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自動車が売れない理由に関する私的考察3~【番外編】先日のエントリーへの補足および未だに感じる「電気自動車による市場参入」への違和感

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別に何か特別な感情がある訳では無いのですが、11月の第二週目の月曜日は去年も一昨年も「自動車が売れない理由に関する私的考察」として独自の観点から勝手気ままに書かせて頂いてました。

2007年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察~それは「デザイン」と「塗料」
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2007/11/1_514b.html

2008年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察2~自動車メーカー自ら”単なる移動手段”として商品づくりをしてきたから
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2008/11/post-e85a.html

こうなるとですね、昔聞いたことのある、ジョギングを始めた人が逆にジョギングを止めることに恐怖を覚えるように、自分も続けなくてはいけない、という(誰に対してだかわかりませんが)恐怖心もありまして、また書いてみようか、と。

一方で自動車ネタは、先日書いた「みんな簡単に自動車製造に参入できるように言ってくれるが、それは、自作でPCが組み立てられたらサーバーメーカーになれる、っていうのと同じでは?」が予想以上に皆さんに見て頂けたようなので(自分はログ解析を一切していないので、それこそオルタナティブ・ブログのアクセストップ10でしか判断できないのですが)、結果としてこのエントリーに関する延長線のものを書こうか、とも思ったのですが、売れる・売れない、とは少し次元の違う話になりそうなのでそれはまた今度、ということで。

・・・と土曜日の段階では仕込みをしていたのですが、やっぱりもやもやしてきたので、先日のエントリーの補足も含めて書いてみよう、と思います。

まず始めに。

自分の意見として、日本の自動車メーカーが世界中のどの自動車メーカーよりも技術的に優位に立っている、というつもりは毛頭ありません。また、未来永劫において、色んな企業が「電気自動車」という市場について参入してくる可能性を否定するつもりもありません。

ただ、化石燃料か電気か、はたまた別のエネルギー利用であろうと、自動車業界なんて極めて面倒な、かつ利益効率の悪い商売に乗り出す必要は無いんじゃないの?とは思っていますが。

自分の居る業界を卑下して言う訳ではありませんが、かつて、自動車の所有や運転することが人々のステータスでもあった頃もあったでしょう。その頃であれば「自動車を商売にしている」側もステータスがあったかもしれません。その頃に比べて時代は変わりました。そういった意味で全く関連の無い企業からして参入する旨みがどうしてあるのだろうか?と。

もちろん、日本市場において、と海外市場においてでは考え方は異なりますが。

ただ、どちらの市場においてもまず共通であることは、物が大きいから、物流効率が悪いということでしょう。

・宅配便等に混載できない

・倉庫保管しておくにも場所が取られる

・そもそも重量が重いので、積むにも専用の仕組み(例えば専用コンテナや傾斜板(ローカル用語では”バタ”とか言ったりしますが))が必要

この段階で、ネット通販が大きく台頭した時の、物流費を運送会社と交渉して云々といった費用削減は図れない訳です。家電量販店でカタログ販売するのでしょうか?すると納車は店頭で行うのでしょうか?その場合、お店に配送されてから納車を行うまでの期間は格納するスペースが必要になります。お客様の元へ配送するのでしょうか?その場合、専用の配送手段が必要となります。自前で持つのでしょうか?他社へ委託するのでしょうか?どのみちその費用は利益を押し下げる要因となります。

携帯電話の本体が0円で販売されていた頃、その前提条件として、利用契約を数ヶ月以上行うこと、といった、未実現利益を先に担保させることによりキャリアがキャッシュバックする、というビジネスモデルが存在していました。例えば電気自動車で当てはめるとどうでしょうか?”その”電気を供給してもらう先が”専用のキャリア”である、ということであれば成り立つかもしれません。でも、そんなことって現実的でしょうか?

