栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

« 2007年6月18日

2007年6月25日の投稿

2007年6月28日 »

だいぶ前の話ではありますが、国税庁が実施予定の差し押さえ品のネット・オークションに対して、文化庁が著作権法違反ではと指摘したというニュースがありました(参照記事)。ネット・オークションを行なうためにWebサイトに作品の画像を乗せるのが何で著作権法違反になるのかと思い人も多いかもしれませんが、確かに、現行の著作権法をストレートに解釈すれば、著作権者の許諾がなければ違法となってしまいます(もちろん、著作権切れの作品は除きます)。

文化庁の指摘に対して、国税庁側が「権利者の不利益ではない」と応えているのも興味深く感じました。これは、「フェアユース(公正利用)」ぽい抗弁です。以前書いたように、日本の著作権制度では基本的にフェアユースの考え方はありません。「誰も損はしてない」と言っても、民法上の損害賠償を免れる意味はあるかもしれませんが、著作権法上の差止請求を免れることは原則的にできません。とは言え、「誰も損していない(というよりも公共の利益になっている)のだから著作権侵害になるのはおかしいじゃないか」というのは、通常の人であれば常識的に考えることですから、国税庁側がこう答えるのも無理はありません。

米国であれば、この手の問題はすべて「フェアユース」か否かにより判断されることになるでしょうし、ネットオークションのために作品の写真をWebに掲載することは「フェアユース」である(ゆえに著作権侵害ではない)と判断される可能性が高いと思います。

ついでに言っておくと、この前ちょっと書いたlala.comのようなサービスに対して、レコード会社が権利侵害であると物言いを付けたとするならば、もちろん、DMCAに準拠しているかのような判断は行なわれるでしょうが、最終的には「フェアユース」かどうかで決着されることになるでしょう。自分が持ってるCDをどこで聴こうがユーザーの自由であり、レコード会社の利益は害していない、ゆえに公正な利用であると裁判所が判断すれば著作権侵害ではないということになります。日本のように、「この行為の主体はxxxだから第30条に該当せず違法」という杓子定規な解釈を行なうやり方よりは現状に合致していると思います(杓子定規な解釈を行なわざるを得ない日本の制度が問題だと言っているのであり、解釈を行なった判事を非難しているわけではありません、念のため)。

池田信夫先生が言われた「日本の著作権制度は世界一厳重」はちょっと言い過ぎかと思いますが、少なくとも「日本の著作権制度は米国と比較してはるかに融通が利かない」とは言ってもよいかもしれません。

栗原 潔

« 2007年6月18日

2007年6月25日の投稿

2007年6月28日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
kurikiyo
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