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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

本当はおそろしい?エコシステム

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「エコシステム」という言葉をご存知と思います。海外では明確に「ビジネス・エコシステム」「デジタル・エコシステム」というそうです。

さてこの「エコシステム」、みなさまはどのようなものだと捉えているでしょうか?

「エコ」という言葉に引きずられて何となくいいものと思っている方もおられるかもしれませんが、本当は怖いものかもしれません。


ITに強いビジネスライターの森川滋之です。取材等で知ったことを、言えない固有名詞は伏せてお伝えしております。

「エコシステム」というと日本では一般的に以下のようなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか?

複数の企業が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発業者・代理店・販売店・宣伝媒体、さらには消費者や社会を巻き込み、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組み。

(引用はこちらから、出典は「知恵蔵」2010年)

「エコ」という言葉の響きのせいでしょうか? 従来の企業グループやケイレツとは違う、企業同士が「共存共栄」していくイメージがあるようです。

同じ引用元に、こんな文章さえありました。

多様な構成員の相互協力および平等な収益の循環

まるで新時代のユートピアですね。空想社会主義が21世紀にいよいよ実現するのかという期待さえ抱かせます。僕も「共存共栄」を信じていました。某外資系IT企業のカンファレンスで、ロシアのある企業の講演を聞くまでは。

その企業ははっきり言ったんですね(同時通訳で聞いただけではありますが)。今後我々が××市場での支配力を確立するためには、エコシステムの構築が不可欠――だと・・・。

「え? エコシステムって『支配力を確立する』ためのものなの???」

「共存共栄」がエコシステムの目的とは言わないまでも、前提だと思っていた僕は面食らってしまいました。いや、もしかしてロシアに対する何らかの偏見から、そう言ったと思い込んでいるだけではないかとさえ思ったのです。

しかし、「共存共栄」などという牧歌的な概念をビジネスに持ち込むのはどうも日本人の悪い癖(?)のようです。

I & Companyさんのサイトにこんな解説(「次世代 エコシステム」)がありました。

日本の経済界では、エコシステムを経済的な依存関係や協業・協調関係と捉える向きがあります。しかし、米国では、一人勝ちの戦略を実現するための新しい競争戦略(ゲーム)と捉えています。

キーワードは「一人勝ち」Σ( ̄□ ̄|||) これは、まさにロシアのある企業から聞いたことと同じです。

考えてみれば、iPhoneの「エコシステム」は存在しますが、儲けという意味ではAppleの一人勝ちです(とはいえ、ほぼ確実におこぼれはもらえますから、「共存共栄」と言えないこともありません)。

実際のエコシステム=生態系でも、そうですよね? 一番上に人類がいて一人勝ちしていますが、食物連鎖の中で共存共栄しているわけです。

しかし一人勝ちしている者が好き勝手にすると弱い種がどんどん絶滅していくということが、現実の生態系では問題になっています。たぶん同じことが、ビジネス・エコシステムでも起こっていくのでしょう。

僕には、人工知能に仕事を奪われるという話(眉唾)より恐ろしいことのように思われます。


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 97ページ分(全体の44%)読めますので、お暇ならどうぞ。
 ただ電車で読むのはお勧めできません。


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