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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

営業はチームでやれば強くなる

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企業の営業力を強くするにはどうしたらいいのでしょうか?

cover_s.png大企業でも「我が社には営業力がない」とお嘆きの経営者がたくさんいます。中小企業ならなおさらのことでしょう。専任の営業パーソンがいないという会社も多いようです。

私は2003年から1年半、大手SI企業の営業企画部という部門にいました。その後2004年から約1年、外資系ソフトウェアベンダーで売れない営業をやっていました。

また2008年からは、拙著『奇跡の営業所』の主人公のモデル吉見範一さんの営業セミナーを100回ほど主催し、また一緒に営業コンサル事業もさせてもらいました。その間に多くの営業マネージャーや営業スタッフと話をさせてもらいました。

現在もフリーライターとして、営業コンサルタントや営業部門の方々に取材させてもらっています。

これらの経験から分かることは、世の中には前世紀からの営業マネジメントを行っている会社がまだまだ多く、そのような会社は売上増に苦戦しているということです。それだけではなく、マネージャーも含めた営業パーソンも疲弊しているように感じます。

一方で、営業パーソンが元気で、売上も増えている会社ももちろんあります。

以下の話は、例外も多いかもしれません。しかし、営業チームを活性化して、売上を増やしたいと考える方々には、大きなヒントになると思います。

● 前世紀からのやり方とは?

私が前世紀からのやり方だというのは、以下のようなマネジメントです。

  • 期の売上目標を単純に営業パーソンで頭割りする
  • 定例営業会議では、個人の週単位の実績累計をチェックし、未達の者がいたらアドバイスあるいは叱責する(達成者を褒めるチームもある)
  • あまりにも成績が悪い者に対してはマネージャーがサポートすることもある
  • (以上のように)結果のみを重視し、(成績不芳者をサポートするにしても)プロセスは個人任せ
  • アドバイスは「もっと訪問件数を増やせ」など精神論に終始

中には、マネージャーはこうだと思っていなくても、スタッフに聞くと「まさにこの通りです」という会社もあるかもしれません。

このようなマネジメントが行われている背景には、個人に目標を割り当てて競わせれば、結果として目標が達成されるという考え方があるのではないでしょうか?

しかし、これはマネージャーとしては楽なやり方です(結果が出ないので頭は痛いでしょうが)。楽なマネジメントをして結果を出そうというのは、「運任せ」だと言っていいのではないでしょうか。

● 強い営業チームのリーダーのやり方とは?

売れない営業マンだった私が言っても説得力がないかもしれません。そこで、チーム営業のプロにご登場願いましょう。

私の知人で、営業チームの再生・強化を専門にしている庄司充さんというコンサルタントがいます。彼は、(株)リクルートで営業としての実績を積んだ後、(株)リクルートスタッフィングで営業アウトソーシング事業の立ち上げに参画した人です。

リクルートスタッフィングは営業派遣の会社ですが、派遣社員でチームを作って、チーム毎企業に派遣する事業があるのです。その際マネージャーは同社の社員が務めます。庄司さんは、そのマネージャーの総責任者を務めていました。彼が送り込んだチームの多くは、正社員だけのチームより売上が良かったのだそうです。

庄司さんは現在では、リクルートスタッフィングで確立したチーム営業の手法を活用して、多くの中小企業の売上増に貢献しています。

その庄司さんが言うには、強い営業チームと弱い営業チームでは、リーダー(マネージャー)のやり方が全く違うのだそうです。

弱いチームのリーダーはこうです。

  • 個人任せ
  • 結果重視
  • 精神論

先ほど、私が示した「前世紀のやり方」は、まさにこの3つに集約できます。

一方強いチームのリーダーはこうです。

  • 情報共有
  • 成功パターン作り
  • 全員検証

要するに、全員で情報を共有しながら、営業の成功パターンを作り、成果を全員で検証しながら、成功パターンをさらに磨いていくーーそういう場・仕組みを作ることに注力しているのが強い営業チームのリーダーだと言うことです。

抽象的ですが、具体的なことを書き始めると本1冊分ぐらいの説明が必要になります。興味を持たれた方は、庄司さんの著書『「売れ!」といわずに30日で「売れる営業チーム」をつくる法』(大和出版)を参照してください。とても読みやすい本です。

● 吉見さんが最下位の営業所をダントツの全国トップにした方法

私は、『奇跡の営業所』の2009年版を書いてしばらくしてから庄司さんと知り合ったので、吉見さんが全国最下位の営業所をダントツの全国トップにしたマネジメント方式と、庄司さんの勧めるマネジメント方式が頭の中で結びついていませんでした。

ところが、本日販売開始になった『奇跡の営業所』の新装版を執筆しているときに、吉見さんと庄司さんのやり方は本質的には同じだということに気づいたのです。

吉見さんは、ほぼ全員が営業初心者(しかも派遣社員)ばかりで全国一位になりました。このような条件で、弱い営業チームのリーダーがやるような、個人任せ・結果重視・精神論はそもそも採用できませんでした。こんなことをしていたら、1つも売れません。

一方で、前述した「強い営業チームのリーダー」の要件を全て満たしていました。朝礼の場では叱咤激励ではなく情報共有に努めましたし、成功パターンも作りました。その成功パターンを全員の力で磨き上げました。

具体例を1つだけご紹介しましょう。

吉見さんは、担当した営業所のスタッフに対して、いきなり「売ってこい」というのはハードルが高すぎると感じました。そこで、彼らに確実にできて、しかも売上に結びつくことを考えたのです。

具体的には、営業スタッフと以下の約束を交わしました。

  • 1日2回(午前中1回、午後1回)客先訪問をすればよい
  • 売り込まずに、情報収集だけすればよい
  • 獲得した情報の質で個人評価をする

「売る」というのは難しい行為です。しかし情報収集はそれよりは難しくありません。しかも、前回述べたようにアポも取りやすいのです。1日2回でよければ、営業初心者でも可能なことです。

また、質の高い情報とは、たとえば顧客の課題や現状への不満点など、次の訪問に結びつく情報です。課題や不満を解決できる提案を持って行ければ、契約につながっていきます。

営業スタッフが集めてきた情報は、翌日の朝礼で共有されます。そこで「これはいい情報をもらってきたね」と称えれば、他のスタッフもどういう情報を聴き出せばいいか分かってきます。

以上を数ヵ月続けていく間に、営業ツールとなる大量の情報と顧客に提出した資料が蓄積されて、商談の精度も高まっていきます。成功パターンも作られていきます。

他の営業所が、本部から与えられた商品説明資料を使って営業しているのに対し、吉見さんの営業所では、自分たちで作り上げた「血の通った」営業ツールで勝負しているわけです。

武器の性能が全く違うのです。ダントツの日本一になったのは当然のことでした。

本日から書店に並び始めた『奇跡の営業所』には、他にも吉見さんがチームで目標を達成した秘訣が書いてあります。

チーム力で目標を達成し、チーム全員で喜びを分かち合いたいと考えるマネージャーに読んでいただけたらと願っています。

(謝辞)拙著『奇跡の営業所』発売に際して、3回にわたってPRを兼ねた情報提供をさせていただきました。お読みいただいた方には心から感謝申し上げます。

どうしたらチームが活性化するのか?

「新規開拓の神様」のすごいアポ取り

今後はしばらく、著者サイトで同様の情報提供を続けていきますので、興味を持たれた方は、ぜひチェックしてください。

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