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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

6月28日 察知と実現~日本の社長が社内公用語を英語にしようなどという理由(#401)

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未来学者と経世家は立場が違うと、松下幸之助さんはいいます。過去と現在を分析して未来を予測するのが未来学者、将来こういう世の中を作ってやろうと考えるのが経世家。そして、経営者は、経世家であるべきだと説いています。

私は、これを読んで、ちょっと古い話ですが、ユニクロや楽天の社長が社内公用語を英語にしようと言い出したことを思い出しました。

賛成反対よりも、こんなことをする経営上のメリットが、私にはまるで理解できなかったのですが、何か言い分はあるのでしょう。

(現在どうなっているのか分かりませんが、震災でそれどころではないのかもしれません。)

そもそも英語って、世界公用語と言われるほどメジャーな言語ではないのです(←このへん、やや言いがかりも含まれていますが、承知のうえです。主要な論点はそちらではありません)。

世界で英語を話せる人口は、4億人から5億人の間と言われています。当然ながら中国語よりは、ずっと少ない。

いや、人口ではなく、英語が通じる国数で考えろ、という反論もあるでしょう。しかし、そうなるとスペイン語(ポルトガル語もごく近いので含めます)のほうが普及にしていると思われます。

その他、フランスが旧宗主国だった国も多い。こう考えると、アングロサクソン系の言葉より、ラテン系の言葉のほうが普及しているといえます。

英語が世界中で普及しているというのは、アメリカに占領されて、アメリカナイズされた教育を受けてきた日本人の幻想に過ぎないように思います。

最近ようやくそういうことが分かる人が増えてきたようで、公共施設の看板は、以前は日本語と英語の併記でしたが、いまは、だいたい5ヵ国語ぐらいで併記されているようです。しかし、まだまだ自覚なく、英語を国際共通語と思っている人も多い。

そもそも、アメリカでさえ、英語は公用語ではないのです。公用語でないということは、政府関係の文書でさえ、法的には英語で書く必要がないということです。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/Vol.21-3/04YoshikawaToshihiro.pdf

(社内公用語を英語にするということは、議事録等も英語で書かないといけないはず。そうすると社員は、社内用に英語の議事録を書き、国内の取引先には日本語訳して送る必要があります。こんなことになんのメリットがあるのだろう???)

私が以前聞いた話では、アメリカで英語が使えない人は、たしか5割を超えていたと思います。ちょっと極端だと思ったので裏をとろうとネットで調べたのですが、アメリカでの英語の普及率は分かりませんでした。ただ、少なくとも数%などというレベルではないのは確かです。

英語は、過去の歴史上いろんな国の言語が入り交じっているので、スペリング一つとっても規則性がありません。言ってみれば、あまり論理的整合性の高い言語ではなく、習得にかなりの努力が必要です。

このあたりが、アメリカで一生懸命「バイリンガル教育」(日本の話じゃないんですよ!アメリカの話です)をやっているのに、あまり成果がでない原因になっていると思います。

日本人が英語に対して幻想を持つ理由は、日本が辺境国だからです。

世界史はずっと、地域ごとに中心となる国があり、それをとりまく国がたくさんあるという構図で変遷してきました(そういう意味では辺境国のほうがはるかに多いので、気にする必要はありません)。

東アジアの中心国は、ずっと中国でした。日本の公用語もずっと中国語(漢文)でした。宮廷の話し言葉は日本語だったに違いありませんが、公文書は明治になるまで漢文で書かれていました。

それが、いまはアメリカに変わったと言うだけのこと(さすがに日本政府は、国内の公文書を英語になんてことはしていないと思いますが)。そして、アメリカの権力者の話す言葉が英語だから、日本人は英語をあがめている。それだけのことなのです。たぶん。

(この辺の事情は、内田樹さんの『日本辺境論』が参考になると思います。)

長くなりましたが、今まで前置きです・・・。

私が言いたかったことは、経営者が経世家であるべきならば、日本語を世界の公用語(の一つ)にしようという経営者が一人ぐらいいてもいいということです。このぐらいの志のある経営者がいまの日本にはほしい。

国際進出している会社がやることは、現地語が分かるスタッフを送り込み、現地語で話す人を採用するということでした。

でも、日本語の分かる人、あるいは日本語を学びたい人だけを採用するという道もあるはずです。というよりも、それが普通の国の感覚だと思うのですが、日本人はそれをやらない。

フランスという国は、海外にフランス語とフランスの文化を普及することを国を挙げてやっています。

いま時点でいえば、たぶん日本語と日本の文化のほうが、世界ではニーズがあると思われます。それなのに、そんなことをやろうという経営者もいなければ、そもそも国もまったく熱心でない。

その反面、ある意味日本を代表する経営者が、社内公用語を英語にするなんて、私から見たら時代錯誤なことをやっている。

正直、私は日本が心配です。

今日の一言)どうせ言うなら、世界の公用語を日本語にするぐらいのことを言ってほしい。

(注)http://www.garbagenews.net/archives/1392757.htmlなどの記事を読むと、無批判に「英語も世界共通語」などと書いているが、そもそもコンピュータを使う場合においては英語が圧倒的に有利という事情があります。主要なコンピュータ言語もコンピュータ技術も米国発がほとんどなので、コンピュータリテラシーを持つということは、ある程度の英語力を持つということに等しい。

100歩譲って、英語を使えることが国際社会で有利だとしてしても(まあ、これは事実でしょう。認めます)、日本の会社が社内公用語にするほどのメリットは感じない。それよりも、日本語を世界公用語にするとぶちまける社長の方が志が高いと感じるなあ、というのが今日の拙文の趣旨です。

(ちなみに、公用語などという概念が実は気に入らない。本当にグローバルを考えるのであれば、英語一辺倒ではなく、マルチリンガルが正解ではないのか?)

なお、日本のIT技術者を中国やインドに送り込む事業をやっている方に、このような質問をしたことがあります。

「両方できるのがベストだろうけど、言葉もITもどちらも得意という人も少ないでしょう。どちらかだけしかできないというのなら、どちらが海外で通用するの?」

「それは、圧倒的にIT。言葉なんて海外で暮らしていればなんとでもなるけれど、ITの知識やスキルはどうにもならない。専門性>語学ですよ。まあ、どっちにしろ、やる気があるかないかだけだけどね」

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