自分は過去脈々と担当してきたのが日本国内市場がメインだったので、日本国内市場について語らせて下さい。

小林さんのところでもコメントで触れさせて頂きましたが、現状の道交法上で言えば、近距離で乗る目的であるかどうかは問わず、あくまで排気量や用途といったところで自動車は法律上の制限を受けます。

その形状がいかなる形であろうと、事前の申請、後の届出であろうと、一部の地域を除いて自動車は車庫を確保する必要があります。電気自動車だから、といって法律の適用を受けない特別なルールができる、とすれば別ですが。しかし、前述で触れた場所を取る、ということには代わり無い訳です。何より、人が乗ることができるスペースが必要な訳ですから。

小林さんが書かれていたように、「安全面等での短所を気にすることはなく」ということがあった、としても、公道を走る以上、利用者自身が「自己責任」で了解していた、としても、他に走っている車両はもちろん、歩行者、自転車等、通行者は様々な形態で存在している中で、それ相応の安全を確保する必要があります。他の自動車と衝突しても単なる物損で済む所が、利用者自身が「自己責任」で多少安全基準が低くても平気と認識していた車に、不慮の事故が発生した場合、不幸になるのは了解していた本人の家族だけではありません。

そういったことも想定すると、事故率等が変わってきます。損害保険会社もその事故率を認識して保険の料率を設定することになる。車両本体は安いけれども、任意保険は極端に高い金額になる、結果として、保険に入らない、当該自動車と事故を起こしてしまった人は、自らが被害である立場であっても泣き寝入りをせざるを得ないケースも出てくるかもしれません。

こういったことを防ぐためには、結局「専用道」を設ける、といった行政側の対応が必要です。場合によっては、それがETCという手段を執るのか、昔ながらの「関所」方式を執るのか、どのみち民間側の対応だけでは何ともならない状況が出てきます。その時、そういった企業はロビー活動を熱心に行うのでしょうか?献金をばらまくのでしょうか?

道路交通法上の話でもう一つ触れると、全国に販売網を持つのか?ある特定の地域だけで販売するのか?という点が結構効いてきます。というのは、現状、国内の自動車メーカーが自動車メーカーたる所以であるところの一つに「型式認定」が取れるから、新規登録(軽自動車の場合は新規届出)の際に自動車の現物を運輸支局(軽自動車の場合は全軽協の窓口・以下軽自動車のパターンは省略させていただきます)に持ち込むのではなく書類申請で済むからその登録手続きの手間を少なくある一定の数量販売ができる、というところがあります。

これはもう一つ言えば、ある一定の数量販売をすることを担保することで、「型式認定」が取れるようになる条件が得られる、という裏腹もあります。

この型式認定を取る・取らない、という点は、かつて光岡自動車さんが「ゼロワン」を発売するにあたって、どれだけ努力をされたか、という話題でご存知の方も多いかもしれません。

型式認定を取ることによって得られる書類申請だけで済む状態のことを(非常にざっくり言ってしまうと)「完成検査終了」と言います。完成検査終了証(かつては紙面でしたが、現在は電子化されています)があることにより、全国各地の運輸支局では書類申請だけで登録手続きが済む訳ですが、この完成検査終了証にも期限があり、現在は9ヵ月がその期限です。9ヵ月を超えると、現物持ち込みでの検査が必要になります。すなわち、デッドストックを抱えれば、その検査自身の費用はお客様に転嫁できるものでは無いので、また利益の圧縮要因となります。輸入車の場合は保安基準に適合できているかどうか?という所を見られます。セグウェイがなかなか公道で走れるようにならない所にもそのハードルの高さを示している、と思います。

そうそう、登録行為そのものも、使用の本拠たる住所の位置する運輸支局への申請が必要であり、またその運輸支局等の窓口は土日祝日お休みです。かつてクイックというネット通販自動車業者が存在していました。残念ながらその企業の最期は悲しいものでしたが。その業者の場合は、ゼロ、という旧日産陸送から独立した自動車運搬業者に配送だけではなく登録行為も業務委託していましたが、その関係もあり、全国配送する、と言っても平日じゃないとダメ、というしばりがあったようで、その点もネット上で不満として書かれていたこともありました。

登録車の場合は登録行為そのものの前に車庫証明書類を取得しておく必要があります。

また、プレート№を取り付けるためには運輸支局の一角に設けられた封印所、もしくは認可を受けた封印権を持つ事業者にて封印をしてもらう必要があります。またこれら認可は各地それぞれの運輸支局からもらう必要があります。

