栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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« 2007年9月5日

2007年9月6日の投稿

2007年9月7日 »

iPod新製品群が出ましたね。自分的にはiPod Classicの160GBバージョンに興味がありますが、世間的な関心が強いのは、やはり全面液晶のiPod touch(iPhoneの電話抜き)なんでしょうか。

iPodに限らず、電子機器のユーザー・インターフェースがどんどん液晶画面ベースになっているのは一般的動向です。ここで、こういう画面のデザインを知財としてどう守るかというお話しがあります。

UIの画面設計は一般に著作物として守られますが、実際に権利行使するとなるととかなりの独創性がないと認められない可能性大です。特許の場合は、UIの実装そのものに独創的アイデアがないと、そもそも特許権は取得できません(デザインが独創的なだけではダメです)。

もうひとつの保護手段として意匠権による保護があります。意匠権とは、工業デザインを保護するための権利です。特許権と同様に、特許庁にデザイン(意匠)を出願して、登録査定になれば、20年間独占的権利を得られます。これも特許権と同様に、新規性・進歩性(創作非容易性)が審査されます。もともと、意匠は物品(要するにハード)のデザインの保護を目的としていたので、ソフトの画面は保護されなかったのですが、電子機器(たとえば、携帯電話)のUIが液晶で実現されていると、これは内蔵ソフトの画面というよりは、携帯電話のデザインと言った方が妥当なので、運用上は液晶画面のデザインも保護されてきました。

そして、今年の4月から施行された意匠法改正により、液晶等の画面により実現される物品の工業デザインも正式に意匠法での保護対象になりました。そういうことなので、今までは意匠権とはあまり縁のなかった組み込み系ソフトの画面デザイナーの方も意匠権を気にしておいた方がよい状況になっています(たとえば、他者の意匠権を不用意に侵害することがないように注意する必要があります)。

ところで、テックバイザー的には今まで意匠関係の仕事は受けてません(受けられません)でした。工業デザインに関する当業者としての知識がある程度ないと相談にも乗れませんので。しかし、こういう電子機器の画面デザインということであれば、一応当業者としての知識はありますので、こういうパターンについてのみはご相談に乗れるかと思います。

繰り返しますが、意匠権で保護されるのは、物品としての機能を提供するための画面のみです。ソフトウェアの画面が保護されるわけではありません。携帯電話の例で言えば、携帯電話を使うための画面(ダイヤル画面、メニュー画面等)は保護の対象になりますが、携帯電話のブラウザで表示されるWebサイトの画面やダウンロード・アプリの画面のデザインは保護されません(ちょっとこの辺グレーゾーンがありそうですが)。

栗原 潔

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栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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