栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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2006年9月30日の投稿

2006年10月1日 »

日米欧の特許当局が、早く出願した企業や個人に特許を与える「先願主義」で統一することで大筋合意したという記事

特許制度の原則は早い者勝ちなわけですが、この「早い者」の判断において、一番最初出願した人を優先する「先願主義」と、一番最初に発明した人を優先する「先発明主義」というのがあります。一見、先発明主義の方が合理的なようですが、発明をした日時の証明が大変だったり、いったん発明が特許化された後になって、「実はオレの方が先に発明してた」という人が現れたりして、現実の運用は結構ややこしくなりがちです。

ということで、現在、ほぼすべての国が先願主義を採用しており、依然として先発明主義を採用しているのは米国だけとなっています。米国だけ制度がちがうのはいろいろと問題なので、日本を始めとする諸国が米国も先願主義に移行するよう長い間要請してきてました。これがようやく現実化しそうということです。ただ、米国が先願主義に移行するというのは、今までも、話としては毎年のように出てくるんですが、結局立ち消えになってしまってました。先に、「先発明主義はややこしい」と書きましたが、「ややこしい」ことで得をする人たちがいるということなんでしょうか?今度こそは実現するということかもしれませんが。

で、冒頭の読売新聞の記事ですが、「中長期的には~『世界特許』へ道を開く契機ともなる」と書いてあります。たまに、「世界特許取得」なんて書いてあるWebサイトを見ますが、現時点では、「世界特許」は概念としてはありますが制度としてはありません。ということで、厳密に言えば「世界特許取得」は虚偽表示と思われます。ついでに言うと国際特許という制度もありません。

国際(特許)出願(別名PCT出願)という制度ならあります。複数国に対する出願をいっぺんにまとめてできる制度です。とりあえず出願日を確定して、先願の地位を確立してから、ゆっくり翻訳等の移行作業ができるので便利です(結構なお金がかかりますが)。大企業が重要特許を出願するときは、国際出願することが多いです。ちなみに、Googleが最近出願している特許も国際出願されてるものが多いです。

国際出願は、各国への出願をまとめてできるというだけで、特許権の取得の話しはまた別です。つまり、同じ特許出願でも米国では登録査定になり、日本では拒絶査定になるということが十分あり得ます。特許権の有効範囲は基本的にその特許権が成立した国の中だけなので、日本にサーバを置いて世界中にサービスを提供しているような場合、そのサービスに関する特許が日本以外の国で成立していると面倒なことになります。

で、世界特許という概念は、特許出願の審査まで一本化しようという発想です。たとえば、米国で特許が成立すれば、それ以外の国でも成立したことにしようということです。一見、理想的(特にネットの世界では)ですが、実際には国によって特許審査のポリシーが違うので実現は非常に難しいと思われます。現時点で世界特許を施行したならば、(特に、ソフトウェア特許分野での)審査が緩い米国の特許により、日本や欧州の企業が攻撃されるケースが増えて大変なことになってしまうと思われます。ということで、あくまでも世界特許は「中長期的」なお話しということなわけです。

栗原 潔

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栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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