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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

トランスジェンダーにフリーランスのITライターは可能か?

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2年ちょっとでずいぶん変わりました

お久しぶりです。と言っても覚えている方はほとんどいないと思いますが、今から2年とちょっと前にこんな記事を投稿しました。それ以来です。

https://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2020/07/dx.html

誠ブログがオルタナティブ・ブログに吸収合併される前は、誠ブログのほうに大量に書いておりました。森川滋之改め森川ミユキと申します。

当時のプロフィール写真はこんなのでした。

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今はこうです。

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2年ちょっとで人間って変わるものですね。

引き続き同じテーマで書きますが、今回はちょっとだけ違う趣きで

久しぶりにオルタナティブ・ブログに書こうと思ったのは、その辺の顛末を書きたくなったからだったんですね。それも新しいブログで。

ところが管理人さんにその旨お願いしたところ、「現在、新規のブログは受け付けておりません、既存のブログに書くこともテーマが変わるようでしたら、新しいブログを立ち上げるのと一緒ということで認められません」とつれないお返事を頂戴したのでした。

まあ2年ちょっともほったらかしにして、自分の都合でまた書きたくなったのでわがまま言っているわけです。我ながらロクでもないと思います。

あと管理人さんの名誉のために付け加えると、彼女とは誠ブログの頃からの知り合いで、いつもとても親切にしていただいてきたのでした。だから彼女に対して思うところは何もありません。いただいたお返事はもっと愛のあるものでしたが、内容を忖度なしに要約すると上の通りになるだけのことです。

ということで、今まで通り「ビジネスライターを目指す方、あるいは既になっている方に役立つことを書く」という趣旨で、引き続き書いていきたいと思っております。

で、今回のテーマである「トランスジェンダーにフリーランスのITライターは可能か?」という話も、この趣旨から逸脱はしていないと思うのです。

誤解のないように先に書いておくと、このブログを別にトランスジェンダーライターの生き方みたいなものにしようと思っているわけではありません。ビジネスライター(IT系ではありますが)にとって役に立ちそうな話のストックはいくらでもあるわけで、今後はそちらを中心に書こうと思っています。

ただ、まあ、こちらに書くのも久しぶりなので、なんか自己紹介的な内容で書きたかったのです。なおかつトランスジェンダーでフリーランスのお仕事をしたい人もたくさんいると思うのです。だから私の書くことが参考になる方が絶対にいると思ったのでした。

なので今回限りにしようと思いますが(ただリクエストがあれば何度でもやります!)、こちらにトランスジェンダーネタを書くことにした次第です。

性別適合をするつもりはありませんが「女」として暮らしています

さて私の現状ですが、普段から女性の格好で暮らしております。

男性の服としては、夏と冬のスーツとブレザーを1着ずつと略礼服を残してはいますが(それと付随するワイシャツと靴下、ベルトなども。でも着る予定は全くありません)、それ以外は全て捨てました。アウターもインナーもレディースで過ごしております。

女性装でどこにでも参ります。お買い物はもちろん、市役所も銀行もです。取材もそうです。さすがに病院はまずいかなと思いましたが(事務的なことの邪魔になりそうで)、すんなり受け入れてもらえました。

お化粧については、伴侶さんとの取り決めみたいなものがあって休日は基本的にしないお約束でした(何かイベントがあればします)。逆にいえば平日はするわけですが、最初はそれがうれしかったわけです。

しかしお化粧が日常的になるとむしろ面倒という感覚が湧いてくるわけで、しなくて住む日はあまりしなくなりました(これも一つの「女性化」と思います)。というのもスッピンでも女みたいになってきたからです(マスク着用というのも大きいですが)。以前はスッピンで女装して外出などできなかったのですが、今や平気になってしまいました。

ちなみにこんな感じです。

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トランスジェンダーではありますが、性別違和感が強いわけではありません。性別適合手術を受けるつもりは今のところありませんし、法的に性別を変えるつもりもありません。

