コミュニケーションにおいてもっとも大切なこと
最近、コミュニケーションに関する根本的な気づきを得られる機会があった。
僕は、企業のPR用の事例制作の仕事もしている。先日、取材先の都合で年末に取材し、その次の日には書きあげた記事があった。
商流を簡単に説明しておく。依頼元はPRしたい製品を製造販売しているA社。そこがC社に事例制作を依頼する。C社は条件の合う外注ライターに仕事を依頼する。今回はA社からの指名で僕となった。導入したのはA社の顧客であるZ社。僕はZ社に行って取材し、A社の担当者に記事を納品する。
ややこしいですか? まあ、あまり記事の内容とは関係ないので図解まではしません。C社の社長と僕の関係が分かれば十分です。
■ 気づきのきっかけ |
A社(依頼元)はC社(事例制作会社=僕から見れば発注元)にとって重要顧客である。そこで、念のためにA社の担当者に見せる前に、C社の社長にレビューを依頼した。僕としては、現場感覚にあふれた良い記事だという自負があったので、あくまで念のためである。
だが、ある意味ダメ出しをされてしまった。そのときC社の社長に言われたことが、気づきのきっかけになった。
C社・社長の弁では、僕の文章には自分の考え方と違うところが2つあると言う。ただ、A社からリピートが来ているのであるから、自分の考えを押し付けるつもりはないとも言う。僕としては気になったので聞いてみた。
C社・社長:「森川さんの記事は、取材相手の話を一般化しすぎるところがありますね」
僕:「どういうことですか?」
C:「僕から見ると、それはあくまでその人の体験談なんです。でも、『○○というものは××だ』と決めつけている。それって読む人の中には、取材された人のスキルが低かっただけと思う人もいる」
僕:「なるほど。ただ、僕としては、その「スキルの低い」人たちがターゲットだと思ったので、そう思う人は読者ターゲットからは外しています」
C:「そうですね。広告文としては、それでも正解かもしれない。だから、僕はそう思うと言うだけで、そこに文句はつけていません」
僕:「分かりました。で、もう一つのほうは?」
C:「これは、一般化と大いに関連があるのだけど、森川さんは読者の善意に期待しているところがありますよね。だけど僕は読者の悪意を想定して書いています。要するに、森川さんは共感をベースに文章を書くけれど、僕は読者というのは疑うもので、その疑問を一つ一つ消していくことに重点を置いています」
僕:「それは確かにそうかもしれない。そのような指摘を受けたのは初めてですが、納得できます。さっきの一般化の話も含めて、よく考えてみます」
■ 過度な一般化を反省 |
読者の善意に期待し、共感をベースに、過度な一般化をする傾向が僕の文章には確かにあったように思う。
まあ、期待が裏切られたとしても、それで"裏切った人"が悪いとは思わない程度の経験は積んできた。お前のいうことは全然違うだろうという人に辛辣なコメントをいただくことがあるが、それも立ち止まって考える糧にはしている。
"性善説"的に人を捉えることについては、なかなか直しようもないし、直す必要もないと思っているが、「過度な一般化」は良くないだろう。そこは、直すことにした。
今年に入ってから、誠ブログだけではなくFacebookの書き込みのようなものまで、読みなおしてみて、「やっぱり過度な一般化だよなあ」と感じるものはいくつか没にした。
まだまだかもしれないが、少しずつ努力している。
■ リピートがあるかどうかの3つの基準 |
さて、ここまでは前置きであり、タイトルとは直接関係していない。
なので、「コミュニケーションにおいてもっとも大切なことは過度な一般化をしないこと」というような結論ではない。
このような欠陥を持ちつつも、一応リピートが来るのはなぜかも考えてみたのだった。
そこには3つの基準があることように思う。大前提としては、読者が誰かという明確な考えがあることだ。
- 読者の役に立っているか
- 新しいこと(気付かなかったことを含む)か
- 好奇心を満たすことか
(ここで、お願いですが、僕の誠ブログの過去記事を上の基準でチェックしないでください。こういうことが大事だと、それこそ最近分かってきたもので。)
こういう記事が書けているときにはリピートが来る。そうでないときは、あまり来ない。もちろん例外もあるが、厳しい依頼元であれば、必ずこの通りのようだ。
■ コミュニケーションも同じ |
この3つの基準は、コミュニケーションにおいても重要である。
先月、@IT自分研にアップしてもらった「『話し上手なエンジニア』といわれるための8つのコツ」という記事が好評だ。こちらでは、「話し上手は聞き上手」ということを長々と書いた。
しかし、それよりも前述の3つの基準はさらに本質的なことだと思う。
コミュニケーションというのはただ聞くだけではない。必ずアウトプットがある。事例記事にしても、取材先ではほぼ聞いているだけだが、記事としてアウトプットをする。立派なコミュニケーションである。
一生懸命聞く目的は、最終的には、相手の役に立つ、知らなかったことを、好奇心を満たす形で発信することにあるのだ。
これは商談などでもまったく同じ構造だ。売れている営業マンは、最初は見込み客の話を一生懸命聞く。きっかけがなければ相手は何も話してくれないので、上手に質問を重ねていく。
上手な質問ができない人が多いのだが、「相手の役に立つ、知らなかったことを、好奇心を満たす形で発信する」ということを念頭におけば、だんだんと質問すべきことがわかるようになるはずだ(これは、多くのトップ営業マンが、言い方はそれぞれだが、共通して語っていることだ)。
■ 心がけるだけで変わってくる |
コミュニケーションが下手な人は、真逆のことをやる。
- 相手の役に立つことよりも、自分が認められることが重要
- 新しいことではなく、聞き古されたことを語る
- 相手が興味をもっているかを確認せず、一方的に話す
コミュニケーションスキルについて書かれた本はたくさんあるが、スキルやテクニックの部分だけ読んでも上達しない。
- 相手の役に立っているか
- 新しいこと(気付かなかったことを含む)か
- 好奇心を満たすことか
以上の3つを心がけたうえで、スキルやテクニックが使えるようになれば、コミュニケーションは上達する。
実際に、役に立つこと、新しいこと、好奇心を満たすことを言うのは難しい。しかし、心がけるだけなら誰でもできるし、本当にそれだけで変わってくる。
なぜなら、このような情報を持たないときには、ただ聞くだけ(質問することを含めて)ということができるようになるからだ。
すると、不思議なことに周囲の人は、ただ聞いているだけの人を、話し上手と評価するようになる。
自分が認められたいがために一方的に話しているような相手でも、上手に引き出せば役に立つ情報を持っているものだ。聞いているうちにネタもたまってくるから、まだ知らない人に教えてあげるようにすればいい。
数ヶ月で、周囲の目が変わってくると思います。
記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。
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