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7月7日、晴れ

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映画を鑑賞するのが嫌いな訳じゃない。しかしながら、有料で映画館で見るのは年に一回あるかないかという自分は、映画好きとはとても言えないのだと思う。見放題系のサブスクリプションも、送料無料のために入っているAmazonプライムのアカウントしかない。普段生活している部屋にはBSもCSもない。

そんな自分が一度映画館に行って鑑賞し、その後、ストーリーがわかっているのにもう一度映画館に行き鑑賞し、その後も思いついたら見てしまうのが、「7月7日、晴れ」という映画だ。

「7月7日、晴れ」というタイトルは、映画よりも、この映画のテーマソングであるDreams Come Trueの曲の方が有名なんじゃないか、と思う。あくまで自分の感覚だけど。

自分がこの映画を見に行くことになったきっかけも、当時Dreams Come Trueのファンだった恋人(後の妻)に誘われたからに過ぎなかった。当時1996年5月。我が家にはインターネットはまだ無かった。誘われていくぐらいだから何の情報も事前に調べず見に行った。まぁ、付き合いで、という感じ。

不覚にもはまってしまった。一回目見た際も泣いて。二回目、今度は独りで行ってまた泣く、という。

本エントリーにおいて「この映画が素晴らしくおススメだ」と書くつもりはない。映画を創った側の方にはとても失礼な話だけど。ただ、自分には刺さる要素がいっぱいあって結果として未だに見ている。ビデオを含めたこの映画の通算鑑賞数で言えば、自分が世界で一番なんじゃないか、と思っている。一回目を見たのは、彼女の住む神戸、三宮の映画館。二回目を見たのは、自分が独りで暮らしていた岡山の映画館。よく覚えている。

1996年5月当時、自分は自動車メーカーからの出向で、岡山で自動車ディーラーの営業スタッフをやっていた。出向する前、その自動車メーカーでは地味な部署で働いていたと言えると思う。当時の上司や先輩には大変失礼な話で恐縮だが、一般的に自動車メーカーにおける花形の部署と世間が感じるのは、商品企画や宣伝、広報とかだろうと思う。

映画の主人公が勤めるのは「パシフィック自動車」という自動車メーカー。え?自動車メーカーに勤める人が主人公なの?というのも映画に対してぐっと入り込んだきっかけではあるのだが、その主人公が配属している部署名は「車両業務部」。宣伝、広報、営業、経理といった一般的な部署名ではなく"車両業務部"という名称がその当時自分が所属していた自動車メーカーで言えば相当リアルに感じた次第。全体のストーリーそのものは「そんなこと、あり得ないだろ」という所があっても、その名称にまずやられた。

また、その「パシフィック自動車」の新型車が映画上に登場してくるのだけど、それがまさに映画と同時期に発売された某社の本当の新型車。新型車は自動車メーカーからすれば超機密事項。当該モデルは公開前年の東京モーターショーに参考出品はされてはいたのだが、実際、映画制作に利用されるとなればそれなりに長期間貸し出されると思われるし、出演者、制作スタッフを含めて多くの人の目に触れるはず。制作側、自動車メーカー側、どちらが声掛けをしたか、自分は知る由も無いがその自動車メーカー側の度量にも驚かされた。

そして何より、縁もゆかりもない地で初めての独り暮らしをし自動車ディーラーの営業スタッフを担い、数少ない成功体験を遥かに上回る多くの失敗をしている中で、もう自動車業界に関わるのを辞めようとか思っていた中でのこの映画。当時、業務内容が違い過ぎて主人公の業務そのものに感情移入することはなかったものの、同じ世代ぐらいである中、がむしゃらにやるしかないよなぁ、と主人公の姿に自分を重ねた。

25年前の映画だ。今となっては変わってしまったことが多いにある。二輪車での高速道路二人乗りはある一定の要件によってできるようになった。携帯電話は当たり前。友人との会話に固定電話に掛けたり、留守番電話機能に自分の案内メッセージを入れたり、公衆電話から電話を掛けることもほとんど無くなっただろう。ラジオ放送は車などに乗っている時を除き、電波が受信できる機器で聞くのではなく、スマホのアプリで聞く人の方が多いのではないだろうか。

一方で映画のシーンで出てくる、車で出掛けアウトドアやキャンプを楽しみ、そして普段は仲間と馴染みの店で酒を飲んで語り合う、それは基本的には今も変わらない光景・・・だったはずだが、新型コロナウイルス禍においてはそれすらかなわない、かなえられない人々も多く居る、と思う。時代を超えても変わらないシーンのはずだったが、今の環境ではそれは憧れになってしまった。

映画の出演者で言えば脇を固める布陣が良い。西村雅彦さんや小木茂光さん、升毅さんなど。甲本雅裕さんや麻生久美子さんなども。甲本雅裕さんは、たぶん一瞬出てくるあの人。麻生久美子さんは「この人がそうなのかなぁ」ぐらいしか自分はわからないけど。今は政治家になった方も良い味出しています。

そして、25年経った今も、自分は未だ自動車業界に居る。思えば遠くへ来たもんだ。

つい先日の大雨により、大変残念な甚大な被害が発生してしまった。被災された方に心よりお見舞い申し上げます。

7月7日の今日、晴れますように。

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