なぜなら私は結婚しているのですが、伴侶さんと離婚するつもりはまったくないからです(日本は同性婚が認められていませんので、性別変更は即離婚となります。離婚すると伴侶さんの死を看取れなくなる、逆に看取ってもらえなくなる可能性が高いということです。その他たくさんの不都合があります)。

また不本意な体ではあるけれども、親からいただいたものです。むやみに傷つける気にはなりません。性別適合手術はピアスを開けたり、二重まぶたにするのとはレベルが違いますが、ある意味似たところもあります。それは体に傷をつけるということで、たとえば造膣手術をしたとしたら、それは本質的には体に穴を開けるということです。

要するに体を傷つけることなのですが、生物の体は傷を塞ごうとします。ピアスの穴を放っておけば塞がるのと同じで、人工膣も塞がろうとします。傷口が塞がらないための努力を一生しようと私は思いません(もちろんそれでも膣を造ることを望む人を否定するものではありません。どこまで自分の肉体を呪うかというレベルの違いの問題です)。

ということで、トランスジェンダーには細かいグラデーションがありますが、私は体は男性で構いません。女性用のおトイレやお風呂には入れないですし、女子更衣室も使えませんが、それで文句はありません。「体は男だけど、心は女だ」と言い張る気もありません。ですが「気持ちは女」です(この微妙な違いがわかるでしょうか)。

以上で私のスタンスはだいたいお分かりいただけかと思います。

まあ世の中にはTERF(私が説明するとどうしても憎しみがこもるので、ググってください)のような方々もいらっしゃるようですが、実際には無視してくれる優しさをもっている方が大半です。それどころか受け入れてくださる男女も大勢いらっしゃいます。

お仕事については、カミングアウトしても問題ありませんでした

で、事実としてどんな感じかと言いますと、今回のテーマである「トランスジェンダーにフリーランスのITライターは可能か?」については、「可能です」と断言できます。

またしても長くなりそうですが、そもそも私がトランスジェンダーであることを隠さず生きるようにした経緯を、できるだけ簡単に書きたいと思います。

私は小学校6年生のときに女装の楽しさに目覚めました。それ以前にもそうなる経緯はありました。またそれ以後も紆余曲折があり、最長7年間の女装しない期間があったりもしましたが、ずっと自分には女性性があると認識してきました。

1990年代の終わりから2000年代の中盤にかけては、性別適合を考えた時期もあり、カウンセリングに通ったこともありましたが、どちらかというと経済的理由で断念しました。一方で手術することに対する違和感がどこかにあったのも踏み切れない理由でした。

それが2018年ぐらいからまた自分の性に関する強い違和感と、このままでいいのかという焦燥感が湧いてくるようになったのです。私は1963年生まれですので、55歳のときの話です。いわゆる「アラ還」と呼ばれる年齢になり、人生の終わりに向けてセカンドライフを歩み出す年齢である60歳が迫ってきて、本当に「男」のままで後悔しないのかと思うようになったのです。

そんな頃に知ったのが「ジェンダーフルイド」という概念でした。ジェンダーフルイドとは、性自認が男性と女性の間で揺れ動くというものです。私は自分がそれだと思ったのですが、でも違う気もします。

はっきりわからないので、いろいろと調べたり、考えたりしたことをブログに書きながら、とりあえず1年間検討してみようと思ったのです。

その頃のブログがこちらです。

https://miyuki-morikawa.hatenablog.com/

1年ほど続けてわかったのは、私はトランスジェンダーだということでした。自分の心に任せて男女を行ったり来たりするジェンダーフルイドの生き方は魅力的でしたが、自分の本当の願いは、「女の気持ちで、女の格好をして、女として扱われて生きていきたい」ことだと自覚したのです。

