられる。草食動物は毒のあるなしを、また栄養価が高いか低いかを本能的に判断する。狩りをする肉食動物は、狼のようにグループで狩りをすることが成功確率を高めることを本能的に知っている。それぞれの種は同様の行動をとるのである。
つまり、生物学的にDNAレベルで記憶しているということだろう。これは植物においても同様だ。朝顔のような蔓(つる)科の植物の蔦(つた)の巻く向きが決まっているのは、DNAの塩基配列がそう決められているからだ。
類人猿と人類を除く動植物は、環境への適応を含む行動がほぼすべてDNAで決められているように見える。
ここでほぼと言ったのは、世代交代していく際にDNAにバラツキが生じるからである。
 ここでちょっと興味深い話をしたい。

しろつめ草の開花時期の秘密

 20年近く前、このような話を、京都に本社をおくある企業の広報誌で読んだ。記憶によれば、それは河川敷の土手などでよく目にする、しろつめ草の開花時期を解説したものだった。しろつめ草の洋名はクローバー。このほうがピンとくる人もいるだろう。よつばのクローバーを見つけた時はちょっと幸せな気分になる。もっとないかと探すと、見つからないのはなぜだろうか。
 さて、しろつめ草は春遅くに開花する。関東では4月下旬くらいから花をつける。
しかし、よくよく観察すると群落の中に、わずかだが少しばかり早く開花するヤツがいる。そして、6月から7月にかけて、土手一面に咲き誇っているように見える。さらにである、その後に早く開花したのと同様に遅咲きのしろつめ草があるのだという。
 これが何を意味するのかといえば、急激な気候変化によって、つまり温かくならない低温の年でも、種を残すことができるように、また熱い春になっても、一部だけでも子孫を残すことができるようになっているそうである。寒冷対応の早咲きのしろつめ草だけを選んで交配させていっても、ばらついてくるという。DNAに「バラツキ」がもともと仕組まれているというものであった。ここまで来ると、しろつめ草も立派に地球温暖化へのリスク管理してるのだと感心する。
 だがしかしである、植物の環境要因である気候や土壌などは規則性が高く、プログラム化しやすい。一方、動物となると各段に複雑なしかも多くの要因への適応をせまられる。とても、すべてをDNAに前もって組み込んでおくという訳にはいかない。動物は餌の捕獲などを継続して行うために、それぞれの個体が判断をしていかないと生きていけない。小脳、大脳を発達させたのである。そして、その脳に「本能」として大事な生きる術が組み込まれていった訳である。

人間は本能の限界を超えて適応しようとした

ところが、これからは私の推測だが、人間(ホモ・サピエンス)はどうやら、行動がワンパターンになりがちな「本能」の限界を超えて、言い方を変えると、DNAのプログラムから解放されて生きることになったのではないだろうか。様々なしかも予測のできない環境変化に、自由自在、融通無碍に対応していくために。
人間という「種」としてではなくて、ひとりひとりが夫々(それぞれ)に変化に対応していくことになったのではないだろうか。当然、少数でもいいとなれば格段に生存の可能性は高くなる。もちろん繁殖力が高いという前提が必要だが。
その結果、個人個人がばらばらな動きをする可能性も大きくなったことは当然といえば当然だろう。

コミュニケーションは個と個をつなぐもの

 この本能の限界を超えてバラバラとなりがちな人間をつなぎとめていく仕組みが、言語・コミュニケーション機能だと考えると合理的だ。
「本能」だけで生きていくことができなくなったということは、考えて判断し、難解なことであれば時間をかけて、時には人の寿命以上の時間を費やして考え、思考作業をしていったということである。その過程で、仲間同士であることの確認、知識の伝達、親から子へ口承口伝し、文字を発明発展させ、知識を蓄積し、知恵として継承することができるようになったのであろう。こうして、ますます変化への対応・適応力を身につけたと考えられる。さらには、個人や家族の単位では得られないような大きな成果を得るために、コミュニケーションを効率よく行えるよう集団における役割分担や組織が生まれて生きたのだと考えると、いろいろ納得できる。結果的に、第二のDNAともいうべき、社会性という能力を身につけたのだろう。

神による二重保険

 現代ビジネス風には、DNAと本能の限界を超えての個人(個体)での適応追求と能力発揮、及びバラバラになった個人個人をつなぎ組織集団として生存追及していくためのコミュニケーション能力の発達は、二重の意味で我々の変化への対応(適応)の可能性を担保してくれる「神による保険」なのではないだろうか。

まとめ

 コミュニケーション能力は変化への対応、適応の道具(機能)であるとともに、変化適応時のリスクを下げる道具(機能)でもある。神が人に最後に与えてくれた能力を、我々は十分に使いこなせていないのではと痛切に感じる。
特に、コミュニケーションでできることと、できないことの区別がついていないとしか考えようのないことが多々あるビジネス事象は看過できない。数万年では、まだ経験不足なのかもしれない。
 しかしである、今我々の目の前にはネットワーク&Web技術の猛烈な進展があり、様々なコミュニケーション領域のアプリケーションやツールが提供され始めている。Web2.0が叫ばれるようになって、個人に起因するコミュニケーション上の欠点をカバーする機能や技術が登場してきている。光明が見えてきたような気がするのは、私だけではないハズだろう。

Patina

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