よく、価格が下がれば自動車を買う人が増えるんじゃ無い?的な話を聞くこともありますが、個人的には当初のイニシャルがいくら下がっても、買わない人は買わない、と思っています。むしろランニングが下がると別になるとは思いますが。そしてそのランニングの大半を占めるのが、税金や国自身が定めたルールです。自動車税、重量税、自賠責保険、車検費用、駐車場代、ガソリンに含めたガソリン税・・・。電気自動車は電気なんだから揮発油税掛からないでしょ?と言われるかもしれません。そのとおり。でも皆さん目の当たりにしてきたでは無いですか。ビールの酒税を逃れるために発泡酒ができ、そうすると麦芽の配合によって税率が変わり、今度は第三のビールが出てくると、それに対する対応をどうしようか?という話が出てきたり、と、税金の類は極論言えば、国が「こう」と言えば、そう変わってしまうものです。電気自動車が台頭してくる、とすれば、そこに合わせたまた税収の方法が取り沙汰されるでしょう。そう、つい最近も無音状態になる電気自動車に音が出る装置を取り付けることを義務付ける、というルールが新たに生まれてきたように。電気自動車なんて、十数年も前からダイハツ工業さんを初めとして商用車も含めて販売されてきたし、その際でも無音状態が危ない状態がある、というのは言われてきていたのに、数量的メジャーでは無かったからそれが取り上げられなかっただけ。つまりメジャーになり得る傾向があれば、ルールは変えられてしまうのです、ビジネス側にとって必ずしも有利では無い方向に。

今までは、主として既存ではない、自動車と関連の無い企業が日本国内市場に入ってくる場合を想定しましたが、逆パターンで言えばどうでしょうか?

そう、日本の自動車メーカーが新興国に参入するケースを想定してみましょう。

これはこれで正直かなり厳しい。

既になまじブランド名を売ってしまっている会社であればある程、お客様からある程度の品質と性能を期待される訳です。そんな中、例えば10数万円の自動車にて、そのブランドに値する内容の商品がデリバリーできるかどうか?

日本でいくら有名であっても、世界で有名とは限らないのだから、それはその極で割り切って、「そんなもんだ」というレベルの製品で勝負すれば?という意見もあるかもしれません。

今度は逆にネット社会であるし、その極だけ、安かろう・悪かろう、製品を出していたとしたら、お客様自身が「この会社は私達をなめてかかっている」と逆にボイコットされることもあるかもしれません。

別のブランドで提供しますか?そうすると、今度は単に価格だけの勝負、資金という意味での体力勝負になってしまうかもしれません。

そういった意味では、既存の自動車会社においても、電気だなんだを問わず自動車市場というのは厳しい。そんな中で、「電気」という新たな駆動方式ということだけで自動車市場が一気に変化する、という論調に違和感を感じている訳です。

ふーっ。

ついつい勢いに任せて書いてしまいましたが、もう一度。

自分が言いたかったことは、電気自動車という新たな市場が存在し(既存の自動車業界のパラダイムシフトが起こり)得る可能性は否定しないが、そんな簡単な話では無いし、そもそも事業として成り立つ(そこに利益を得られる)可能性を感じられる企業ってさて皆が喧伝する程あるのだろうか?という所に非常に疑問を感じているだけです。

最後にもう一度。

自動車は非常に便利です。一方で、その利用者が意識する・しないを別にして、人殺しの凶器となり得る存在でもあります。そこが他の商品との大きな違いだと思っています。

追伸:
電気自動車において、航続距離の問題は、電池の蓄電性能以外に、例えば、発電所から都市部までに送電される際に多少なりともエネルギーが失われるという話を聞いたことがありますが、その送電線自身から直接無線で取得できるような技術が実用化されれば(実験段階では宇宙からの無線送電に成功した、という話を聞いたことがありますが)大きく変わるかもしれません。ただ、自動車が人を殺める可能性があり、場所を取るものであることに変わりありませんが。

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