その時の目標は、還暦を第二の人生の始まりと捉え、その時には「女」になりたいということでした。

それがコロナ禍のおかげで早まりました。

そのときの経緯は、こちらに書いてあります。

https://note.com/miyuki_morikawa/n/n94402bd988c4

お仕事上のカミングアウトは、2020年の夏頃からです。まずは新規のお問い合わせに対して、「私はMtFトランスジェンダーでお打ち合わせや取材の際に女性の格好で参加しますが、それでも構いませんか?」とお尋ねするところから始めました。

それでお仕事を断られたことは1回もないのですが、最初の1年ぐらいはかなりドキドキでした。

新規先で受け入れられることがわかったので、既存先にも徐々に同様のことをお願いするようになりました。最初の頃は、「社内の打ち合わせは構わないが、うちのお客さまが参加される際には画像をオフにしてほしい(オンラインミーティングで)」といったことも言われましたが、そういうのはすぐになくなりました。

結局2021年の半ば頃には、全てのお取引先さまの承認をいただけるようになっていました。

2021年の夏には、「執筆協力 森川ミユキ」のクレジットが書籍に載るようになり、今年になってからは著者名「森川ミユキ」の本を上梓するに至りました。以前からの流れでまだ「森川滋之」というクレジットの案件も残っていますが、数年以内にはすべて「森川ミユキ」になることでしょう。

プライベートでのカミングアウトもほぼ終わりました。伴侶さんにはもちろんですが、両親にも弟夫婦にもカミングアウトし、受け入れてもらっています。一番複雑なのは(当然ながら)伴侶さんで、受け入れてはもらっていますが、わだかまりはいろいろ残っていると思います。そのため伴侶さんの家族にだけはカミングアウトできていません。こればかりは私の気持ちだけではどうしようもないことです。

自分で考える最も画期的なことは、女性ばかりのフラ教室に通っていることです。着替え等の問題はもちろんありますが、それ以外は女性として女性ダンサーの格好でレッスンを受けていますし、イベントにも普通に出させていただいています。お仲間とお食事に行ったりするときも女性の格好です。これは自分では奇跡と思っています。

結論:後悔しないことが一番大切だと思います

長くなりましたが(私としては必要最小限の説明だけさせていただいたつもりなのですが)、「トランスジェンダーにフリーランスのITライターは可能か?」という問いに対しては「問題ありません」が答えになります。

それどころからお取引先にカミングアウトするようになてから、ライター専業になってから過去最高の収益を記録しました。

ということで、あなたがIT関連のフリーランスライターで実はトランスジェンダーであるのなら、それをカミングアウトして、「自分の望む性」で生きることは十分可能と申し上げたいと思います。

でもそれは可能性の話だけで、ありきたりな結論で恐縮ですが、最終的にはあなたが自分の望む性で生きられなかったとして、死ぬ間際にどれだけ後悔するか次第だと思います。

もちろんそれぞれの事情も大きいかと思います。カミングアウト自体、安易にお勧めしてはいけないし、そのつもりもありません(安易にお勧めしていると受け取られるおそれがあることに気づき、公開後に慌てて付け足しました。一部表現も変えました。すみません)。

もしかしたら私は恵まれているだけなのかもしれません。しかし私自身も、お仕事を失うのでは、親や兄弟と会えなくなるのでは、友達が去っていくのではとずっと悩んでいました。60歳を目前としてやむにやまれぬ気持ちになって、今のようになったわけです。

だから思っているほどの障壁はない可能性もあるということだけはお伝えしたいと思って、このようなことを書いた次第です(容姿を晒しているのも、特別美しくなくても大丈夫だというメッセージのつもりです)。

トランスジェンダーであることをカミングアウトしようかするまいか悩んでいる方のご参考になれば幸いです。ご自分の人生だから慎重にお考えください。ですが、するにしてもしないにしても、どうか後悔のない選択をなさってください。


最新のIT動向やITのビジネスへの応用について、経営者などビジネスパーソンに分かりやすく伝えることができるライターです。経営レベルでのIT活用について書ける数少ないライターとお客様から評価されています。

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▼トランスジェンダーとしてエッセイを書いています。

フルタイム女装を始めたら拍子抜けしました(仮題)

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