栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

« 2007年9月14日

2007年9月17日の投稿

2007年9月18日 »

CDを新聞のオマケとして無料配付したり等々、ネット時代の著作権制度には前向きだと思われていた印象があったPrinceですが、意外にもYouTubeを提訴するという行動に出ました(参考ニュース)。

Princeサイドの弁護士の意見が公式サイトに出ています。著作権者の権利を守れという正論が書いてあるだけなので、特に意見したいところはありません。一方、容易に予測されることですが、欧米のネット世論の感情的反発は大きいように思えます。Digg.comには「Princeは『音楽を取り戻す』と言っているが、取り戻すべきは自分のキャリアじゃないのか」なんて辛辣な意見が書かれています。

正しいか間違ってるかという議論をすれば、確かにPrinceの(Princeの弁護士の)主張は正しいという他はないのですが、(Princeにとっての)損得という点ではどうなんでしょうか?YouTubeに自分の著作物を載せさせないことにより期待される正規コンテンツ売り上げ増のメリットに対して、YouTubeに載らないことによるビジビリティ(特に、Princeなんて懐メロとしか思ってないような若年層へのビジビリティ)低下とネット世論からの感情的反発によるデメリットを比較すると、デメリットの方が大きいのではないでしょうか?

CDやDVDのイメージをそのまんまBitTorrentで配付したりするのは論外として、YouTubeについてはもっと柔軟な姿勢を取った方が得だったと思います。まずは、音楽ファンに対して著作権を侵害するアップロードを控えるようお願いする(その代償として、公式サイトでのコンテンツを充実させる必要があるでしょう)、また、YouTubeに対してアーティストへの(Princeのみではなく、アーティスト全体への)収益還元を要求するなどの手段を最初に取っていれば、好感度アップで結果的に得をしたと思います。

弁護士にうまく言いくるめられた、あるいは、CDオマケ配付でレコード業界との関係が悪化したのでバーター的にこういう行動を取らざるを得なかったとでも考えたいところです。

ところで、冒頭の参照記事の最後の部分、

レコード業界でプリンスは「思惑ビジネス」と呼ばれており、

ちょっと意味がわかりませんでしたが、ロイター記事の原文は、

He has referred to the record industry as "the speculation business"

なので、「プリンスはレコード業界のことを『投機ビジネス』と呼んでおり」が正しいですね(元訳は受動態と読み間違えてます)。プリンスは、レコード業界がアーティストを投資対象としてしか見ていないと批判していたということでしょう。

追記: Prince(の弁護士)は、「YouTubeは、幼児ポルノは規制できてるのに、著作権違反は規制できないのはおかしい」と言っているようなので、YouTubeは今後、Princeの著作物は幼児ポルノと同じ扱いにして発見したら即削除、投稿者情報を警察に通報という運用にしてみたらどうでしょうか?それによりPrinceの作品の今後の売り上げがどうなっていくかは、実験としてなかなか興味があります。

栗原 潔

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栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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